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マジっすか。オワター。

寝落ちして遅れました…。



 気づいたらシャロの尻尾を机の下でモフっていた俺は、慌てて手を引っ込めた。


 ヤバい!誰かに見られたか?(シャロにアイコンタクト)


 大丈夫、見られても平気(シャロ、アイコンタクトで返答)


 シャロは平気でもお兄ちゃん平気ちゃう


 むー。


 むくれない!え、さっき皆が見ちゃいけないもの見た顔してたのってまさか!


 それは違うから大丈夫。


 本当か!え、じゃあさっきの目は何を見て。


 マリーには見られたけど。


 マジっすか。オワター。


 以上、アイコンタクトによる兄妹会話を切った俺は、何事もなかったフリしてお茶を飲んだ。


 あああぁぁぁ!マリーから視線を感じるぅぅぅぅぅ!


 ダメだ、マリーの方を怖くて見られない。


 ああもう大事な会議中だってのに内容はもう全く入ってこないぞこんな状況じゃ。


 どうすりゃいいんだこれもシャロの尻尾が極モフなのがいけないんだ。(いけなくない)


 あんな素晴らしいモフっぷりを手の届く範囲にもってこられたらそりゃ無意識にモフっちゃうのも無理ないよ俺は悪くない(俺が悪い)


 待てよ?俺が悪くないなら誰が悪いんだ?(だから俺が悪いって)


 俺がモフれない生活を強いられているのはリグリエッタが悪い。(絶対)


 そのリグリエッタを殴って捕縛して、後は王都に帰って騎士団長引退するだけだったのに、未だに妨害してくる馬鹿がいるのが悪い。(ガチで)


 そうだ俺はモフモフの前に全てを跪かせるモフラー代表として、邪魔する奴らはこの世から消し去って騎士団長を引退するとカウリエン様に誓ったんだ。(誓ってないよ~?)


 つまり、騎士団長を引退する俺が、大事な会議中にシャロの尻尾をモフってるところを部下に見られたところで今さら何を動揺する事があるのかと、そういう事なんだ。(開き直り)


 謎の無敵感を得た俺は、とりあえず流れをぶったぎって強引に話を自分にもってきて、なんからしい感じの推論を捲し立てていく。


「とにかく、シャハルザハルの目全体がこちらに来ていないのは間違いない。それに近衛がネットランでシャハルザハルを見つけられなかったのも無理はない。奴らは最初から王都にいたんだ。パルダス侯爵家にな。そして、怪しまれないよう長期にわたり現当主に毒を盛り続け、亡き者にしようと企んだ」


「しかし、無理に現当主を殺さなくても黙ってても家督は長男が継ぐことになっていたはずです。何故わざわざ怪しまれないように殺す必要が?」


 アリュードの意見は尤もだが、前提が違ったらどうよ?


「もし、長男が家督を継げない理由があったとしたら?その理由は次男も一緒だったら?もしその理由が存在して、現当主が気づく可能性が出てきたとしたら?殺そうとする動機にはなるだろう」


「長男が家督を継げない理由…。!現当主と、長男と次男は実の子供じゃない?!」


 俺の発言にアリュードはまさか、といった表情を浮かべた。


 まあ家督を継がせたくない理由としては一番だよね。


 わりと適当な推論だったが、案外正解かも。


「パルダス侯爵家は豹系獣人の家系です。長男も次男もやはり豹系獣人です。模様が独特なため、血が繋がっていないとは思えません」


 フリッツは資料を読みながら否定的な意見を述べる。


 いやいや、獣種が同じだからって必ずしも親子なわけじゃないだろう?


「いつ俺が血が繋がってないなんて言った。フリッツ、現当主には兄弟はいるか?」


「兄弟は……います。弟が男爵家に養子に出ていますね。あれ?まてよ、確か……」


 ペラペラと焦り顔で資料を捲るフリッツ。


「弟は、中央軍代表、フスカ男爵、です」


「なんじゃと?!」


 ゴルズのじいさんが驚きの声をあげる。


 うん、流石に俺も予想外だったわつーか適当な推論から思わぬ大当たりを引いてしまった気がする。


 まさか、中央軍引率役が黒幕の一人なんて。


「第一夫人は、フスカ男爵と浮気をしていた可能性が高い。実の弟であるフスカ男爵との子なら豹系獣人の子が生まれる可能性も高いし、模様だって似て当たり前だ。しかし、これに現当主が気づきそうになったか、気づく可能性が出てきた。もしくは弟が第一夫人と結託して邪魔な侯爵を殺して自分が裏からパルダス侯爵家を支配しようとしたとか」


「その推測が当たりなら、シャハルザハルの目は、すでに中央軍内に?」


「いるだろうな」

 

 なるほど、相手を外部からじゃなく内部から混乱に陥れてその隙に対象を消す、と。


 思わずうなっちゃうくらいに効率的だな。


「これはヤバいな。奴らがいつ行動に移るかわからんが、少なくとも王都に入る前には動くはず」


「どんな手できますかな」


「そりゃ、奴らお得意の毒だろう。今晩か明日の晩の飯に毒を混ぜ混んで、大混乱に陥れたらその隙に護送車の中とついでに俺を殺るつもりだろう」


「中央軍だけでなく辺境伯軍や第三騎士団の飯にも忍び込んで毒を入れると?」


「いやいや、飯とは言ったがわざわざ調理中にこっそり隠し味的に入れるとは限らない。ワインの樽の中に仕組んで、陣中見舞いだのなんだの理由をつけてこちらに贈ってくる可能性もある」


 昨日散々飲んで二日酔いだらけだから俺なら明日の晩にするけど。


「そりゃ、間違いなく飲んじまうのう」


 ドワーフに、効果覿面だ!


「どうしましょう、中央軍に今からガサ入れしますか?」

 

 フリッツは青い顔して焦っているが、それはうまくない。


「いや、どいつがシャハルザハルの目かわからない以上迂闊に動けば相手を追い詰めて午前みたいな自爆攻撃されるかもしれない」


「内部でやられれば被害は甚大でしょうな」


「推測だが、シャハルザハルの目はフスカ男爵の近くにいるはず。依頼人の護衛も契約に含まれているはずだし、もし普通の兵士に化けて潜入してたら和睦がなければ兵士として戦わなければならなかったわけだろ、流石にそんな事はしないはずだからな。ゴルズのじいさん、フスカ男爵は従兵を何人引き連れてました?」


「四人、じゃな。顔ぶれはちと思い出せんが」


「おそらくそいつらだが確証はない。他にもいる可能性もある。しょうがない、一度フスカ男爵を呼び出すか」


 俺は立ち上がって皆に指示を出した。


「フリッツ、近衛として両軍の引率役に直接会って話がしたかった体で動け。俺も一緒に行く」


「わかりました」


「ランデル、シュライザーとフリックをお供に着いてこい。ホーキンスに護送車の上から鷹の目で俺達を追跡しとけとも伝えといてくれ。用意が出来次第行くぞ」


「了解です」


「ゴルズのじいさんはひとまず辺境伯軍に戻って食材のチェックを。数が増えてたり中央軍から贈り物があった場合は手をつけずにこちらに報告を」


「わかったわい」


「よし、他の者は持ち場に戻れ。怪しい奴を見たらとりあえず報告しろよ」


 

 横にいるマリーの私も同行したいです、という視線はあえて気づかないフリをして、俺はシャロを伴ってその場から退場した。



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