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腐敗貴族と悪徳商人の見本市

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 色々聞きたそうだったリリザをまた今度なと追い返し、シュライザー達と合流した俺達は一先ずランデルが待つ南門に向かった。


「シュライザー、パルダス侯爵様のご様子は?」


「やはり色々とショックだったのでしょう、お二人と別れた後はイリシャ様がお声をかけられても反応されずにただ虚空を見つめておられました」


「そうか」


 伝えないわけにはいかない話だったが、パルダス侯爵の心中を思うとやはり少々気が重くなる。


 今はただ、パルダス侯爵の体調を回復させるよう手を尽くすくらいしか出来ないが。


 シュライザー達の報告を聞きながら向かった南門の前には、警備している衛兵達の前で外に出せと喚いている馬車の集団がいた。


「いいからここを開けろ!私を誰だと思っている!」


「君、私は急いでいるのだよ。今ここを通してくれたら君を今の給料の倍払って我が家の門番として雇ってやろう」


「なんだ?まだ金が足りないと言うのか?ならばほらもう一袋追加してやるから早く通すがいい」



 俺達の存在にも気づかず必死になって門番を買収しようとしている馬車の持ち主達。


「腐敗貴族と悪徳商人の見本市みたいな光景だな」


「ああいう手合いはなんでああ馬車から格好から悪趣味なんですかね」


「全員今回の関係者ですかね?」


「全員じゃないかもだけどここに来てる時点で何らかの犯罪を侵してるのは間違いないよね」


「僕の鼻は全員がクロだと証言しています」


 フリックの言葉に全員が頷いた。


「全員、捕縛せよ」




「お戻りになりましたか団長。首尾はいかがでしたかな?」


「まあまあだが、暴けば暴くほど深くなっていくヤマだ」


「また何かの面倒事が?」


「ああ、詳しく話すがその前にノックス、メラニア」


 ランデルと一緒に出迎えてくれた二人に早速パルダス侯爵邸へ向かうよう指示をする。


「何と、そこまでお体が衰弱されているとは」


「すぐさま治癒が必要ですね」


「ヴェルデローザにて念のため解毒の薬の材料を仕入れておいて正解でした」


「パルダス侯爵様を頼む。シュライザー達はフリック以外はこのままノックス達を護衛して至急パルダス侯爵邸へ向かえ」



 

 ノックス達を見送った後、天幕内でランデルに今までの経緯を説明しなかがらシャロが作ってくれた軽食をフリックと共に摘まむ。


 今の今まで忘れていたが、俺達は昨晩から何も食べていなかった。気づくと腹は減るもので、フリックと二人して競うように腹に納めた。


 シャロに食後のお茶を淹れてもらってから、シャロも何か食べてくるよう指示し、一息ついてからランデルと今後の協議をする。


「まず、王城へはまだ報告に行かずに動いたほうがよろしいでしょうな。国王様は何かしらの理由をつけてリグリエッタを引き渡すようにおっしゃるでしょうし、団長も拘束される可能性があります」


「ああ、ランデルの言う通りリグリエッタ達をゴルズ男爵に預けてきて正解だったな」


 第三騎士団を二手にわけた後、第三騎士団後発隊と辺境伯軍と中央軍をさらにわけて、ランデル達は先行し、ゴルズ男爵が残りの両軍を統率して後から追いつくという流れだったのだが、ランデルの発案で中央軍だけでなくいっそリグリエッタを含めた罪人もゴルズ男爵に預けて純粋に第三騎士団だけで動いた方が何かあった時に身軽に動けるだろうという話になった。


 ゴルズ男爵達にはあまり急がず移動してもらうようお願いしてあるからまだ王都街道の途中だろう。


「次は王都の不正貴族どもですが、こいつらはこのまま近衛に任せましょう。内偵を進めていた彼らがこのまま捕縛を行った方が効率もいいでしょうな」


「フォーゲル団長とマクネス副団長が張り切っているからな」 


 あの二人なら今日は深夜まで休まず捕縛し続けるだろーな。


「我々がやるべきは門の封鎖の継続。そしてゴルズ男爵様との合流後は東方辺境伯領の監視、ですな」


「第二騎士団も和睦前に張り切っていたからな」


 ラグラント王国第二騎士団は騎士団の名を冠しているが、実際は戦艦を中心とした水軍が主力となっていて、騎馬に乗るのは一部の陸戦隊のみで、他に海馬を操る精鋭隊が存在するが、基本は皆船乗りとして日々の軍務についている。


 ラグラント王国は主要な港はほとんど東部に集中しており、北の大陸と東の大陸との交易と大規模な遠洋漁業が中心となっている。西部にも港はあるが、潮と地形の関係から大型船舶が活動出来ないため、小型船によるユールディンとの交易と近海漁業が中心となっている。

 

 第二騎士団は海賊や密輸船を取り締まるのを主任務としており、その中にはホリビス伯爵のような麻薬や武器を密輸入する不正貴族の取り締まりも含まれている。


 紅の騎士団の中には東方貴族のボンボンも多かったので、これを機に少しでも東方貴族の情報を収集して取り締まれたら、というのが彼らの希望であった。


 と言うのも彼らの取り締まりは基本とかげの尻尾切りで、どれだけ船を拿捕してもまた新たな船が同じことを繰り返すからだ。


 第二騎士団はもちろん陸の上の黒幕達の内偵を行っていたが、海上での任務を疎かには出来ず、あまりそちらに人手がさけないのが実状だった。


 だから少しでも東方貴族の情報を欲しがっていた第二騎士団にとってそのトップターゲットの一人であるホリビス伯爵の捕縛は朗報であり、実は捕縛してすぐにホック達近衛を介して第二騎士団に伝えられ、今頃はホリビス伯爵本邸は第二騎士団によって制圧され、その傘下の海賊やマフィア、悪徳商人が芋づる式に捕らえられているに違いない。


 普段あまり顔を合わせない間柄ではあるが、彼らの悲願に少しでも貢献できたなら、同じ騎士団として誇らしい気持ちになる。


 ちなみに第二騎士団の団長は傷だらけのモリモリマッチョなリザードマンで、豪放磊落な海の漢、というイメージがそのまま凝縮された外見だ。副団長は海鳥系の獣人で、風を読むのに長けた我が国一の航海士らしい。


 普人が団長副団長なのは第三騎士団だけだが、実は我が国で騎士団の団長と副団長が同時に普人なのは歴史上初だったりする。


 まあ、もうすぐ解散なんだが。


「東方辺境伯領の監視は必要だが、それはこの後行う予定の会談内容次第だな」


「マドスの鏡、ですか。冒険者ギルドには独自の情報網があるとは聞いていましたが、まさかそんな凄い魔道具だったとは」


「全ての支部にあるわけではないし、使用には色々制約があるから誰でも使えるってわけじゃないけどな」


「団長はその数少ない使用可能者の一人なわけですな?」


「まあな。冒険者時代にちょっとな」


「どちらにしろゴルズ男爵が来られるまでは門の封鎖を継続せねばなりませんから、先ずは会談を先に終えられるのがよろしいかと」

 

「そうだな。そろそろ向こうも用意が整った頃だろう」


 俺は再び冒険者ギルドへと向かった。




 

 

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