うっわぁ~、えげつない威力だな
ついに2万PV突破しました!
読んでいただいた方はもちろん評価やブックマークまでしていただいた方、本当にありがとうございます!
まだまだ明るいちょい欠けな月明かりの下、アベイルを先頭に俺達は馬を飛ばしていた。
雲はそれなりに出てはいるのだが、不自然なほど月明かりが遮られる事もなく一定の速度を保ちながら走っていられる。
月の女神ルナリア様に、ありがとうございますと心の中でお礼をする。
ちなみにルナリア様はカウリエン様の姉君で、一度だけお茶会で出会った事があるが、腰まである銀髪が神秘的な、とても物静かな落ち着いた物腰の女神様、というのが第一印象だった。
が、彼女が実は俺と同じモフラーである事が判明した後は意気投合してモフモフ談義に花が咲いた。カウリエン様に嫉妬されるほどに。
神話の中にも大月には神殿が、小月にはウサギや羊、フクロウを住まわせているってお話あったもんなぁ。フクロウが実は首の部分がフワモフだと貴重な情報を教えていただいたなぁ。
その後は俺が騎士になって、忙しくてカウリエン様に会いに行けなくなっていたからお会いする機会がなかった。
もしかしたらカウリエン様がルナリア様に俺達を照らしてくれるようお願いしてくれたのかもしれない。
カウリエン様にはブラシとお菓子をお土産にする予定だが、ルナリア様用にこの偽尻尾をミリカにお願いしてもう一つ作ってもらおう。
あ、神様関係は今回はないよとメラニアに言ったのに嘘をついた形になってしまった。
まあ、あれだ、神様関係があってもメラニアは連れてこられなかったから、しょうがない。
「団長、間もなく石畳です」
アベイルの報告に意識を月から街道へと戻す。
石畳の街道は王都直轄地の証明で、道程の半分まで来た、という事になる。
その石畳との境は少し開けた場所になっていて、街道の分岐点となっている。
直進すれば王都ラグランティアの正門に、右に行けば東門に、左に行けば西門にそれぞれ続いている。
ここでアベイルは待機、ミッドと護衛役のリッツは西門に、俺達は東門に、それぞれ別れる予定だ。
「もし仮に待ち伏せがあるとしたら、分岐点だな」
「いますかね?」
「今のところ匂いは感じませんが」
「わからん。だが、いると思って損はない」
確かに、と頷くシュライザーとフリッツ。
「間もなく分岐点が見えてきます」
アベイルが小柄な体を立ち乗りでにゅーっと伸ばしながら先を見ている。
小さな丘を走り抜けると、その先には開けた空間に道案内の看板と、椅子代わりの丸太に馬用の中をくりぬかれた水桶代わりの丸太が置かれているのが見えたが、人影はなかった。
「誰もいませんね」
「いないならいないで良かったさ」
拍子抜けしたようなアベイルに続いて俺達は広場に馬を乗り入れた。
俺達は馬を休ませるために一度降りて水を飲ませてやる。
俺達も丸太や地面に座り、しばし休息をとる。
「よし、ではここでアベイルは待機だ」
「了解です。皆さんお気をつけて」
「ミッド、やれるな?」
「大丈夫だと思うぜ。基本俺は依頼主とは接触を最低限にしているってのは最初の時点で説明してあっから、報酬貰って即いなくなっても気にはしないだろうさ」
「リッツも馬を置いてミッドと共に西門を目指せ。見つかるなよ」
「了解です。気をつけます」
リッツは馬に固定された背嚢の中に身を隠す予定だ。
リッツは小柄な体を生かして色んな場所に潜入した経験があるので、大丈夫だとは思うが油断はよくない。
「リッツ、万が一何かあったらミッドと一緒にとにかく逃げる事だけ考えろ。最悪事が露見しても構わん」
「わかりました」
「フリッツ、シュライザー、手筈通り東門を越えたら即座に冒険者ギルドに向かう。説明した通り冒険者の中にもパルダス侯爵家一派に協力している奴はいる可能性が高い。シュライザーが裏口を、フリッツが表を固めて誰も外に出さないようにする、ここまではいいな?」
「「はい」」
「冒険者は騎士とは違って手管が多い。剣で圧倒できたからと油断するな。奥の手を持つのが冒険者だ」
