なにしとんねん!相手神獣やぞ!
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「全員目をつぶれ!」
周囲に警告をしてからミスリルナイフに宿した『ライト』の魔術を発動させる。
上空にパアッと爆発的な光が瞬き、眩しさに目をつむってやりすごす。
ライトの魔術自体は生活魔術の一種だから大半の人は扱えるが、威力や継続時間は人によってまちまちだ。ルルミアみたいな魔力お化けがライトを使うと一ヶ月以上光続けたり、目を焼くほどの強力な閃光を放つ事もできる。
俺は魔力量は平均より上ってくらいだからそこまででもなく、こうやって大きな光を発するには道具の補助がいる。魔力を良く通すミスリルナイフにライトを付与し、柄に取りつけられた魔石に魔力を貯める事により威力を上げ発動させる。
光が収まってきたところでシャロが指し示した方向に腕を使ったジェスチャーで、『王都外に降りろ』と伝える。
「ルルミア達は止まったよ。あ、手を振ってる」
シャロもルルミアに手を振り返しながら、おーいと声を上げている。流石に届かないんじゃない?とは思ったが、振る手に合わせてモフモフの尻尾もふりふりと振られる様が可愛かったのでとりあえず何も言わずにジェスチャーを繰り返した。
「ルルミアが腕で○を作った。あ、降りてった。騎士団の駐屯地からちょっと後ろの森の中」
「ギリギリで間に合ったか」
「危なかった」
「豆粒みたいな大きさでよく見えなかった……」
周囲の人達も俺が放ったライトと、その後のジェスチャーに何事かとルルミア達が来た方角の空を見ている。
「とりあえず、お迎えに上がるか」
「これ以上騒ぎになる前にルルミアを確保しよう」
「神獣様にお会い出来るチャンス!お供します!」
興奮しっぱなしのメラニアはダメと言っても無理そうなのでお供を許可し、森に向かって歩いていく。
「団長、さっきの強力なライトは」
「あれは俺だ。ランデル、今の光で野次馬が門の外に出ないよう見張れ」
「了解しました。団長は?」
「友人が非常識にも神獣に乗ってこの国にやってきたみたいなので注意してくる」
「それはまた…。流石団長のご友人ですな」
流石ってなんやランデル。
「メラニア!何があったんだ?」
護衛のために叩き起こされたシュライザーが勝手にどっかに行ったメラニアに事の次第を問い質している。そらそうだよね、護衛しろって言われたのに当の本人がいきなり駐屯地外にかけていったんだから。
「ちょうどいい。シュライザー、リッツ、アベイル、フリック、お供しろ」
「「「「ハッ」」」」
「これから先見るものは他言無用だ。一切の口外を禁じる。また、何があっても俺が指示するまで動くな、声も出すなよ」
「「「「了解です」」」」
シュライザー達をお供に駐屯地を抜けて森に向かう。途中物見櫓からこちらを見ていたホーキンスに、口の前に人差し指を立てて、『黙っていろ』とジェスチャーする。
頷くホーキンスに見送られながら、シャロの案内で街道沿いから森の中に入っていくと、天馬の頭をはたいているルルミアが見えた。
なにしとんねん!相手神獣やぞ!
俺達一同はその光景を目の当たりにして思わず立ちすくんだが、とりあえずシュライザー達とメラニアにその場で待つように言って俺とシャロで近づいていった。
ルルミアがこちらに気づいたのを確認して声をかける。
「ルルミア、お前、何してんだ?」
「やっほーデューク、さっきぶり」
いやそんな軽い挨拶返す前に色々説明しろやこの非常識エルフめなんでいきなりこの国くることになったんだしかもなんで神獣に乗ってこの国まで来たんだなんで神獣の頭はたいてるんだ神獣もなんでどっか嬉しそうなんだああもう突っ込みどころ多くて何から言えばいいんだよ!
