王族こら。いい加減にしろこら。
寝落ちしました…。しかもかなり遅くなりました。すみません。
ルルミアからなんとも微妙な奴だった邪竜の最後を聞いて、竜の世界も世知辛いんだなぁとなんかいたたまれない気持ちになったりしながら、とりあえず駐屯地まで戻ってきた。
ルルミアにはその辺を歩かれたりするとまた何かやらかしかねないので団長専用天幕内で大人しくしているよう言い含める。
「わかったよ。けど流石に何もないと手持ちぶさただから、何でもいいから本があると助かるな」
「本、ねえ。俺は持ってないなぁ。シャロ、なんかある?」
「お母さんから貰った薬草の本ならあるよ」
「それでいいから貸して欲しいな」
「どうぞ」
「ありがとう、シャロ」
早速没頭し始めたルルミアを置いて指揮所に行くと、各門の責任者達が集まっていた。
「団長、指示通り各部隊の責任者を集めました」
「ご苦労、ランデル。それでは各人報告を聞いていこう。まずはグラウから」
「ハッ。西門では我々が着いた時点ですでに門が開かれ逃げ出そうとしていた貴族が複数おりましたので、その場ですぐに全員捕縛いたしました。リッツの報告により門番の一人が買収されていると知らされていたため、其奴を捕縛して他に逃げ出した者がいないか吐かせ、我々が捕縛した者共が最初だと証言したため、団員の一人をその門番に代わり配置して門を閉じ、我々はひとまずそのまま門の前にて待機し、逃亡者を外に出さないよう現在も封鎖中です」
「捕らえた貴族は近衛に引き渡したか?」
「ハッ。近衛のフリッツ騎士が率いる小隊が途中参られましたので、彼らにお任せいたしました」
「ご苦労。では次はアリュード」
「ハッ。私が担当致しました北門は、途中待機していたアベイルから北門はホリビス伯爵に買収されている可能性が高いと報告を受けていたため、到着後直ぐ様北門の門番全員を取り調べた結果、その内の一人が袋に入った金貨を所持していたため其奴が買収された者だと確信しかまをかけた所、あっさり吐いたので捕縛しました。グラウ同様団員の一人を門番に代えて潜入させ、門を閉めて待機していたらホリビス伯爵の手の者が門番に接触してきたためこちらも捕縛しました。冒険者らしく、連絡役として小金で伯爵に雇われていただけなのであまり情報は持っていなかったため、グラウ同様近衛のフリッツ騎士が参られた際に引き渡しました」
「すでに逃げ出した貴族どもはいなかったか?」
「捕縛した門番の話では一人もいないとの事でしたが、念のため我々が来た方向とは逆方向に一人偵察を出しましたが、誰もおらず、また通った形跡もなかったようです」
「ご苦労。では最後にマリー」
「ハッ。東門につきましては門番が買収されていた、という話もなくまた我々が到着した時点でその夜に門を出入りしたのは近衛のフリッツ騎士と他二名だけだと証言したためそのまま門を閉じたままにして、怪しい奴が門を通ろうとしたなら貴族なら足止めをしてこちらに報告、そうでないなら捕縛するよう指示しました。その後冒険者が三人門の外に出たいとやってきたようですが、その都度捕縛するよう指示し、お二方同様近衛のフリッツ騎士に引き渡しました」
「ご苦労。ランデル、現状の説明は?まだか。なら俺から説明しよう」
俺はシャロが淹れてくれたお茶を一口飲むと、三人に別れた後の進展を話した。
「なるほど。俺達が紅の馬鹿どもを捕縛した事でかなりの大規模な取り締まりになったんですねぇ。貴族は全体の五分の一は関わっていたんじゃねぇですかい?」
「おそらくそれくらいは最終的にはなるだろうな。全ての家を取り潰しにするわけじゃないが、かなりの枠が空くの間違いない」
グラウの言うとおり、芋づる式に捕縛された貴族の数は今わかっているだけでも両手の指ではとてもじゃないが足りない数だ。最終的に何十人になるか想像もつかない。
