新入生 【月夜譚No.59】
布団を鼻先まで引き上げると、少しだけ安心した。細く息を吐き出して、徐々に身体の強張りを弛緩させていく。
今日は一日慣れないことばかりで、肉体的にも精神的にも疲れた。加えて帰る場所も今日入寮したばかりの部屋で、どこか落ち着かない。ルームメイトは既に寝てしまったようで、聞こえてくるのは寝息ばかり。こちらはいつもより硬い枕に中々寝入れないというのに、羨ましいことだ。
暗闇に目を凝らすと、白い天井が月光を照り返してぼんやりと浮き上がる。脳内で弱音を吐きそうになって、慌てて首を振った。この学校に入学することも、家を出ることも、決めたのは自分だ。こんなことでへこたれていては、啖呵を切って出てきたことを両親に嗤われる。
勉強はきっと難しい。友人を作ることも、そう簡単なことではないかもしれない。けれど、自分は自分の為にここにやってきたのだ。
掛布団の端を力一杯握り込むと、ほんの少し胸が空いた。