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燃やした?水浸しにした?吹き飛ばした?地下に沈めた?

めちゃくちゃ遅くなりました……。


「ユールディン、もう少しで国自体が終わるとこだったな」


「あそこまで邪竜がユールディン皇家に食い込んでるとはさすがに予想していませんでした」


「団長が使徒じゃなかったら我が国も危なかったですよ、あのまま戦争が続いていたら」


 神殿からの帰り道、メラニアとシャロと一緒に歩きながら先ほどのアレッサの秤の結果について話していた。今は非常事態なので道行く人も騎士か衛兵しかおらず、その数もまばらだから聞かれるような心配もない。

 

「邪竜がユールディンにいる事自体知ったのが今日だったから、本当にギリギリだったような気がするなぁ」


「今回の事態でキーラン様とキグスリー様、それにルルミアがユールディンにいらっしゃったのは奇跡や運命としか言いようがありません」


「運命の女神ミアーナ様に感謝を。しかし団長とシャロがまさかS級冒険者で、キーラン皇子やその執事さんまでもがS級だったなんて最初に聞いた時はビックリしましたけど、この戦争で皆様が成し得た結果を考えれば納得です」


「まだ途中だ。むこうの決着がつくまでは何も成してはいないよ」


「この神紙だけでも、我が国を大きく変えるであろうものですよ」


「少くとも我が国で戦争を望む馬鹿がいなくなる事は確かだがな。そういえばリグリエッタの奴はどんな感じなんだ?」


「こちらに来る直前まではあまり変わりはありませんでしたよ。起きてる時はぼーっとして、ご飯は食べようとしないから三食栄養剤とポーションです」


「今むこうでは誰が世話してるんだ?」


「ゴルズ男爵がお連れになった女性の方が代わってくださいました。栄養剤とポーションは多めに渡してありますし、問題はないかと」


 ゴルズのじいさんが連れてきたのなら心配いらないだろう。やはり女性の世話は女性でないと色々やりづらいからな。


「そうか。とにかくあいつを生かして連れて行ければそれでいい。後はこの神紙の内容を元に宰相やリンクス公爵様が上手いことやってくれるさ」


「国王様のリグリエッタ王女に対する溺愛ぶりを考えるとそれでもまだ不安はありますが」


「そこも考えはある。まだ詳しくは言えんがな」


「流石団長」


「こっちより先にユールディンがどうにかなってくれないと困るんだがな。シャロはどう思う?」


「そろそろ決着がつく頃ではないかと。仕掛けるなら短期決戦でしょう」


「そうだよなぁ。さて、むこうからいつ連絡が来てもいいよう、団長らしく指揮所でどっかり座っているか」


「それがよろしいかと」


 ちなみにメラニアにはこの後ウォルトの杯で作った薬湯をパルダス侯爵様に届けてもらう予定だ。メラニア本人が立候補したのもあって、嬉しそうに薬湯の入った瓶を持っている。


「メラニアは前回同様シュライザー小隊を護衛にして向かうように」


「はい。わかっています。貴重な薬湯ですから」


 メラニアにはパルダス侯爵にも薬湯の入手先は言わないように釘を刺しておく。よく効くといってもどの程度のものかわからないし、使徒がそんなもの作れると知られてもろくな目に遭わなそうだ。


「団長の危惧するところは最もです。使徒逸話集にウォルトの杯で万人を癒した使徒が、最後は政争に巻き込まれ、対立候補の病を癒そうとしたからと王族に暗殺されてしまったお話があります。その国は神様の怒りを買いその後すぐに滅びましたが、そういった非道を防ぐために使徒を守る神官騎士が生まれた、と言われております」


「身に染みる話だな」


 それくらい、使徒ってのは常識外れなほどに便利な存在なんだ。だから周囲に秘密にしておきたかったんだが。


「あ」


 シャロが声を上げて俺の腕を掴んで建物の陰に誘導した。


「どうし……ああ」


「え?え?どうされたんです?」


 いきなり身を隠した俺とシャロに、不思議な顔をしながらとりあえず一緒に物陰に隠れるメラニア。


 第三騎士団の駐屯地に黒色冒険者達がやってきていた。


 後何故かフリッツも一緒にいて、魔術師の子と何か喋っている。


「いるなぁ」


「いるねぇ」


「え?あの真っ黒な人達ですか?見つかると何かまずい事でも?」


「いや、まずいと言えばまずいと言うか」


「と言うか?」


「気まずい、という方向にまずいかな」


「二人とも何をしたんです?」


「話すと長いが、カニのせい?」


「カニのおかげ?」


「カニ?あの横歩きするハサミを持ったカニですか?」


「そのカニ」


「何故カニが?」


「美味しいから」


「大好物だったから」


「え、お二人の好物なんですか?」


「いや、キグスリーの大好物」


「え?ユールディンの執事さんの?え?」


 メラニアの疑問しかないんですがって顔をよそに、俺達は黒色冒険者達がいなくなるまでその場で隠れ続けた。




「団長、お戻りになられましたか。例の冒険者達から冒険者ギルドより伝言が届いております」


 また不在だと聞いて三人ともひどく残念がっておりましたな、というランデルの報告に、そうか、と一言返して椅子に座る俺をメラニアが不思議そうに見ている。


「首尾はどうでしたかな」


「上々だ。お布施は喜ばれ、神殿の協力をとりつけた」


「流石ですな」


「冒険者ギルドはなんと?」


「邪竜の討伐に成功し、キーラン皇子はその勢いのままに第三皇子が籠城している帝都ルフラントに攻めこんだ、とのことです。後、支部長のゴーマット氏より手紙も預かっております」


