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これが高位貴族と下位貴族の差かぁ

ヤバい、最近更新が遅くなりまくりだ…。


「ご当主様、バウマンです。第三騎士団の団長であるコスタル男爵殿がお目通りしたい、と」


「………ぇ」


「分かりました」


 え、今、何言ってるかわかったの?というくらい微かな返事に答えるバウマン殿。


 思わず顔を見合わせるが、他の面子もシャロ以外は首を横に降った。


「入室のご許可が出た。入られい」


 バウマン殿にドアを開けてもらい、失礼しますと会釈をしながら入室したパルダス侯爵の寝室は、今シャロと住んでる王都の家のリビングより広かった。


 これが高位貴族と下位貴族の差かぁと内心呆気に取られながらベッドの手前で改めて挨拶をする。


「お久しぶりでございますパルダス侯爵様。第三騎士団団長、デューク・コスタルでございます。本日は、侯爵様にお伝えせねばならぬ事があって参りました」


 何年ぶりかに会ったパルダス侯爵は、別人かと思うほどに痩せこけて、髪は真っ白になっていた。

 

 その枕元には、第二夫人と思われる綺麗な普人の女性が椅子に腰掛けており、少し離れた机の後ろに医者の格好をした普人の男が調合中だろう薬剤を手に立っていた。


「ひ…し、ぶ…な、コス…ル…長」


 もはや声を出す体力もないようで、途切れ途切れの声を女性が耳を近づけて聞き取り、こちらに伝えてくれた。


「お初にお目にかかります、コスタル団長。私は第二夫人のイリシャ・パルダスです。旦那様は見ての通り病に犯されお体が優れず、お声をだすのもやっとなのです。無作法ですが、代わりに私がお言葉を伝える事をお許し下さい。旦那様はこうおっしゃいました、久しぶりだな、コスタル団長、と」


 かなり低姿勢で驚いたが、やはり第二夫人だったか。


 第一夫人があれ過ぎて影が薄いが、彼女は周りが側室を迎えるよう勧める中で、第一夫人だけで良いと言い続けてきたパルダス侯爵が、唯一迎えるのを頷いた器量を持つ女性で、外交を主に務めるイヴァルス子爵家の長女だ。


 第三騎士団的にはイヴァルス子爵は例の娼婦の子をメイドとして引き取ってくれた恩人でもある。


 イヴァルス子爵は外交官として各国に出向いているためか娼婦だからどうだといった偏見はなく、実際にあの家で働いている人の大半は外交先の国で拾ってきた人々やその子孫だったりする。


 娼婦の子を連れていく時に一度だけお邪魔させて頂いた事があるが、その国際色豊かな顔ぶれに驚いたものだった。


「お体が優れない中、お時間を取っていただきありがとうございます。本日は侯爵様に火急お伝えせねばならない事があってまいりました。少々刺激の強い内容でございますが、お話ししても?」


 イリシャ様は心配げな様子だったが、パルダス侯爵はゆっくりと頷いた。


「ありがとうございます。単刀直入に申し上げます、侯爵様の病は、盛られ続けている毒が原因でございます」


 パルダス侯爵はゆっくりとだが目を見開き、イリシャ様は両手を口にあてて声を圧し殺した。


「毒を盛るよう指示した者は、第一夫人、リヴェラ様です。その手助けをしたのが、リヴェラ様の実弟、ホリビス伯爵と、侯爵様の実弟、フスカ男爵です」


「ま…こ、と…か?」


 こちらにも聞こえる声量で、間違いであってくれという思いがこちらに伝わってくる問いかけだった。


「はい。実行犯はシャハルザハルの目、と称する北の大陸を根城にする暗殺者集団です。我々も襲われましたが、返り討ちにして捕らえ、全て吐かせました」


 パルダス侯爵はゆっくりと目を閉じると、その目尻から涙を一粒流した。


 しばらくそのまま動かずにいたパルダス侯爵だが、ゆっくりと目を開くと、イリシャ様に何事か呟いた。


「最初から詳しく話してくれ、とおっしゃっています」


「わかりました。ですがその前に」


 シュカカカッ!