「なるほど。ちなみに冒険者だった団長も奥の手をお持ちなんですか?」
「あるが、見せる事は多分ないだろうな」
「残念ですね」
「コスタル団長の奥の手ですか、気になります」
「そんな期待されるほどのもんじゃないぞフリッツ」
「絶対期待を上回るものだと思います」
何故か見てもいないに断言するフリッツ。さらにシャロにも質問する。
「シャロ姉さんにも奥の手はあるんですか?」
「もちろんです。ただ私はシーフだったのであまり派手なものではありません。デューク様の奥の手は凄まじい威力で、フリッツ様の期待を遥かに上回るものだと断言できます」
「やっぱり!見てみたいなぁ~」
興味津々のフリッツに、何故か自慢気なシャロ。
「垂れ耳のあんた、やめた方がいいぞ。この人は絶対あんたらが思っている以上に突き抜けてる。周囲にも大規模な被害がでるような技に違いねぇ」
何故か会ったばかりのミッドにまで散々な言われようだ。
まぁ、被害が出るから迂闊に出せないのは合っているが。
「やっぱりそうだよねぇ。団長が本気出したら周りがタダで済まないと思うんだ」
「そうそう。剣の一振りで山を砕くとか」
アベイルとリッツも好き勝手言っている。特にリッツ、俺を何だと思っているんだ。
「山は流石に無理ですが丘くらいなら」
「はいはい無駄口はそのくらいにしてそろそろ出発するぞ」
危ない発言をしそうになったシャロを遮って強引に話を変える。
シュライザーが地面から立ち上がって砂を払った。
「そうですね。馬達も十分休めたようですし」
「では行きましょう皆さん。ここからは私が先頭になります。東門は私が開けるよう衛兵に指示しますので」
夜間なので当然門は閉まっているが、騎士である俺達は問題ないが、身ばれしないようフリッツに任せる。
西門はどうするか、とミッドに聞いたら手引きしてもらうよう話は通っているらしい。
「ミッド、西門は大丈夫なんだよな?」
「衛兵を買収してあるらしいからな。俺だけなら通るのに問題ない」
「こっちの立場としては問題だがな」
無事事が済んだらその衛兵は首だな。
アベイルはリッツから潜入時に邪魔になる装備を受け取っていた。
「リッツ、気を付けろよ」
「アベイルも当分は一人なんだから注意してろよ」
アベイル以外の全員が馬に乗り込み、さあ行くか、と思った瞬間、月が何かに遮られた。
「ん?」
ふ、と空を見上げたら、大きな生き物がこちらに急接近してくるのが見えた。
「全員馬から降りろッ!」
騎士とシャロは即座に反応したが、ミッドはえ?という顔して反応ができていなかった。
俺はミッドの足を掴んで地面に引きずり倒した。
「ギャーーース!」
甲高い鳴き声が聞こえたかと思うと、ミッドが乗っていた馬が空中にさらわれ、少し離れた場所で地面に落とされた。
あの高さでは馬はただじゃすまないな。
「ワイバーンだ!各自、尻尾の毒針と鉤爪に注意しろ!」
馬を放った後に直ぐ様上昇して、再びこちらに狙いをつけていらる。
「鞍がついてる。ワイバーンライダーか」
「兄さん」
シャロがミリカから貰った魔道具を取り出した。
「流石に距離がないか?」
「こっちに降りてきた瞬間を狙う」
「わかった。じゃあお兄ちゃんが動きを止めるからよろしく」
頷いたシャロが魔道具をいつでも射てるように構える。
「他の皆は俺から少し距離をとってなるべく低い姿勢で伏せていろ」
俺の指示に皆地面を転がるように距離をとった。
俺は右腕で剣を抜いて肩に担ぎ上げ、左手をワイバーンに向けて、来いよ、とばかりにちょいちょいと振ってみせた。
月を背にしたワイバーンライダーが、こちらを見て、ニィ、と笑ったような気がした。
上空から急降下したワイバーンが速度を上げながら突っ込んでくる。
俺は剣を肩に担ぎ上げたままワイバーンの動きをギリギリまで見極める。
ワイバーンライダーはあと二十メートルってとこで僅かに手綱を動かし、俺ではなくシャロに狙いをつけた。
「だと思った」
ワイバーンが地面ギリギリで上体を上げて鉤爪をシャロめがけて繰り出した瞬間、俺はシャロの前に入り込み、鉤爪を剣で弾き返し、尻尾の毒針がこちらに伸びてきた所を左手の脇に抱え込み受け止めた。