「流石キーラン皇子だな、見事邪竜を討ち滅ぼしたか。これでなんの憂いもなく謀反を制圧できるだろう。手紙は後で読むとして、フリッツ、門での捕縛では大活躍だったみたいだな。それで、フォーゲル団長から何か?」


 黒色冒険者が去ってから、何食わぬ顔で声をかけて一緒に指揮所にやってきたフリッツは、ピシッと気を付けの姿勢とって報告を始めた。


「はっ、ありがとうございます。周りの協力あってこその成果でした。フォーゲル団長は王都内の粗方の不正貴族は捕縛した、これより後は第二騎士団と連携し、東方辺境領での捕縛に移る、とのことです。第三騎士団も東方辺境領での任務に応援されたし、との事です」


「了解した。フォーゲル団長と人員の調整に関してまた話し合わねばな。後、こちらの用意も整ったのでそちらも用意出来次第宰相府へご足労願うと伝えろ」


「は、すぐにフォーゲル団長へお伝えいたします」


「ご苦労だったな」


「は、それでは失礼いたします」


 何か話したそうは雰囲気ではあったが、急ぎの内容だと理解したのだろうすぐさま踵を返して戻っていった。


「ランデル、シュライザー達はまだ寝ているか?」


「はい。起こしますか?」


「ああ、メラニアの護衛としてパルダス侯爵邸に行かせる。メラニアが抱えている瓶には薬湯が入っていてな、これをパルダス侯爵様にお届け差し上げる」


「ウォルトの杯、ですな」


「知っていたか。驚いたな」


 ランデルは色々な雑学に詳しいところがあるが、まさか神殿関連にも詳しいとは意外だった。


「年の功ですな。老人は様々な知識を蓄えるものです」


「老人というにはまだまだ若いだろ。後、ゴルズ男爵をこちらに呼ぶよう早馬も頼む」


「了解しました」


 ランデルが指揮所の外に出ていってから、俺はゴーマットからの手紙を開いた。


「えーっと……」


 邪竜との戦いは熾烈を極めたが、念のため後方に控えていたシーフのソルドリが余波で怪我した以外は三人と一頭に大きな怪我はなく、終わってみれば完勝といってよい内容だった。その戦いを被害の及ばない距離から眺めていた兵士達の士気はこれ以上ないくらい高まっていたため、そのまま帝都に攻めこむべきとキーランが決断した。ただし神獣天馬は人同士の争いに加わるつもりはないと断り、さらにルルミアも戦争はやだとそのまま天馬に乗ってラグラント王国方面に飛んで消えて……。


「なにぃ!」


「どうしたの兄さん?」


「団長、いかがされたんです?」


「ルルミアのアホが」


「ルルミアが何かやったの?燃やした?水浸しにした?吹き飛ばした?地下に沈めた?」


「凄い物騒な内容が……」


「こっちに来るって」


「え?近いうちに来るって言ってたよね?何がダメなの?」


「天馬に乗って来るっぽ」


「ルルミアのアホ」


「天馬?!神獣じゃないですか!見たい!」


 俺は大興奮なメラニアに返事をせずに指揮所の外に出て辺りの上空を見回した。


 あかん!よく見えん!門の上に行かないと!


 門に向かい走り出した俺を追ってシャロとメラニアがついてくる。メラニアお前はついてこなくていいんだって。


 意外な足の速さを見せるメラニアとシャロをお供に驚き顔の門番達を無視して門の上にたどり着いて、ユールディンのある西側の空にむかい目を凝らす。


「いた。凄い速さでこちらに向かってきてる」


 流石シャロ、目が良いな。俺にはまだ見えない。


「え?え?全然見えない!」


 メラニアがどこなの~?と空をキョロキョロ探しているのを尻目に、シャロは後数分でこちらに到着するよ、どうする?と聞いてきたので、しょうがないから虎の子の魔石付きミスリルナイフを使うと返した。


「はい、兄さん」


 シャロからミスリルナイフを受け取り、魔力を込める。


 さらにミスリルナイフに魔術『ライト』を宿し、魔石の魔力で増幅させる。


「メラニア、目を閉じるか頭を下げてろ」


 シャロが指し示す方向を見ながら、俺はライトを発動させてナイフを上空に向かって投げたのだった。




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