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なんなのこの地元感

ブックマーク、誤字報告、ありがとうございました。



「デューク兄様、もう一度、もう一度だけ呼んで下さい!」


 クーデリカ様は子どもの頃の呼び名を思わず呼んでしまった俺に対して、もう一度呼んで欲しいとお願いしてきたが、流石に無理だと断った。


「ダメです。クーデリカ様はもう立派な大人のレディなのですから。迂闊にも幼い頃のアダ名を口に出してしまった私が悪いのです」


「そんなつれないことをおっしゃらずに。子供の頃からアダ名で呼んでいただけたのはデューク兄様とシャロ姉様だけなんですから」


 それは俺が子供の頃はアホの子で、シャロは俺がやる事に全肯定な子だったからですよ。


「ダメです。貴女様は辺境伯家のご長女。私のような寄り子の男爵風情が気安くアダ名で呼んでいいご身分ではございません。周囲がどう見るか。どうかご勘弁のほどを」


「なら周りに聞かれないようお家ならいいんですね」


「いえ、ですから……」


 大人になったんだから周囲を気にしてくれと断るが、それでは我が家にお出でいただいた時かご自宅にお伺いした時にお願いしますと食い下がられ、思わず頷いてしまった。


 お嬢様ながら子供の頃からあまりワガママを言わないクーデリカ様にお願いされると弱いんだよなぁ。


「クーデリカ様、話を戻しますが、それでそんな流言飛語を流したのはどこのどいつなのですか?」


 今すぐそいつの口を封じに行きますから。ええ物理的に。


「え?ゴルズジイですけど?」


 間違っていましたか?とばかりに首を傾げるクーデリカ様。


「はっはっは。クーデリカ様ならばどのような格好もお似合いです。ドレスとはまた違って可愛らしいですが、別に私は特別メイドの格好が好きというわけではありませんよ。ゴルズのジジイはボケてきてる上に目が耄碌していますからあまり信用なされぬよう」