そのまま飛び去ろうとしたワイバーンは体勢を崩す。
その瞬間、シャロが魔道具を射ち、無防備だった腹に命中する。
ワイバーンの鱗を貫通するかが少し心配だったが、無事体内に刺さったのを見届けると抱え込んでいた尻尾をすぐさま剣で切り離した。
ワイバーンは体勢を崩したまま勢いを殺しきれずに低空をきりもみして飛んで行き、距離がそこそこあいたのを見計らったシャロがもう一度引き金をひいた。
瞬間、激しい爆発がワイバーンを包み込み、胴体を爆散させた。
「うっわぁ~、えげつない威力だな」
「これは凄い。ミリカに時限玉を量産してもらおう」
遠目からでもワイバーンが四散しているのがわかるくらいに原型を留めてない状態を見て、俺はその威力に若干引いて、シャロは満足げに魔道具に異常がないかチェックしていた。
「なんて魔道具を作ったんですか、ゴルズ男爵の孫娘さんは」
シュライザーも俺と同じ感想を抱いたようだった。
「え?デューク兄、ワイバーンの攻撃を跳ね返して受け止めた?え?尻尾切り落としてる?」
「だから言ったろ垂れ耳さんよ、突き抜けてるって」
「まぁ、団長だし」
フリッツはえ?え?と頬をつねってるし、ミッドはやっぱりなって顔で頷いてるし、リッツはすんなり受け止めていた。三者三様の反応に俺は何も言わずに尻尾を投げ捨てた。
「団長、騎手はまだ生きてるみたいです」
「マジか。墜落した時のために衝撃吸収の魔道具でも装備してやがったか」
アベイルが指差した先には地面を這っている騎手がかろうじて確認できた。
とりあえず俺とシャロとフリッツで騎手のところに向かい、残りの者達で逃げ散った馬を回収してきてもらう。
爆散現場はかなり広範囲に血肉が飛び散っており、辺り一面酷い事になっていた。
そんな中、血まみれのワイバーンライダーは右腕と左足を動かして這っていた。
左腕と右足は折れて動かないようだ。
「どこに行こうというのかな」
そんな血まみれライダーの折れた右足をふみつけて動きを止める。
「フギッ!グアアァ!」
痛みに思わず叫ぶ血まみれライダー。
「時間がないから単刀直入に聞くぞ。誰の差し金だ」
「足!足をどけてくれぇ!」
「依頼主を吐いてからな」
「イギャッ!痛え!痛えよ!」
「時間がないと言ったろ。さっさと答えろ」
「言う!言うから!」
「ならさっさと言え」
「ホ、ホリビス伯爵だぁ!」
「証拠は?」
「ジャケットの内ポケットに契約書が入ってる!マジだよぉ!」
俺はライダーを蹴飛ばして仰向けにすると、右腕を踏みつけながら懐をまさぐる。
「こいつか」
縁が血が染みている四つ折りの紙を開くと、ライダーが言った通りホリビス伯爵のサイン入りの契約書だった。
「何でホリビス伯爵はお前を雇って俺達を襲った?」
「あ、あんた達を最初から狙ってたわけじゃない!俺が依頼されたのはそこの監視役を拐って依頼主に届けるって内容だ!」
「ミッドを?何で誘拐なんだ?」
「は、伯爵はパルダス侯爵夫人とフスカ男爵の動きを怪しんでいた。ずっと動向を探っていて、監視役と始末屋を雇ったって情報を掴んだ、だから事情を知ってそうな監視役を拐って、吐かせるつもりだったんだ!」
流石に血の繋がったクズ姉弟。お互いをまったく信じてない。
まあそりゃ親父の次は自分が殺られるかもと考えるわな。
「ホリビス伯爵は今どこにいる?」
「王都の屋敷だ!監視役を誘拐したら隠してある荷馬車に積み込んで北門から入る予定だったんだよ!」
おお、手間が省けた。
地元にいたら逃亡の可能性もあるから第二騎士団にネットラン港を封鎖してもらおうと思っていたからな。
「伯爵はお前以外に誰か雇ったか?」
「護衛に何人か雇って屋敷を警備させてる、他はしらないぃ!」
「長男も屋敷にいるか?」
「いる、いるよ!」
「よくわかった。もうお前に用はない」
俺はライダーを殴って気絶させると、広場まで引きずっていき、木に縛り付けた。
「さて、邪魔が入ったが計画通り始めるぞ」




