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暗殺しようとしていた相手に選択肢を与えてやるんだから俺は物凄いお人好しだぞ

めちゃくちゃ遅れました…。


投稿ミスってました。確認ボタン押してから寝たと思ったんだけどなー。


 俺達は近衛の詰所でぐったりした後、行きたくなかったが行かざるを得ないリヴェラの尋問を行うために隣に併設された牢屋に出向いた。


 正直他の騎士に任せても良かったのだが、俺としても世話になったアル団長の評価を下げたくなかったので、事情を知る俺達だけで行う事にした。


 アル団長も騎士団長の時は冷徹とも言える頭の冴えで幾多の事件を解決してきた武官では驚異的な我が国きっての頭脳派だった。


 だが、彼も人の子だったのだろう。前ホリビス伯爵との友情がその眼を曇らせてしまった、そういう事だ。だからこそかつての部下のこの俺がこの案件を上手いこと処理してきっちり後始末を着けなければ。




「と、言うわけであんたの立場、事情、その他諸々はわかったが、だからといってあんたに同情なんか出来ないしする気もない。だから俺としてはそんな裏事情は見ない事聞かない事にしてさっさと終わらせたいわけだ」


 目の前ではいきなり自分の出自の秘密から悪事にいたるまで全部ばらされたリヴェラ・ホリビスもといオリヴィア・マグヌスは、あっけにとられて放心していた。


「あんたが大人しく罪を受け入れるなら、あんたの骨の一部をお姉さんが眠る墓地に埋葬してやる。受け入れないなら犯罪者墓地に全部放り込んでスライムの餌にする。どうする?」


 リヴェラは俺の事をまるで化け物でも見るような目付きで見た。


 おいおい、暗殺しようとしていた相手に選択肢を与えてやるんだから俺は物凄いお人好しだぞ。

  

「ミ、ミュリアス様が、私を助けに」


「それも無理だ。邪竜は討伐された。ユールディンに偶然いたS級冒険者三人によってな。第三皇子ミュリアスは第二皇子キーラン様に反逆者として首を落とされた」


 予定ですが、まぁ大丈夫でしょう。ダンジョン奥で引きこもらされていた奴相手に不覚をとるようなやわな奴らじゃない。

 

 第三皇子に助太刀に向かったであろうリリーはちょいと不安要素ではあるが、リリエンタール氏族が責任持ってなんとかしてくれると信じている。


「そ、んな、嘘よ!そんな都合の良い事が起こるはずないわ!」


「居合わせたS級は『剣狼』『執事騎士』『本狂い』だ。剣狼と執事騎士はユールディン出身で里帰り中、本狂いは知識の棟にいた。お前が信じる信じないなど知らんがな」


「ミュリアス、様……」


「これだけ好きにやったんだ、お前の命が助かる目はない。ユールディン帝国も、ラグラント王国も、天災と戦争で疲弊しすぎている。特に民は場所によっては飢死寸前だ。これ以上お前ら腐敗貴族をのさばらせては国が滅ぶ。ラグラント王国も、一度国内を綺麗に掃除しないとな」


「私は、ユールディン皇家の血をひく高貴な、」


「ユールディン皇家は現在西部皇家が中央で権力を握っているが、第三皇子の謀反を口実に西部皇家は全て権力から遠ざけられる。これからは東部皇家がそっくり入れ替わる予定だ。第二皇子キーラン様は西部皇家になるが、キーラン様自身は元々母親方のエッケベルク子爵家で育てられたためどの西部皇家とも繋がりがない。西部皇家は、もはや主だった家の当主以外は皇族と見なされない。出自の不確かなお前もな」


「………………」


 リヴェラはもはや息をするのがやっとの状態だ。


 そりゃそうだろうな。ユールディン皇家からラグラント王国の伯爵家に突然追い出されて、不満しかない日々を過ごしながら己を正しい立場に戻そうとあれこれ策略を巡らせていたのに、策略が全部パァになり、戻るべきユールディン皇家はもはや名ばかり皇族への道しか残されていない。