「はい、デューク兄様!」


 メイド姿を誉めたのが効いたのか素直に頷いたクーデリカ様に、少々お待ち下さいと言ってゴルズのジジイの方に向き合う。


「ジジイ、てめぇクーデリカ様に何大嘘吹き込んでやがるこら」


「嘘ではなかろうが。シャロちゃんにメイドをさせといてよく言うわい」


「シャロがメイドなのは本人の希望だと説明したよなジジイ。物忘れ激しすぎるだろやっぱり惚けやがったな」


「誰が惚けじじいじゃ!メイド姿のシャロちゃんを侍らせてニヤニヤしてるのは間違いないじゃろが!」


「ああん?!惚けてんのは頭の中身だけじゃなく目ん玉もか。可愛い妹が頑張って仕事している姿をにこやかに見守って何が悪い!」


「目ん玉どころか頭の中まで腐っとるのは貴様じゃろが若造が!どうやら痛い目を見んとわからんらしいの」


「ああん?!やろうってのかジジイ!介護が必要になっても知らねーぞごらぁ!!」


 斧を構えだしたゴルズのジジイに、予備の騎士剣を構える。


「「やってやんぞごらぁ!!!」」




「あー、また始めた。クーデリカ様、こちらにいらしてください。土埃が舞いますよ」


「シャロ姉様、お二人はやはり仲良しですね」


「何度見てもゴルズ殿の斧さばきは見惚れるほどですな」


「団長と正面から切り合ってる…。凄いパワー」


「何?!敵襲?!ってまたゴルズのじいちゃんとデューク兄か……」


「あ、フリック君久しぶりだね」


「え?!クーデリカ様!え?何でメイド姿?!」


「エヘヘ、実はお手伝いでゴルズジイに付いてきちゃった」


「何か騒がしいと思ったらおじいちゃんとデュー兄がまた仲良く喧嘩してるんよ」


「あ、ミリカ。デューク兄様はメイドが大好きってお話はゴルズジイの早とちりだったみたい」


「えぇ?!せっかく急いで作って着てきたのに。おじいちゃんひどいんよ」


「ミリカもメイド姿?!なんで?!」


「すみません、コスタル団長は……え、ゴルズのじいちゃん?え?何でデューク兄と切り合ってるの?」


「あ、フリッツ君なんよ」


「フリッツ君も久しぶりだね」


「え?!クーデリカ様?!え?何でメイド姿?ミリカもメイド姿?何で?」


「あはは、フリッツ君、フリック君と反応が同じなんよ、凄い似てたんよ」


「流石兄弟だね。凄くそっくり」


「副団長、どうしましょう?」


「とりあえず、皆さん座ってお茶でも飲みながらお話しませんかな?実は王都の菓子屋で働いている娘から差し入れを貰いまして、皆さんもどうかと思いましてな」


「ありがとうございますランデル様。今お茶の用意をいたします」


「あ、シャロ姉手伝うんよ」


「私もお手伝いしますシャロ姉様」


「なあ、何がどうなってるんだフリック?」


「とりあえずお茶を飲もうよ、兄さん」


「「死ねやこらぁー!!!」」







「はーッはーッ、これくらいで、勘弁して、やるわい、小わっぱが」


「ゼーゼー息切らして言う台詞じゃねーぞジジイ」


「ふんッ!貴様こそ汗だくじゃろが!」


「それはそっちも一緒だっつーの」


 俺達は数十分ほど切り合って、お互い汗だくになりながら拳を納めた。


「おや、終わりましたか団長」


「長いよ、デューク兄」


 知らない間に何故かお茶会が開かれており、やっぱり知らない間にフリッツがやってきてその場に参加していた。


「いつの間に来たんだフリッツ」


「お茶を三杯お代わりする前だよデューク兄」


「待たせてしまったようだな、すまんかった」


「デューク様、お茶をどうぞ」


「ああ、ありがとうシャロ」


「デューク兄様、ランデル様より美味しいお茶菓子をいただきましたのでこちらもお召し上がり下さい」


「ありがとうございますクーデリカ様、中々様になっていますね。そしてすまんなランデル、ありがたくいただくよ」


「いえ、娘の勤め先が今日は店を開けないからと差し入れてくれたので」


「またお店に寄らせてもらうと伝えてくれ」


「デュー兄、汗だくなんよ。お拭きするからちょっと目を閉じて欲しいんよ」


「すまんなミリカ、そして何故メイド服を着ているかはわからないが可愛いと思うぞ」


「ありがとうなんよ。デュー兄にそう言ってもらえたからもう満足なんよ」


「くッ!私もメイド服を用意していれば」


「それは違うと思うよマリー」


「ランガー騎士、流石に騎士が任務中にメイド服は無理があるよ」


「ミリカ、おじいちゃんも拭いてはくれんかのう」


「おじいちゃん、クーデリカ様に嘘を教えちゃだめなんよ。罰として自分で拭くんよ」


「うぬぅ、おのれデュー坊」


「自業自得だろ?それにしても」


 え、なんなのこの地元感。


 何で西方辺境伯派閥がこんな一同に会してるの?


 自分達がホストのはずのランデルとマリーが逆にお客様状態だぞ?


 そしてなんでクーデリカ様だけじゃなくミリカまでメイド服なの?


 しかも何でシャロと一緒になって俺専属みたいになってるの?


 他の団員が遠巻きに何かヒソヒソしてるし。


 シュライザー、何で頷いている。お前メイドスキー騎士団員なのか。メラニアに着せてるのか。


 リッツ、ないわーって顔で首を振るな。俺も別にありだわーとは思ってないから。


 アベイル、ヨダレ垂らすな。お菓子はまだ沢山あるってのこの甘党めが。


 ホーキンス、櫓の上から親指立てるな。お前もメイドスキー騎士団員だったのか。


 いかん。このままでは再びメイドスキー団長として後世に残されてしまいそうなんだが?


「何でこうなった?」


「デューク様のご人徳かと」


「それもなんか違いませんかシャロさんや」


「違いません」

 

「そうっすか」



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