自分色に
「シャドウドラゴンとはまた違う感じだね」
視目は目の前の生物を見ながら言う。
「シャドウドラゴンでいいでしょ、名前なんて今考えてる余裕ないですよ」
ファデルはまずいと感じていた、この化け物をどうやって相手するかを必死で考える。
ふと、シャドウドラゴンが姿を消した。
「なっ!」
ファデルは慌てて上を見上げたが空には何もいなかった。
「見えない…」
視目も空を見たがやはり何もいない。
「いなくなった…、でもどうして」
「おそらく残したかったんだろう」
残す、つまり誰かの意志がでそうしたのだと視目は考えているのだ。
「とにかく一旦ホテルに戻ろう」
ホテルに戻ってすぐに視目は報告をファデルに任せて借りた別の部屋に行った。残されたファデルは盗聴されてないか確認した後カレッジに報告した。
「シャドウワイバーンか、まあどう考えても自然発生したやつじゃないだろうね」
ラダクトには今は魔物と呼ばれる存在はいない、ましてやワイバーンなど出現するはずがないのだ。
「とりあえずこの件は人為的に起きたものとして処理する、君達は引き続き調査してくれ」
カレッジが淡々と指示し、ファデルがうなずいた。
報告が終わって少しすると視目が戻ってきた。
「うーん、ないなぁ」
「どうしたんですか?視目さん」
「盗聴だよ、盗聴」
「盗聴?でも部屋に入った時調べたけど特に盗聴器のようなものは見つかりませんでしたよ」
「そこが不思議なんだよ、もし盗聴器がないんだったらどうしてシャドウワイバーンが襲ってきたのか説明がつかない」
「単純にあの機械が破壊されたからでは?」
「それにしては早すぎるんだよ、いくら空を飛んでくるとはいってもあんなに早いのはおかしい」
ファデルはシャドウワイバーンが来た時のことを思い出す、
「確かにあれは早いですね」
「しかし盗聴器が見つからない」
「何かの能力かもしれないですね」
「能力か…」
視目はそのまま考え込んでしまった。
チリン
「ん?停電?」
ファデルは視界が真っ暗になった、しかし視目の声が聞こえない。
チリン、チリン
「うるさいなぁ」
頭の中に響く警告音を止めようとするが止まらない、
「どうかしたのか?」
「視目さんよくわかりませんがとにかく何か起きているよう、…な」
それは視目の声ではなかった。ファデルは辺りを見渡すがしかし何も見えない、
「ここだ」
ファデルの前に男が立っていた。
「誰だ」
ファデルはいいようのない不気味な雰囲気を感じていた、
何か変だ、何がおかしい?そうだこんなにも真っ暗なのにあの男の姿ははっきり見える。
「私は【黒服】君たちの敵さ」
【黒服】と名乗った男は文字通り全身黒服に身を包んみサングラスをしている、
「お前は、何故ここにいる」
「何故?その質問はとても抽象的だ、しかもその質問に私は答える気はない」
「これはお前がやったのか?」
「これが何を指すのか分からんが…」
「この世界で起きている現象に対してだ」
「ああ、そうさ私がやった」
【黒服】は笑う。
「1ヶ月ほど前調査隊がやって来たはずだ、彼らはどうなった?」
「シャドウワイバーンを3体も倒したのにはさすがに驚いたが、しかしどうだ?いざどんなやつか会いに来てみればこんなにもつまらないやつだったとはな」
「おい」
「調査隊についても言う気はない」
「僕をどうする気だ?」
「別にどうもしないさ、ただ会いに来ただけだからな」
「ここはなんなんだ?」
「ラダクトさ、君が今いる場所はラダクトの一部みたいなものだ」
「一部?」
「そう、世の中には表と裏、内と外があるものだ。ここは内の一部」
【黒服】の姿が揺らぎ始める。
「おや、戻しに来たか、そういえばまだ名前を聞いていなかったな」
「知ってるだろ、名前くらい」
「知ってるさ、ただ私も名乗ったんだから礼儀ってもんだろ」
「ファデル、ファデル・フラミクス」
「フラミクスか、聞いたことがあるな」
「だろうな」
「忘れるな、ここは私の世界だ、このラダクトは既に私の色で染まっている、お前達が何をしようとも無に消える」
【黒服】は消える前にその奇妙な忠告を残していった。