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これはちょいと、ムカつくな

やったー!初評価ポイントいただきました!

評価していただいた方、ありがとうございました。


 検死や兵士達の水浴び等で大分長めの休憩をとっていた俺達は、とりあえず先に進むことにした。


 念のためクラッヘン川にかかる橋にも細工がされていないか充分に調査し、安全が確認されてから渡り始める。


 この先は今まで以上に注意して進まねばならない。


 国内屈指の大貴族がこちらを狙っていると分かった以上、襲撃があれで終りになったとは考えにくい。


 今度はシャハルザハルの目そのものを雇って襲ってくるかもしれない。


 いや、もう雇っている可能性の方が高い。


 パルダス侯爵家が関わっている以上、中央軍内にも手が伸びていると思った方が良い。


 パルダス侯爵家と言えば軍政関連に強い文官で、中央軍に対しても一定の発言権を持っていた。


 情報がないからなんとも判断がつかないが、侯爵家の全員が第一夫人側についているとは考えづらいとしても中央軍内に監視役は絶対にいると思った方がいい。


 今は襲撃に対応するため第三騎士団の後ろは当初予定していた中央軍ではなくゴルズのじいさんが選抜した足の早い辺境伯軍の兵士達がそのまま(投げた装備を他の兵士から譲り受けて)配置されているが、王都にたどり着くまではこのままで進もう。

 

 辺境伯軍の方が土地勘のある兵士が多いとか実際に暗殺者を撃退したしとかその辺を推していく感じで。


 目下の問題は手持ちの矢と投げナイフなどの飛び道具が足りなくなってきている事だ。

 

 矢は両軍からわけてもらえば済むが、投げナイフは騎士団の正規装備なので兵士達は持っていないから代わりがない。


 普通のナイフでも投げれはするが、命中率は下がるし、投げナイフを収納している腰の小さなカバンからはみ出てしまって落としてしまったりとトラブルが多い。


 ちなみに投げナイフを正規採用したのは前団長時代で、俺とランデルが弓を扱えない騎士にも飛び道具は持たせた方が良いと進言したからだった。


 街中でも鎧姿で巡回する騎士は、犯罪者を馬で追えない状況に陥った時、追い付けずに取り逃がす確率が高かった。


 そこで俺とランデルは投げナイフがあればこういった状況の時に取り逃がす確率がぐんと下がると説得し、実際に自分達で使用していた俺とランデルは取り逃がす事がほとんどなかった。


 俺とランデルが教官となって指導した結果、第三騎士団は皆投げナイフはかなりの命中率を誇るようになった。


 リグリエッタには大不評だったが。


 次の襲撃者がシャハルザハルの目と決まったわけでも、そいつらだけとも限らないが、やれることはやっておいた方が良いと投げナイフの件をゴルズのじいさんに相談したら、まかしとけと胸を叩かれたのでお願いする事にした。


「やっと行程の半分を越えましたな」


 全員が橋を渡り終えたとの報告を聞いて、ランデルはやれやれといった表情を浮かべた。


「俺も同じ気持ちだ、ランデル。まだ半分しか進んでいない、だろ?何事もなければ今頃はすでに王都に着いていつもおかしくなかったのにな」


「長い事戦いの場に身を置いてきましたが、今回ほど短期間に色々起こったのは初めてですな」


 流石に百戦錬磨のランデルと言えど、今回は特別なようだ。 


「次は何が起こるやら。とにかく少しはこっちに明るい話題を提供してくれるネタが来ないかな」


「同感ですな」


 団長副団長そろってため息をついていると、最前列にいるはずのフリックがこちらに駆けてきた。


「団長、マリーが戻ってきました!近衛の小隊も一緒です!」


「お、やっと明るい話題が」


「口に出してみるものですな」




「団長、只今戻りました」


「ご苦労。リンクス公爵や宰相はなんと?」


「ユールディンからの使者が到着次第、こちらからも正式な和睦の使節団を派遣するとの事です」


「フォーゲル団長は?」


「東に不穏な動きあり、注意されたし、と。詳しくはフリッツ殿から」


「お久しぶりです。コスタル団長」


 マリーの後ろから現れたフリックの実兄フリッツは、小さい頃から変わらず兄弟よく似た容姿だった。

 

 鎧を交換すれば何人かは間違えるだろーな。

 

