ラダクト
「これはこれは、よくぞ来てくださいました」
宇宙船を降りるとファデル達は待っていたラダクトの者に声をかけられた。
「さっそくですが車を用意しましたのでそこで議事堂に向かい状況説明を…」
「いや結構だ、私達だけで好きに調べる」
ラダクトの人間からの提案を視目はきっぱり断る。
「し、しかし…」
「少し確認するが、よほどのことをしない限り許可は要らないんだな?」
「え?ええ、まあ」
「わかった」
視目はそれだけ言うと歩き始める。
「良いんですか視目さん」
「構わないさ、どうせ早急に知らせなきゃいけないことがあったんだったらさっき言っているはずさ、それが無いということはわざわざ向こうまで出向くのは時間の無駄だ」
視目は足早に歩く。
「ところでどこに向かっているんですか?」
「この世界のドアがあるとこだよ、本当に繋がらないのか確かめないとね」
そしてファデル達は町の路地裏にある扉にきた。扉に入ると中は狭く、部屋の真ん中には閉まった扉がある。ファデルはドアノブを何回か回す。
「だめですね、本当に開かない」
「やはりか、あの黒いのが魔力の流れを塞いでるようには思えないんだけどな」
「もしかしたら鍵をかけられたかもしれませんね」
「錠前師か…」
ファデル達は扉のあった建物から離れホテルに向かった。ホテルもラダクトの政府が提供すると言ってきたが視目は居心地が悪いだけと断った。
「部屋を3つ、ですか?」
フロントは戸惑った声で視目に尋ねた。
「そう3つだ、106、236、339の3つ」
視目はなんでもないかのように言う。
「わ、わかりました」
そうして視目はフロントから鍵を受けとる。3つの部屋の内の一つである106号室部屋に着くと視目はベッドの上にこの地域の地図を広げいくつかの場所に印をつけていく。
「ふむ、一番近いのはここか…」
「やけにアナログなやり方するんですね」
「一番信頼できるのはいつだって紙なのさ、もちろんこの地図が偽物だったらお手上げだけどね」
視目は地図を畳むとおもむろに手袋をし始めた。
「ファデル君武器あるよね?」
「え?ええ、ありますけど…、まさか今から行くんですか?」
「当たり前だろ、ともすれば時間を無駄遣いするかもしれないんだから」
そうして部屋に着いてから5分とたたないうちにファデル達は部屋を出る。
「鍵、持ち出すけど構わないね?」
「え?い、今からお出かけですか?」
「構わないよね」
視目はフロントの質問を無視して言う。
「え、ええ紛失されない限り構いません、ど、どうぞ好きになさってください」
「そう、ありがと」
フロントの戸惑いをよそにファデル達はホテルを出た。