所長の頼み
第860番世界『アイディビル』
鬼神会 戦闘局 亀池事務所
「ふぅ」
ファデル・フラミクスはゆっくりと息をはきだす、彼は報告書を作っていた、それも他人のを。
「後半分か…」
何故彼が他人の報告書を作っているかというと彼がいわゆる新人にあたるからだ。
「エイジさんここどうします?」
ファデルは鬼神会に入ってから3年ほどするが今の所この事務所内では一番新しく入ってきた『新人』なのだ。
「ああ、そこは…5体討伐ってしといてくれ」
「わかりました」
言われた通りに報告書を作っていく、新人であるファデルは基本的に雑用をやらされている、しかしファデルはそんな現状に対して不満を抱いていなかった。
「あ、所長」
入口の方で声が聞こえる、ここの事務所の所長であるタトス・ノーズ・タートルが会議から帰ってきたのだ。タトスは辺りをしばらく見た後ファデルの方に歩いてきた。
「ファデル君、少しいいかい?」
タトスがファデルに話しかけた。
「え?僕ですか?」
ファデルは少し驚いた様子でタトスに聞き返す。
「そう、君にやってもらいたい依頼があるんだ」
「でも、僕今報告書作ってるから…」
ファデルはタトスに作成途中の報告書を指差す。
「そんなの頼りになる『先輩』に任せればいいんだよ、ね?エイジ君?」
「え!?えーと、いやー…」
唐突に話をふられたエイジは困惑する。
「悪いけど君の分も含め報告書を作ってくれないかな?ファデル君これから仕事で忙しいから」
「わ、わかりました…」
エイジは項垂れるようにして承諾した。
「よかったねファデル君、君の『先輩』が報告書を作ってくれるそうだ」
「は、はあ」
ファデルは少し申し訳なく感じた。
「それで僕に頼みたい依頼ってなんですか?」
「それは本部の方で話すよ」
「本部ってもしかして局長の部屋にいくんですか?」
「いや、本部の会議室を使う、そこで詳しい説明をするからついてきてくれるかな?」
「今からいくんですか?」
「なるべく早い方がいいんだ」
そしてタトスは歩き出す、ファデルも急いで椅子から立ち上がりタトスについていく。