「シャロもやっほー」
「やっほールルミア。何で神獣様の頭をはたいていたの?」
「これはね、この変態天馬が」
『オオッ!これまたエルフのお嬢さんに劣らぬ美処女!』
ルルミアの横にいた天馬が素早くシャロに近づいたかと思うと頭を擦り寄せ始めた。
『初めましてお美しい美処女の猫のお嬢さん。私はユールディンに住まう天馬と呼ばれる神獣の一柱。お嬢さんのお名前をお伺いしてもよろしいですか?』
「うちの可愛い妹をナンパするんじゃねえ変態神獣が」
シャロの胸めがけ頭を擦り寄せようとしたのを見て即座に間に入る。
『ぬ?貴様無礼であろう薄汚い男の分際で。その汚い手を今すぐ我の身体から離さぬと許さぬぞ』
「許さねぇのはこちらだ駄天馬が。汚い馬面を可愛い妹に擦り付けようとすんな」
『貴様、許さん。エルフのお嬢さんの知り合いだからと大目にみてやったのを調子に乗りおって。今すぐその存在を消滅させ』
「ねえ駄天馬」
『エルフのお嬢さん、その呼び方は止めていただけると』
「天馬、デュークとは喋れるんだね」
『何をおっしゃるかと思えば私がこのようの薄汚い普人の男と会話など』
「うるせえ駄天馬。汚いのはてめえの性根だ」
『……喋れておりますな。エルフのお嬢さん、まさかこ奴』
「デューク、右手の紋章、見せてあげて」
俺は右手の甲を掲げて祈りの力を込めるとカウリエンの紋章を浮かび上がらせた。
『何?!貴様、まさか豊穣の女神カウリエン様の使徒だと言うのか!』
「そうだ」
『ぬう……。あの今まで使徒をつくらなかったカウリエン様と初めて契約した普人がいるとは神獣界隈でも噂になっていたが、まさか貴様のような無礼な輩とは信じられん』
「神獣界隈なんて狭い界隈でどんな噂になっているかは知らんがな、俺は間違いなくカウリエン様の使徒だ。ご本人にもお会いしたことがある」
『な、我とて未だにお会いしたことのないお方なのに…。カウリエン様、このような薄汚い男とお会いになるなどその美しきお身体が汚れてしまいますぞ!』
「お前と会う方がよっぽど汚れるわ」
「確かに。私も汚された気分」
「よくわからないけど汚されたみたいなので兄さんで上書きしよう」
前からヒシッと俺の胸に引っ付いてくるシャロ。
思わず頭をモフナデしてしまう。
「なう~」
話の流れ的に、どうやらこの駄天馬と会話が出来るのはルルミアと俺だけらしい。俺は使徒だからだろうし、ルルミアは恐らく何らかの契約を結んだな。なんか光輝くパスが見えるし。
『き、貴様、いくら使徒とは言え神獣たる我に対して何たる侮辱。しかも猫のお嬢さんに正面から抱きつかれるとはなんとうらやまけしからん!おのれ、ここは少々お灸を据えてやらねばならぬようだな!』
なんか駄天馬が興奮して殺る気満々になっている。
「ルルミア?」
「やめなさい駄天馬」
『いや、だからエルフのお嬢さん、その呼び方は止めていただけますかな?それに何も本気でやりあうわけじゃない、ちょっと神獣の威厳を見せてやるだけですよ』
「違う、死にたくないなら止めなさい、と言っているんだよ」
『はっはっは、おかしな事をおっしゃりますなエルフのお嬢さん。邪竜との戦いで私の力はご覧になったでしょう?私が本気なれば』
『本気になれば、何なのかな~?』
さっきぶりなぽやぽや声が頭の中に響く。あらら。
『カウリエン様、態々お出でにならなくともよかったのに』
『デュー君、私は今すっごく怒ってるんだよ~』
ぽやぽや声だと怒ってる感があまり伝わってこないが、口に出すくらいには怒ってるんだなと理解した。
『私の大事な使徒のデュー君に薄汚いを連呼して、しかも私がデュー君と会ったら汚れるとかひどい事言って、怒らないわけないでしょ~』
『ありがとうございますカウリエン様。そのお言葉をいただけただけでも身に余る光栄です』
『私だけじゃないよ、お姉ちゃんもミアーナちゃんも怒ってるよ~』
それは、なんとも。あのクール系美女神とサバサバ系美女神が怒ってる様子はきっと凄く怖いんだろーな。
俺とカウリエン様の会話が聞こえていたのだろう、天馬は端から見てもわかるくらいに怯えきっていた。
『カ、カウリエン様、これは、その』
『む~、ただじゃ済まさないんだからこのセクハラ神獣め~!』
天馬の顔が真っ青になる。
馬でも顔色ってわかるんだなぁとどうでもいい事に感心しながら俺はシャロの頭をモフナデするのだった。




