表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/96

鹿を食ってる俺を見て、ぐ~~、とでっかい腹の虫を鳴らしたのさ

寝落ちがパターン化してきてしまった…。


 まず、俺とフランソワがどこで出会ったから始めないとな。


 前に話したことはあったと思うけど、俺は東部辺境伯領のロヴォー男爵家の次男として生まれた。


 ロヴォー男爵家は武人の家柄でね、親父は身体もでかくて剣にも槍にも優れた東部辺境伯領一の戦士だった。兄貴も親父そっくりの偉丈夫で、やはり剣も槍も得意な、戦士として生まれてきたとしか言い様がない男だった。


 一方俺は、種族こそ親父達と一緒で生まれてきたけど、見た目も身体もお袋似だった。運動はそこそこ出来るほうだったけど、親父や兄貴みたいな武力の才能はあるほうじゃあなかったね。


 それでもロヴォー家の男として恥ずかしくないよう鍛えてはいたけど、頑張ったら誰でもなれるくらいにしかなれなかった。だけど何が転機になるかはわからないものでね。俺の隠れた才能は当時増えすぎていた岩鹿の狩りに初めて連れられていったのがきっかけで開花した。


 俺は剣も槍も親父達の足元にも及ばなかったが、弓矢に関しては親父達にも負けないくらいの腕前で、だからこそ当時まだガキだった俺を親父は狩りに連れていったんだろうね。


 ロヴォー男爵領は山を挟んでホリビス伯爵領と隣り合っていてね、この岩ばかりの山に住む岩鹿が、天敵である狼が家畜を食い荒らすってんで駆除されて数を減らした事によって山から麓まで降りてきて畑をあらすようになった。


 だから麓や山の下の方にすんでいる岩鹿を駆除するために狩りに出掛けたんだが、岩鹿はとても臆病で逃げるのが上手い奴でね、平野部の鹿みたいに群れで一斉に同じ方向に走るような逃げ方じゃなく、それぞれが別々の方向に逃げ出して的を絞らせないような逃げ方をするんだ。


 だから複数人で狩りをする時は事前に誰がどの鹿を狙うか決めてから同時に矢を放つってやり方だったんだ。俺は初めての狩りだったが一度も外さなかった。弓矢にはそれなりに自信があったが、それ以上に岩鹿がどこにどうやって逃げるのかが手に取るようにわかった。どこに逃げるのかがわかれば、後はその逃げ出す方向に合わせて矢を放てばいい。


 親父や兄貴、一緒に狩りに行った狩人達は驚いていたね。百発百中だ!ってね。でも俺からしたら不思議でしょうがなかった。だって岩鹿はどう逃げるなんてわかりきってるじゃないかってさ。俺には岩鹿が何故その道筋を辿るのかが感覚的にわかっていた。あそこの木が邪魔をしてさらに跳んだ先には岩があるからあちら側にしか跳ばないのでこの辺りに射てば当たるだろうなって具合にね。


 皆はそんなの瞬時に見てわかるもんじゃない、予測をたてることはできるけど、それをまったく外さないなんて絶対無理だと口々に言うわけだ。親父と兄貴も自分じゃ絶対に無理だと言うのを聞いて、親父にも兄貴にも出来ない事が出来た自分が誇らしかったよ。


 親父はロヴォー家の武人としては落ちこぼれだった俺に対して兄貴と比べるような事も蔑むような事もせずにただ真っ直ぐに育ててくれた。兄貴も俺の事を大事な弟だといつもいってくれた。


 だけどやっぱり劣等感を感じていた俺にとって、初めて二人に胸を張って並べる事が出来たって嬉しかったね。


 その日から俺の仕事は狩りになった。


 元々、岩鹿以外にも大足猪や曇天烏とか畑を荒らす害獣は後をたたなかったから、狩る相手には事欠かなかったよ。猟師達やその息子達と一緒に毎日のように狩りをして、一年以上経ったある日、俺はいつも通り山に狩りに出掛けたら森の奥から悲鳴が聞こえた。誰かが狼にでも教われたかと駆けつけて見れば、熊系の奴が岩鹿にぼこぼこにされていた。