 己を形作る全てが無意味となったってわけだ。自業自得だがな。


「それじゃあ改めて、全て認めてお姉さんの墓に入る権利を得る書類と、認めずにスライムの餌となり犯罪者墓地に入る義務のある書類、どっちかにサインしな」


 俺のとびっきりの笑顔に顔を青ざめてぶるぶる震えながらペンを受け取ったリヴェラは、震えて読みづらい字でサインをするのだった。




 リヴェラの尋問を終えた俺達より早くリリザが近衛の詰所で待機していた。俺の冒険者証を丁重に返すと、気を付けの姿勢で報告をした。


「コスタル団長、母と連絡がつきまして、リリーを全力で止めに入るので、いましばらく時間を下さいとの事ですわ」


「わかった。良い結果が聞けるように期待する」


 リリザはほっと一息ついて、用意していたお茶を入れはじめた。


 リリザがここまで外交ルートでの抗議を恐れる理由は、エルフ族の民族性に起因している。


 エルフは各国の森林部を中心に氏族単位で暮らしている。氏族毎にルールや生活様式は多少異なるが、民族同士の絆は強く、困っているのが例え他部族だろうとエルフは助け合うのが当たり前だ。


 だからこそ他部族に迷惑となるのを彼らは酷く嫌う。今回は外交上で両国に睨まれるのはリリエンタール氏族だが、この外交ルートを使った抗議が問題で、正式な抗議となると、公に国が発表する事になる。


 すると、例えば商人何かは敏感に反応し、大国二つに同時に睨まれるような相手に商売をして自分達も睨まれるのはごめんだと言ってエルフの里への交易が最低限になったり値がつり上がったりする。


 リリエンタール氏族だけならともかくエルフは民族同士の絆が強いがために他の氏族もあらぬ疑いをかけられてしまう事が少なくない。


 なのでエルフは外交ルートでの抗議等を酷く嫌う。だから普段ならまず内々で済ますのが当たり前となっているが、ここでも問題になるのがエルフの民族性で、例え外で有罪となったり何らかの疑いがかけられたりしても、エルフは同族を強く庇う。


 それ故に引き渡しに応じない事が結構ある。それが金銭等で解決できるような事案ならともかくそうでない場合は酷く揉める。


 だから俺はリリーが抜け出したと聞いた時点で最初から内々は無理だ、さっさと引き渡せ、さもないと外交上で追い詰めると半ば脅しのような手口を使ったわけだ。


 それに今回は嘘偽りなく両国の国交正常化を脅かす大問題なので、騎士団長という外交官でない高位武官が直接里に向かえばエルフは両国に対して仲間のためなら武力衝突も辞さない構えなのかと周囲に認識させるに充分な理由となる。


 そうなるとエルフ民族全体から猛抗議が来ることは必至で、下手すりゃリリエンタール氏族はエルフ民族の氏族連合から外される可能性だって出てくる。


 だからこそ普段は腰が重たいエルフ族がここまで迅速に動いたってわけだ。


 リリザは俺達にお茶を振る舞いながら口を尖らせた。


「にしてもコスタル団長も酷いですわ。本気じゃないとはいえ、あのような手段をとられたら私達は絶対に逆らえませんわ」


「え?本気だし失敗したらやるよ?」


「え?」


「そりゃそうでしょ。両国にとって和睦がなるか否かの大事な時に不穏分子となり得る人物を隠しだてしてただけじゃなくこちらが気づかなかったら言いもしなかったんでしょ。しかも隠しきれずに逃げられてるし」


「いえ、隠していたわけではなく、折を見て報告をしようと」


「俺が先に聞いた時点で隠していた事になるよ?だって熱烈な第三皇子派のエルフがいる事を第三皇子が謀反を起こした時点で報告してこなかったわけだし。と言うかだな、そっちのルートから探って行けばもっと楽に事を進められたと思ったりもするんだが?」


 どうなんだよ?とジト目でリリザを睨むと、ひきつった笑みを浮かべながらいえそれは、と言い訳をしようとして、言い訳のしようもないと悟るとガバッと頭を下げた。


「申し訳ござませんでした。リリエンタール氏族を代表して謝罪いたしますわ」


「よろしい。謝罪は受け入れる。後は、リリザ本人にも約束してもらわないといけない事があるよな」


「えーと、それは」


 リリザは冒険者証を見る。これも含めてだよ。


「リリザ、お前、気づいてるだろ?」


 リリザはビクリと身体を震わせた。




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