「となると、今回特に捕縛数が多かったパルダス侯爵派閥の法衣貴族達が抜けた官僚の数が足りなくなるのは必至ですね。このままでは国の統治に大きな障害がでるやも」
アリュードの危惧するところは俺も考えていた。だがこの辺りは宰相もリンクス公爵も事前に考えてはいたようだ。
「今回の戦争の前に紅の騎士団捕縛後の貴族家の減少を予想していた宰相とリンクス公爵は、今まで貴族がついていたいくつかの役職には平民上がりの官僚を昇進させて補うつもりらしい。取り潰された貴族家の役職ならば誰に気を遣うこともなかろうと仰っていらしたな。問題は、その数がお二人の予想を遥かに上回る数だ、ということだが」
「戦後の宰相様は忙しさのあまりに自慢の腹鼓が凹んでしまいそうですな」
「違いない」
ランデルの冗談にその場にいた皆が笑い声を上げる。
「我々も、あと一息だ。この後行われる宰相府での事前報告会の後、国王様の下に全ての結末をご報告に上がる。最早リグリエッタも腐敗貴族どもも、言い逃れはできない状況まで持ってくる事が出来た。東方辺境領での近衛、第二、第三騎士団合同の捕縛作戦も証拠がこちら側に揃っている以上、そこまで時間はとられまい。ユールディンも邪竜を退治して後は謀反を起こした第三皇子を倒すのみとなっている。皆、最後まで気を抜かずに任務を遂行せよ。祝杯を上げるその時までな」
「「「了解しました」」」
「それでは皆持ち場に戻ってくれ。ああ、マリーだけはちょっと残ってくれ」
「わかりました」
他の皆が指揮所から出ていった後、俺は例の夜会のお誘いをマリーに見せた。
「リゴル公爵派閥のウラホ子爵が宰相からの書類にこれを紛れ込ませてきた」
「あの、お馬鹿……」
マリーは額に手を当てて呆れ返っていた。
「おそらく宰相も見て見ぬふりをしたのだろうが、リゴル公爵様は今がどのような時なのか理解されているのだろうか」
リゴル公爵、馬鹿なんじゃない?というニュアンスを込めた俺の発言に、マリーは首を振った。
「団長、この手紙はおそらくリゴル公爵様ではなくその娘のトリシャが書いたモノと思われます」
「はあ?トリシャ様?リゴル公爵家長女の?」
「はい。サインの筆跡に見覚えがあります」
「何でトリシャ様が?」
俺はトリシャ様とお会いになったことも手紙のやりとりもしたことがない正真正銘名前しか知らない人なんだけど?
「あー、そのー、トリシャは、私やリグリエッタと似たところが御座いまして」
「似たところ?」
「騎士物語が好きなんです」
「何か嫌な予感しかしないけど続けろ」
「はい。元々トリシャと私は仲が良く、まだ病弱だった私の下にトリシャはよく遊びにきてくれたのですが、私はあまり動けなかったのでいつも一緒に本を読んでいました。読んだ後はいつもどの登場人物が好きかをよく話したものだったんですが、私は勿論騎士を、そしてトリシャはお姫様が好きでした」
「お姫様が好きなのと俺を呼び出すのと何か関係があるのか?」
「えー、トリシャが好きなお姫様は英雄騎士に悪者に囚われているのを救われるお姫様だったり望まぬ婚約から救い出してくれる騎士と恋に落ちるお姫様だったりします」
俺は頭を抱えた。
王族こら。いい加減にしろこら。
宰相てめートリシャ様のお願いを断りきれなかったリゴル公爵に良い顔しようとしやがったな。リゴル公爵からは断ってもおそらく俺に悪印象を抱くことはなさそうなのは助かったが。
でもやっぱりあの狸ジジイに少しはやり返さないと気が済まん。
「マリー・ランガー騎士、すまないが持ち場に戻る前に宰相府に同行してもらいたい」
「ハッ。了解しました」
マリーから狸ジジイに断りの手紙を渡してもらって苦言の一つも言っていただこう。
俺からの嫌みだとあのジジイには効かないからな。
俺は事前に書いておいた断りの手紙をマリーに預け、宰相のひきつり顔を想像してニヤリと笑いがこぼれるのだった。
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