 俺はビックリしたが岩鹿にばれないよう慎重に近づいて、なんとか一矢で倒す事に成功して熊の奴に近づいたら、そいつは服がビリビリに破れた状態で顔から血を流しながら気絶していた。


 その熊公が、フランソワだった。


 とりあえず岩鹿の血抜きしながらそいつの手当てをしてやったんだが、中々目を覚まさない。かといってそのまま放置も出来ないんでしょうがないからそいつを馬の背にくくりつけて猟師小屋に運び込んで寝かしてやった。


 熊系の奴は体型が立派だから、とにかく重かったね。小屋に運び込んだだけで汗びっしょりだった。狩りにいく気が起きなくなった俺は小屋の前で肉を焼いて食う事にした。血抜きした岩鹿を適当に切って塩とハーブで味付けして食べてたら、小屋の中からゴソゴソ音がして、目を覚ました熊公は、鹿を食ってる俺を見て、ぐ~~、とでっかい腹の虫を鳴らしたのさ。


 思わず大笑いした俺に、熊公は真っ赤になりながら助けてくれてありがとうと礼を言って、鹿肉を別けてくれないかとお願いしてきた。俺は沢山あるからいくらでも食いなと切り分けてやると、凄い勢いで食べ始めたよ。


 それから自己紹介してフランソワって名前で同い年で俺同様次男で家出同然で出てきたと知った。出てきたはいいけど何も持たずに出てきたからお腹がすいて倒れそうになっていたところに岩鹿を見つけて後ろから飛びかかったら後ろ足で蹴り跳ばされて、そこから記憶がないって言い出した。


 俺は再び大笑いして、悲鳴が聞こえて見にきたら、白目むいて岩鹿に蹴り転がされていたから助けてやったと言ったら、フランソワは一矢で岩鹿を倒した俺を凄い凄いと誉めちぎって、自分にも弓矢を教えてくれないかと言い出した。


 教えてくれもなにも弓矢を持ってないしずたぼろだしで、教えるのは構わないけど、ひとまず家に帰れと諭したら帰り道がわからないとポロポロ泣き出した。


 デカイ図体のわりに泣き虫なんだなとからかって、どこに住んでいるのか聞いたらホリビス伯爵領だって言うから途中まで送ってやったんだよ。後はこの道を真っ直ぐに行くだけだって場所まできたら、フランソワは再び弓矢を教えてくれとお願いしてきたから、今度は弓矢を持って自力で猟師小屋までこれたら教えてやるって約束して別れた。


 それから一週間後、フランソワは新品の弓矢を持って猟師小屋にやってきた。


 約束通り弓矢を教えてやる事にしたんだが、フランソワはあまり器用な奴じゃなくてな、最初は弓矢を飛ばす事すら出来なかったけど、初めて真っ直ぐに矢が飛んだ時はとびあがって喜んでいたよ。


 一ヶ月くらい練習したら弓矢もまあまあ飛ぶようになってきたからそろそろ岩鹿でも狩りに行こうってなって、俺のとっておきの場所で岩鹿の群れを発見して、フランソワにあいつがあそこを通るから二十数えたら真っ直ぐに射てと言ってまず俺が一頭仕留めた。ぱっと散開したから二頭三頭仕留めてフランソワの方を見たら、一矢で仕留める事に成功していた。


 フランソワは俺がおめでとうと声をかけると、飛び上がって喜んだよ。教えた俺も嬉しくなって、やったなって二人で両手をパーンとやってね、猟師小屋まで獲物を持ちもどって、フランソワが仕留めた鹿を一緒に食べた。フランソワの奴はこっそり酒なんか持ってきてやがったから、二人で祝杯をあげたのさ。


 その頃には俺達は無二の親友になっていた。狩り以外にも色んな話をしたよ。二人ともお互いが貴族の子だってのは薄々気づいていたんだけど、家名は名乗らずに名前で呼びあっていた。将来何になりたいかとかいつか行ってみたいところとか美味しい料理の話や可愛い女の子の話。


 あの頃が、きっとフランソワも俺も人生で一番楽しかったんだと思うよ。それくらい、俺達は仲が良かったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