「久しぶりだな、フリッツ。先日は『もぐら』役、ご苦労だった。おかげで首尾よく立ち回れた」


「お役にたてて何よりです。フォーゲル団長から手紙を預かっております」


「シャハルザハルの目とホリビス伯爵の件か?」


「!?もうご存知でしたか。流石ですね」


「いや、こっちも色々あったんだよ。まだ早いが全体を小休止してちょっと打ち合わせ会議するか。ランデル、ゴルズのじいさんを呼んできてくれ」



「さて、それではお互いの情報を交換しよう。先にフリッツ、頼む」


「はい。まずは皆様、和睦の成功、おめでとうございます。女神カウリエン様の御心に感謝を。さて、国外の憂いを解消したと思いきやここにきて国内の動きが怪しくなっています。その原因は、リグリエッタ姫を団長とした紅の騎士団、その団員達の実家にあります。我々近衛騎士団は、彼らを秘密裏に調査しました」


 すでに実害を被りまくってる組が深くため息をつく。


「紅の騎士団、その団員ほぼ全ての実家が大なり小なり協力をして、ホリビス伯爵の元に資金を集めていた事が判明しました」


 念のためにフォーゲル団長に頼んでおいた紅の騎士団の団員の実家の監視が、ここにきて実を結んだか。


 フォーゲル団長も宰相も、これを機に国内のゴミを一掃するつもりなんだろう。


「集めた資金を使い、奴らは最悪の選択をしました。北の大陸の、こちらまでその悪名を轟かせているシャハルザハルの目、という暗殺者集団を雇ったとの情報が入りました」


 やっぱりなー。むしろなんで最初から落伍者じゃなくてそっちをぶつけに来なかったのかが不思議なくらいだ。


 いや、不思議じゃないな、ホリビス伯爵とその裏にいるパルダス侯爵家だけでなく他の家も巻き込んで金を集めたって事はそれだけシャハルザハルの目が高額だったってこった。


 そこで、多分割引券代わりに俺達に落伍者どもを始末させたんだろう。


 落伍者どもを俺達が始末できたら、代わりにお代金をちょいとお安くしていただけませんかって具合に。


 シャハルザハルの目としても、落伍者どもが俺達をやったならやったでその後に無傷ではすまないだろう相手を始末すればいいし、やられたならやられたでいずれ始末する予定だったのが外部委託で早まっただけ、しかも依頼料は多少安くなろうがこちらは移動費のみ、やったー!儲け!って感じだろう。


 これはちょいと、ムカつくな。


「…………クックック」


 気づくとシャロが俺のお茶のお代わりを注いでいて、何故か皆の目がこちらに向いていた。


 何人かは顔を青くしてるし。何か見ちゃいけないものを見た的な。


 横に座っているマリーだけは何故かシャロの事を羨ましそうに見てるんだが。


 なんで?メイド服にはまったん?


「?フリッツ、続けてくれ」


「は、はい!調査を続ける内にホリビス伯爵の後ろにパルダス侯爵家が暗躍している事が判明しましたが、現当主様は病により病室から出られない状況が続いており、今回の策略には関与されていないと判断し、実行犯は第一夫人と次期当主の長男である断定しました」


 ここまではこっちが予想した通りだ。


 問題は、シャハルザハルの目といつ契約して、今どこにいるかってことだ。


「我々はシャハルザハルの目と契約したと知ってからネットラン周辺を徹底的に見張りましたが、奴らを発見することは出来ませんでした。つまり、もう国内のどっかに潜伏してる、と考えられます」


「まあ、予想はしていたけど」


「落伍者どもを確実に始末するならばどこかで我々を監視せねばならないですからな」


「しかし、どのタイミングで雇ったのでしょう?和睦成立は私より早くパムルゲンを出て、夜通し走ったとしても誤差は二日ないくらいです。王都ではなく東部だとすると余計に日数がかかりますし、シャハルザハルの目は普段は北の大陸にいるはず。紅の騎士団の失敗を見越して呼び寄せていたにしても早すぎる気が」


「シャハルザハルの目の最初の獲物は、紅の騎士団じゃなかったんだよ。パルダス現侯爵だ。これは第一夫人が予想以上に怪しくなってきたなぁ」


 第一夫人は、シャハルザハルの目をすでに雇っていたんだろう、パルダス侯爵が何らかの事実に気づいたか、気づきかけたからか。


 だが、おそらく紅の騎士団が捕縛された事に関しては計算外だったのだろう。


 だから慌てて高い追加料金を払ってこちらに差し向けたに違いない。


 そうなると、シャハルザハルの目は予想以上に少人数って可能性が高い。


 少人数を最も効果的に使うなら、相手を混乱させてその隙にってのが常套手段だ。


 何だかまた先が読めなくなってきたなぁと、ため息を吐きながらシャロの尻尾をモフるのだった。


 あれ?



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