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単なる偶然じゃないでしょうか


 俺達が近衛と合流してからほどなく第三騎士団が到着したことが南門の衛兵から連絡が来たので、俺とシャロとシュライザーは一度南門に向かい、彼らと合流した。


「ご苦労、ランデル」


「お疲れ様です、団長。上手く行きましたか?」


「ひとまずな。ユールディンへは警告は出来た。後は向こうが上手く処理してくれると信じるしかない。ホリビス伯爵は殺られる前に先にこちらで確保した。奴自身も姉を疑っていたらしい」


「それについてはアベイルから報告を受けています。ワイバーンライダーを落としたとか」


「ミリカが魔改造した魔道具のおかげだな」


「かなりの威力だったようで」


「あれはヤバい。しばらくは存在を表に出さない方が良いな」


「そこまでですか」


「東西北門は封鎖したか?」


「それぞれグラウを西門、アリュードを北門、マリーを東門に向かわせました」


「よし、今回はかなりの大掃除になる。俺はこのままシュライザー達を率いて近衛とパルダス侯爵邸を制圧してくるので引き続き南門は任せる」


「団長自ら行かれるのですか?」


「パルダス侯爵邸の門に、俺のファンが出待ちしているんでな」


「例のオーガ、ですか?」


「ああ、近衛に被害が出る前に、処理しないといかん」


「人気者はつらいですな」


「まったくだ」


「シュライザー以外には誰を?」


「フリック、リッツ、アベイルを連れていく」


「分かりました。お気をつけて」


「ああ」


 シュライザーは一足早くフリック達を呼びに行き、シャロはミリカのところに行った。


 魔道具の時限玉と、偽尻尾を追加で作ってもらうよう伝言をお願いしたからな。


 第三騎士団の鎧に着替えて待つこと数分、シャロがミリカを伴って、シュライザーがフリック達とメラニアを伴って戻ってきた。


「デュー兄、無事で何よりなんよ。うちの魔道具、役にたったようで何よりなんよ」


「あれは凄い。私の奥の手が増えた」


「シャロの言う通り、あれはヤバい。ヤバ過ぎてしばらくは口外しない方がいいくらいにな」


「うちは実際に射ったわけじゃないから威力の確認はしてなかったんだけど、まさかワイバーンを粉砕するほどとは思ってなかったんよ」


「あの威力で数を揃えられたら、戦い方が変わるくらいヤバい」


「うーん、でも多分威力に関してはミニチュアレインボードラゴンの魔石だからって部分が大きいんよ。魔力が注入できる量によって威力が上がるんよ」


「他の魔石での代替えは?」


「極小魔石となるとほかは虫系の魔物か魚系の魔物だけど虫系は魔力の保有量が、魚系はサイズか、それぞれ課題なんよ。虫系魔石はミニチュアレインボードラゴンの十分の一以下の保有量しかなくて、魚系は魔石のサイズが均一じゃないし、ミニチュアレインボードラゴンほどではないにしろ確保が難しいんよ」


「なるほど。つまり量産は難しいと」


 確かに魚系の魔物は成長具合によって魔石サイズが違ったし、魔石の質が良いものほど山奥の秘境とかに生息してる希少種とか捕獲難易度が上がるしな。


「そうなんよ。うちとしてはオーダーメイドの一品物として作ったんよ。魔道具自体もかなり改造したからそっちの意味でも難しいんよ」


「わかった。ただやはり当分は口外しないように。玉も虫系と魚系の試作品を作ってみてくれ」


「了解なんよ」


「あと、偽尻尾、よろしく」


「一つでは足りなかったん?」


「今回世話になったモフラー仲間にも贈りたい」


「なら材料はあるからもう一つ作っておくんよ」


「頼む」


 さて、さっきからお聞きしたい事がありますって顔をしているメラニアさんがいるが、彼女に何か吹き込んだのは誰だ?


 アベイルがさっと顔を背けた。


 お前か、アベイル。


「団長、お聞きしたい事があるのですが?」


「聞きたい事?なんだろうな?」


 見当もつかないな~って顔をしてみるが、メラニアは何か確信をもってるみたいだな。


「アベイルさんから聞きました。移動中に不思議な事が起こったんだって」


「不思議な事?どんなだ?」


「アベイルさんは、夜間の移動中に気を付けなきゃならないのは急に月明かりが遮られて道の先が見えにくくなる事、だから先んじて雲の動きを予測してスピードを調整しなければならない。なのに昨晩は晴れてはいたけど空にはそれなりに雲があって気を付けなければと思っていたら、不思議な事に雲が月にかかりそうになると不自然なくらい流れが変わって、雲が月を避けていったっておっしゃってました。団長、何か心当たりがあるのでは?」


「単なる偶然じゃないでしょうか」


「団長、雲が月を避ける、というお話は、お伽噺にも神話にも使徒逸話集にもあります。そのいずれのお話にも、月の女神ルナリア様が出てきます。ルナリア様のお力で、暗い夜道も月明かりのおかげで無事目的地にたどり着く事が出来た、と。ルナリア様はカウリエン様の姉神でしたね。団長、正直にお答えください。ルナリア様から御助力を賜れたのですか?!」


 メラニアさん、勢いが怖いです。


「いや、どうだろうなー。カウリエン様からも何も聞かされてないし、ルナリア様の使徒じゃないから御神託も受けれないし、単なる偶然じゃないでしょうか」


「なら、先ほどミリカさんに話していたお世話になったモフラー仲間とはどなたの事です?」


「それはあれだ、冒険者時代に知り合った人だ。今回の作戦は冒険者ギルドが肝だったからな」


 嘘は言っていないぞ、嘘は。


「そうですか。ちなみにルナリア様は動物好きとしても知られていますよね。神話では小月に兎、羊、フクロウを飼っていると伝えられています。しかし兎や羊は分かるとして何故フクロウなのでしょうか。やはり夜を見張る鳥としての立ち位置何ですか」


「いや、フクロウは見た目に反してフワモフなんだ。とくに首がな。ルナリア様はそのフワモフな首がお気に入りだから飼っていると言ってたぞ。俺もフクロウの首がフワモフとは知らなかったから驚いたな」


「そうですか。フクロウがフワモフだから。その話誰に聞いたんです?」


「誰にってそりゃ本人か、ら……」


「やっぱりルナリア様ともお話した事があるんですね団長!」


「いや~その~はっはっはっは」


「やっぱりルナリア様が御助力されたんですよね!団長、出発するとき神様関係はもうないよって言いましたよね!ね!ね!」


「いや、あれだ、俺だってまさかお助けいただけたなんて予想してなかったからさ。嘘をついたつもりはなかったんだよ。それに神様関係があると分かっててもあの時はやっぱり連れていけなかったししょうがないじゃん?」


「神官として、神様の奇蹟をこの目で見たかったのに、酷いです団長!」


「悪かったよ。神殿で何か使徒っぽいことするからそれで勘弁してくれ」


「絶対ですよ!約束しましたからね!」


「はい」


 どのみちアレッサの秤は使う事が決定的だし、まあいいんだけど。


「さて、それじゃあパルダス侯爵邸に向かうか」


「オーガを待たせてますしね」 


「なんならお前に譲ってもええんやでシュライザー」


「遠慮しときます。自分は団長の戦いを観戦したいので」


「遠慮しなくていいのに。よし、ではパルダス侯爵邸に向かうぞ。ついてこい!」


 俺達は最後のけりをつけるべく、パルダス侯爵邸へと馬を走らせたのだった。




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