2/2
01
「桜木さん」
電車の中で携帯を触っていると後ろから聞き覚えのある声に呼ばれ、振り返った
「あれ、真田さん?」
そこにいたのは、同じ職場で働く事務課の女性だった
部署が違う事もあるけれど、あまり話した事もなく、正直自分の名前を知っていた事に驚いた
「おはようございます。桜木さんも、この電車使ってたんですね」
「うん、てかよく知ってたね、俺の名前」
おはようと返して、苦笑いでそう答えると彼女も少し微笑んでこう言った
「私、名前だけは覚えるの得意なんです」
僕の中で僅かに抱いていた期待が一気に崩れる音がした