「ウグッ!」


 医者の格好をした男が懐から何かを取り出そうとした瞬間、シャロ達が投げた投げナイフが男の頭や胸、腕に突き刺さり、男は一声呻いて後ろに倒れた。


「調べろ」


 俺の指示に団員達は寝室にまだ何者かが隠れていないかを、シャロは倒れた男の息と懐の中身を、それぞれ調べ始めた。


「突然の無作法、お許し下さい、あの男こそ侯爵様に長年毒を盛り続けた犯人です。安全を確認するためこの部屋を調べさせていただきますのでご容赦のほどを」


 呆然とするイリシャ様と、その目からは感情の読み取れないパルダス侯爵に謝罪をする。


 気にするなとばかりにゆっくりと頷くパルダス侯爵に頭を下げて、シャロの横に屈みこむ。


「デューク様、これを」


「やはりシャハルザハルの目だったな」


 男の懐にあったのはもはや見慣れた毒の瓶だった。


「団長、こちらは異常ありません」


「こちらもです」


「異常なしです」


「こちらも異常ありません」


「わかった、下がれ」


 四人を元の位置まで下がらせ、シャロが並べた男の持ち物を確認していく。


 毒瓶と煙幕瓶など今までの構成員と同じものと、医者としての変装がばれないための医療器具。毒が塗ってあるナイフは所持していなかったが、靴にはやはり隠しナイフ。


「シャロ、調合していた薬を調べてくれ」


「はい、デューク様」


 机の上には計りやすり鉢、小皿やいくつかの薬草みいな植物を乾燥させたもの、何かの結晶や粉などが置いてあった。


「…………………これは」


「どうした?」


「デューク様、この男は医者としての能力は本物だったと思われます。この机にある材料で作れる薬は、体の内部の調子を整えるための薬です。ただ、おそらくその途中に希釈した例の毒を混入し、パルダス侯爵に処方していたのでは、と」


「医療知識のある人物が見てもばれないように、か」


「私の見立てが正しいかは念のためノックス先生に診てもらったほうがよろしいかと」


「わかった」


 シャロはそのまま後ろに下がり、俺は不安そうなイリシャ様とパルダス侯爵に説明をする。


「パルダス侯爵様、やはり侯爵様の病は奴らの毒が原因であったようです。今回の事件、全てはリヴェラが企んだ事です。侯爵様がお気づきだったかは分かりませんが、リヴェラはずっとフスカ男爵と不義密通を繰り返しておりました。侯爵様とリヴェラが夫婦となる前からです。これをお伝えするのは心苦しいですが、ご長男と次男、五男は侯爵様との御子ではなくフスカ男爵との子であり、御子様方もリヴェラの教育により自分達が侯爵様との子ではない事を承知しております」


 イリシャ様はやはりか、といいたげな表情で、パルダス侯爵はおそらく心のどこかで疑っていたのかもしれないが、何も言わずに話の先を促した。


「そしてリヴェラは侯爵様を亡き者にするため、実弟のホリビス伯爵と共謀して実父の前ホリビス伯爵を殺害し、ホリビス伯爵の伝でシャハルザハルの目を紹介してもらい、まずは執務室にある隠し棚の酒に毒を少しずつ混入し、侯爵様がお倒れになる日を待ち、倒れられた日以降はパルダス侯爵家を操り派手な生活を送っては悪事を重ねていきます」


 バウマン殿もおっしゃっていたが、あの隠し棚は限られた者しか知らず、毒味もされないため、パルダス侯爵も誰が先導したかは理解しているようだった。


「それはお子様方も加担し、第四王女リグリエッタの取り巻きとなりいくつかの悪事がばれないようにリグリエッタを操り問題を起こしていました。今回一連の悪事がバレたのは、リグリエッタが自身の欲望のために起こした今回の戦争で、私がユールディンとの戦で和睦を成したのを反古にしようとしたリグリエッタとその取り巻きである紅の騎士団を反逆罪で捕縛したのがきっかけでした」


 リグリエッタのくだりでパルダス侯爵は片眉を上げて驚きを示し、イリシャ様もまさか、といった表情だった。


「パルダス侯爵家での陰謀、その全てを知る次男とホリビス伯爵の次男が捕縛され、事が露見する事を恐れたリヴェラはフスカ男爵と共謀して再びシャハルザハルの目に依頼をします。次男を救出し、その際に次男がリグリエッタを救出したように見せかけ、ホリビス伯爵の次男は毒殺。国王様はリグリエッタに甘いのであることないこと吹き込んでこちらを悪者にして、さらにリグリエッタ救出の功により王家との繋がりをもとめリグリエッタと息子が結婚できるよう画策し、さらに金欲しさにホリビス伯爵と長男を亡き者にして五男をホリビス伯爵家に養子に出してホリビス伯爵家をも支配下におく、といった内容です。奴らは次男救出の際に戦争を継続して私腹を肥やすために私も狙ってきましたが全て返り討ちにし、捕縛して吐かせました」


 さらに実弟のホリビス伯爵までを亡き者にして乗っ取りを計画していた事を知った二人はもはや何を言っていいのかわからないといった表情だった。


「侯爵様、現在逃亡を図っているリヴェラと長男は近衛騎士団が捕縛している頃合いでしょう。今回の事件には多くの貴族が関与しました。パルダス侯爵家派閥の家のいくつかは潰れるでしょう。宰相はこれを機に不正貴族を大量粛清するおつもりです。侯爵様はまずお身体を治していただきたく、これからちゃんとした医者を呼んで参ります。ただ、しばらくはパルダス侯爵家は我々の監視下におかれることをご承知願います」


 俺の長い説明に、イリシャ様は言葉もなく、パルダス侯爵はただ頷くだけだった。



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