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大丈夫かラグラント王国

寝過ごしました…。


修正しました。


「デューク団長」→「コスタル団長」


 あの重い巨体を引きずって近衛騎士団の詰所まで到着した俺達は、夜番の騎士達に熊豚親子を牢にぶちこんでもらい、緊急事態なのでフォーゲル団長をここに呼び出してもらうよう頼んだ。


 二人いた内の若い方がフォーゲル邸へと走っていき、見覚えのある年輩の騎士は従者から暖かい飲み物をうけとり、まずは一息つきましょうと俺達三人にふるまった。


 礼を言って湯気のたったお茶をチビチビ飲みつつ、王都に帰っておられたとは知りませんでしたなと世間話をしながら待つこと三十分、フォーゲル近衛騎士団長とマクネス近衛副騎士団長が詰所へと到着した。


「久しぶりだな、コスタル団長」


「お久しぶりです、コスタル団長」


「お二人ともお久しぶりです」


 フォーゲル団長は口ひげを生やした四十代半ばの大猿(ゴリラ)系獣人で、マクネス副団長は二十代後半の牛系獣人だ。


 背が高くマッチョな二人が並んでいると圧が凄いと言うか、何か自分はヒョロさが目立つと言うか威厳が足りないと言うか。


「まずは和睦の成功、見事だった!」


「長期化の様相を呈していただけに、今回の和睦は両国にとってこれ以上ない朗報でした」


「ありがとうございます。全てはカウリエン様のおかげです」


「それはもちろん豊穣の女神様の慈愛の御心があってこそだとは思うが、何故かな、我輩は貴殿でなければ今回の和睦にカウリエン様が仲裁に入っていただけなかったのではないかと思うのだ」


「そこは私も同意いたします」


「はっはっは、私はただ戦の前にカウリエン様のお社に先勝祈願のお供えをしただけですよ」


 この二人、妙に勘が鋭いので下手に誤魔化すよりは微妙に真実を混ぜたりして返答をしないと色々怪しまれそうだ。


「はっはっは、貴殿がそう言うならそうなのだろうな。まあ、目下の問題は国内の不埒な輩どもか。和睦以降何があったかざっと説明してくれないか」


「わかりました。少々話が長くなるうえ、予想以上に国内が乱れていたと言わざるを得ませんが」


 俺の説明が進むにつれて、冷静だった二人の顔が、フォーゲル団長は子供が見たら泣きそうな憤怒の表情に、マクネス副団長は子供が見たら逃げ出しそうな人形のような無表情に、それぞれ炎と氷みたいな対象的な顔で怒りを露にした。


「パルダス侯爵夫人とフスカ男爵の不義密通がここまで国を腐らせていたとは。さらにホリビス伯爵。あやつはやはりもっと早く追い詰めるべきだったわ!」


「しかしリグリエッタ姫のあの大事件の数々が、実は裏で操作されていた可能性もあるとは考えもしませんでした」


「そうだ、リグリエッタ姫だ。まさか、わざと戦争を引き起こしていたとは!これはいくら国王様が庇おうとも許されるものではない!」


「しかし、コスタル団長がいくら正しかろうとリグリエッタ姫に関しては本人が否定したら国王様は無条件に信じるでしょう。さらに、戦時特例をわざと説明しなかった部分も責められるかもしれません」


 マクネス副団長の指摘通り、説明しなかった部分は必ず突っ込まれるだろうが、そこはリンクス公爵ともども分かっていてやったし、後悔はない。


「リグリエッタ姫に関してはアレッサの秤を使います。使徒に関しては目処がたっていますが詮索ご無用でお願いします。戦時特例は確かに責められるかもしれませんが、これを国王様に説明していたら確実にリグリエッタ姫に伝わっていました。そうなっては戦争が止められなかったと確信しています」


「覚悟の上か。リグリエッタ姫が関わっては国王様に冷静な判断は求められない。神殿という第三者が入る事により公正な裁きが下るよう動いた貴殿は賢明だ。神の代弁者たる神殿の裁きは例え国王様だとて覆せぬ。ならば我々は貴殿の処遇が正しく行われるようそちらに全力を注がねば」


「団長の言う通りですね。神殿が関わらない部分で間違いなく国王様はコスタル団長に責任を追及するでしょう。今回の最大の功労者たるコスタル団長に不当な裁きが下らぬよう今度は我々が動かなければ」


 熱くかたる近衛の二人に、内心俺が騎士団長辞めるくらいでとどめてくれればええんやでと思いながら、まずは現状をどうにかせねばと話を変える。


「お二方からそう言っていただけただけでも私は満足ですよ。それに、まずは目の前の障害を片付けてからでないと。パルダス侯爵家とその派閥を一網打尽にしてやらねば」


「うむ、貴殿の言う通りだな。この際国内の全ての膿を出して浄化してやらねば」


「コスタル団長がお持ちになられた不正貴族のリスト、数が多すぎて一度に全てを捕らえるには流石に人手が足りませんが、まずはパルダス侯爵家といくつかの高位貴族を抑えれば他は後からついてきますでしょう」


 上から順に芋づる式に捕まえていくしかないくらい不正を働いた貴族は多い。シャレにならないくらい。大丈夫かラグラント王国。


「ただ、ドラゴンベルに関しては手引きした輩を早急にしらべあげねば。持ち出したのがドラゴンベルだけとは限らないからな」


「今すぐ王城に人をやって調べさせましょう。宰相様に連絡し、信頼できる手の者だけでやらせるしかありますまい」


「そうだな。ホック、今すぐ宰相の元に行きドラゴンベル盗難と宝物庫侵入を手引きした者がいる事を知らせ、他に何か盗まれていないかの確認を行うよう伝えてくるのだ」


 俺達にお茶を振る舞ってくれた年輩の騎士ホックは、お任せを、と返答するや、その見た目に反した軽やかさでかけていった。


「さて、こちらは秘密裏にパルダス侯爵家を包囲して、第一夫人とその馬鹿息子を捕縛せねばな」


「現当主のマシュー様は不憫ですが」


「夫人を好き放題にさせて、あまつさえ実父暗殺の幇助の疑いがかかった時には庇い立てたのだ。あの時しっかり調査していれば、今日の事件は起きなかっただろう。同情には値しない」


「厳しいですが、団長のおっしゃる通りですね」


「コスタル団長、第三騎士団はいつ頃到着する予定だ?」


「おそらく夜明け前くらいには」


「あと一時間強か。マクネス、今すぐ団員全員を叩き起こしてここに集合させろ」


「ハッ!了解いたしました!」


「コスタル団長は第三騎士団と合流するか?」


「いえ、まずは我々三人でパルダス侯爵家周辺を探索してきます。ホリビス伯爵同様に地下に抜け道など掘られていてはかないませんからね」


「似た者姉弟のようだから、あり得るな。では先行しての探索、お願いする」


「了解です。また現地にて落ち合いましよう」

 

 一旦近衛と別れると、俺達はパルダス侯爵家へと向かった。

  

 


「いやあ、やはりあのお二人が並ぶと、こう、迫力がありますな」


「でかいし、分厚いから、圧が凄いよな」


「あの二人に尋問されたらすぐに吐くでしょうね」


「だろうな。俺、説明中に表情が険しくなっていく二人を見てこっわぁ!って思ったもん」


「いやー、パルダス侯爵家派閥の奴らの尋問全部お任せをしたい所ですね」


「違いない」


 シュライザーと軽口をたたきながら現場に向かうと、パルダス侯爵家の館はものものしい雰囲気で、簡単には侵入させない空気がバチバチ流れていたのだたった。



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