神殿長の給料半年か、すっごい高そう
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『失礼な発言の数々、誠に申し訳ありませんでした』
駄天馬が前足を折って頭を下げる。
『あなたのような素晴らしい使徒に対してただの一神獣でしかない私があのようの無礼な態度で接してしまいました事、平にご容赦下さいますよう、伏してお願いいたします』
百八十度どころか、別馬なんじゃね?ってくらい態度が変わった天馬を前に、俺は横柄に頷いた。どうもこの天馬、カウリエン様だけでなくルナリア様とミアーナ様からも直接苦言を呈されたらしい。
あまりにも怯えて今にも倒れそうなくらいだったので、カウリエン様達に部下も見ているのでこれ以上はこちらも都合が悪いからこの辺りで勘弁してやってとお願いした。何も知らないシュライザー達から見れば、天馬は俺に怯えているようにしか見えないだろう。これで倒れられでもしたら神獣すら一睨みで気絶させる奴だと誤解されかねない。
「今回は最初の出会い方が悪かった。お互い水に流してやり直そう」
『寛容なお言葉、感謝します』
天馬は立ち上がると俺に向かって頭を下げて自己紹介を始めた。
『私は永く西バーランディアと人が呼ぶ大陸に住まう、天馬と呼ばれる神獣が一柱です。今回はユールディン皇家の若者の頼みを聞き、このエルフのお嬢さんと仮契約をしてユールディンのダンジョンに引きこもっていた邪竜の退治に協力しました。それを終えた後にエルフのお嬢さんがラグラント王国に行くとおっしゃったので、どうせならと私がお送り差し上げた次第です』
絶対自分に股がってほしいとか邪な気持ちから送ったのは間違いないだろーな。
女神様達はセクハラには厳しいから迂闊な発言をするとまたこいつを説教しはじめるから突っ込まないけど。
「俺の名前はデューク・コスタル。ラグラント王国の貴族で騎士団の団長をしている。ルルミアとは若い頃冒険者としてパーティーを組んでいた。今回の邪竜退治の協力、ラグラント側を代表して感謝を申し上げる」
俺も自己紹介をして頭を下げた。協力してもらったのは間違いないからな。
「部下をこちらに呼びたいのだが、よろしいかな?」
『構いませんよ』
「メラニア、こっちに来い」
俺が呼ぶとメラニアは物凄く嬉しそうに、薬湯の入った瓶をシュライザーに預けてこちらにやってきた。
「メラニア、彼女はルルミア。俺の元パーティーメンバーだ。こちらは言わなくとも分かるだろうが神獣天馬だ。邪竜退治に協力いただいた後、ルルミアを我が国まで送って下さった」
「こんにちは、ルルミアです」
『初めましてお美しい鳥のお嬢さん。私は天馬、神獣の一柱です』
メラニアには天馬の言葉が伝わらないため、俺が翻訳して伝えると、メラニアは勢いよく挨拶をした。
「はい!初めましてルルミア様、天馬様。私は治癒の女神メルナ様に仕える治癒の神官でメラニアと申します!」
「彼女はとても敬虔な神官で、治癒の腕もかなりのものだ。神獣に一目会いたいというので連れてきた」
「は、はい!神獣様に直接お会い出来るなんて夢のようです!」
『これは嬉しいお言葉ですね。ささやかですが、お会いできた印にこれを差し上げましょう』
天馬は自分の羽を一枚抜くと、メラニアに差し出した。
「よ、よろしいのですか?!」
『はい。治癒の神官としてこれからも怪我や病気で苦しむ者達を助ける貴女の力となれば嬉しいですね』
「ありがとうございます!」
メラニアは天馬の羽を恭しく受けとると、大事そうにどこからか取り出した綺麗な布に包んで懐に入れた。
「なあメラニア。天馬の羽って何か神官の助けになるような効力があるのか?」
「はい。天馬の羽は色んな魔道具の材料として有名ですけども、神官にとっては神様への祈りの力を強めて神聖魔術を強化する効力があります。首飾りや髪留めにしている方がほとんどですね」
「へー。それは知らなかったな」
「ミハウ様もつけておられますよ。首飾りの物で、なんでもお給料半年分もしたのだとか」
「神殿長の給料半年か、すっごい高そう」
「国内ではまず手に入らないものですから、かなりの額かと」
天馬の羽は俺が知っている以上に汎用性の高い素材だったらしい。やはり神獣、羽一枚でもその影響力は凄まじいものがあるようだ。
『コスタル様もご入り用なら差し上げますよ』
「いや、俺は使い道がないから遠慮しよう。気持ちだけ受け取っておく」
『左様ですか。それではもしご入り用になりましたらいつでもお申し付け下さい。私は帝都ルフラントの北にある森に居を構えておりますので』
「わかった。何かあればお願いしよう」
『エルフのお嬢さんも、久しぶりに人と契約できて楽しかったですよ。貴女はここ数百年では一番優秀な魔術師です。賢者を名乗っても不足ない実力かと』
「神獣と契約できたのは貴重な経験だったよ。でも折角手伝ったのに、邪竜は大した本を持ってなかったのは残念だった。ユールディンはまだ戦争が続きそうだから、ラグラントまで送ってくれて助かったよ。ありがとう」
どうやらルルミアがこっちに来たのは戦争に参加するのが嫌だったのと、約束した吟遊詩人スコラトの日記のオリジナルを読みたいがためだったようだ。
ある程度片付いたらこっちから連絡する、とは言ってあったが、まあ一応王都内はほぼ片付いたからちょうど良いと言えばちょうど良いタイミングかな。この後に向かう予定の宰相府でリンクス公爵にお願いして閲覧の許可をもらうとしよう。
『名残惜しいですが、エルフのお嬢さんとのパスを消させていただきます。では皆様、また機会がありましたらお会いしましょう、サラバです』
天馬は一声いななくと、空を駆けだしてあっという間に姿が見えなくなった。どうやら相当女神様達の説教が怖かったらしい。
天馬が去った方向に祈りを捧げるメラニアを前に、彼女が駄天馬の声が聞こえなくて本当に良かったと、思わずため息をついてしまった。気を取り直してとりあえずシュライザー達をこちらに呼んでルルミアを紹介し、事の経緯を軽く説明をする。
「天馬に乗ってお出でになった元パーティーメンバーさん、ですか。流石団長のお仲間ですね」
おい、ランデルと言いシュライザーと言い、流石って何やねん。
「しかも神獣の頭をはたいていましたし」
そこは俺も突っ込みたいよリッツ。
「邪竜退治とかおとぎ話級の話なのに、本が読みたいから参加って、突き抜けてますね」
そこは冒険者時代から思ってるよアベイル。
「流石S級の方は一味違いますね」
「「「S級?!」」」
何さらっとばらしてんだフリックてめー。
「うん。S級。だけどデュークもシャロもS級」
「「「やっぱり団長やべー」」」
「やっぱりってなんやねん」
口の軽い垂れ耳の頭に指をめり込ませながら思わずイサカ弁で突っ込む。失礼な奴らめ。
「いだだだだだ!デューク兄痛い痛い痛い」
「うるさい、その軽い口を閉じてろ」
「あだだだだだだだ、わ、われ、あ、頭、割れるー!」
フリックの頭を絞め続けながら、他言無用だと念押しすると、シュライザー達はコクコク頷いていた。




