内の塊
ファデルと視目は車に乗って繁華街に向かっていた。
「すごいね、まさか宇宙船の付属設備にこんなものまであるとは」
「これ車じゃないんですよ、陸海空どこでもいける乗り物っていう感じで」
「ますますすごいな」
車が繁華街に近付いてくるとファデル達は眉をひそめた。目の前の繁華街は真っ黒なドームに包まれていた。
「内か…」
「これ突っ込んで大丈夫なやつですかね?」
「突っ込むしかないだろうね、じゃあファデル君あれを」
視目が差し出した手にファデルは小型レーダーを渡す。
「じゃあ行きますよ」
車がスピードを急上昇させ繁華街に突っ込んでいった。
繁華街は閑散としていた。しばらく走っているといつの間にか黒い車が後ろからついてきていた。
「おいでなすったか、じゃあ行ってくるよ」
「ご武運を」
視目が座席にあったボタンを押すと車の屋根が開く、そのまま視目は車から飛び出した。
「ほらよ!」
飛び出した視目は黒い車を踏み台にして地面に着地する、そして大きく腕を振ると腕の動きにつられて黒い車が空中に浮かび上がり車は仰向けに地面に叩きつけられた。大破し、炎上する車を確認して視目は走り出した。視目がいなくなってしばらくすると黒い車は元通りになり走り出した。
「おや」
バックミラーに黒い車が見える、ファデルは交差点を左に曲がりUターンした。正面に黒の車を捉えスピードを上げる、二台の車は衝突した。少しずつハンドルをきって車を斜めにしていく、
「今だ」
ファデルの車が再びUターンをした、黒い車はファデルの車の横を孟スピードで通過する、
「武器無しとかなめてんじゃねえよ」
ファデルがスイッチを押すとファデルの車のライトからレーザーが放たれ黒の車に直撃した。
「これで5つ目か」
視目は車から降りた後特に妨害もなくボトルを回収していた。
「次はこっちか」
歩いていくとペットショップにたどり着いた、ペットショップ内に動物は見当たらない。
「政府がここまで気を回すとは思えない、どこに行ったんだ?」
視目はカウンターに置かれていたボトルを回収した、ふと扉が半開きになっていた。扉を開け奥に進む、奥の部屋にもゲージがあるが中には何もいなかった、中央のゲージを除いて、ゲージの中には豹がいた。
「おいおい、ペットショップだろ」
「なんだまだ反応していなかったのか」
視目が顔を上げると目の前に【黒服】がいた、【黒服】の服は少し乱れ、腕は露出され包帯が巻かれていた。
「まだお前の糸は反応できるさ、しかしなんだあの車は?あんな物を一戦闘局の人間が持つ武力を超越している」
「さあ?彼が僕のバディに選ばれたのはそれがあるからなんじゃない」
「ふん、さて全く面倒だ、育ちの悪い奴に刺激はあまり与えたくないんだがな」
ゲージが開く、中にいた豹はゆっくりと出てきた。
「こんなものどこから…」
「知ったって意味ないだろう?」
【黒服】は突然手を伸ばし視目の顔をわしづかみにした、そのまま左手の指先から黒い液体をゲージから出てきた豹に与えた。
「な、何を!?」
視目は【黒服】の手を振り払い、豹を見た、豹は倒れていて痙攣していた。
「何をした?」
【黒服】を見ようとしたがすでに【黒服】は消えていた。
「くそ!…ん?」
倒れていた豹が起き上がる、体の毛が黒になっていき体格も大きくなっていく、
「そういうことか」
視目は急いで店を出て次のボトルがある場所に向かうことにした。
「来たか」
ファデルは再び現れた黒い車を見る、車の正面を黒い物体が横切った。
「なんだ…、今何が?」
上から黒い豹が降りファデルの車に攻撃してきた。
「なっ!」
なんとか車から豹を振り落とすが黒い車が迫っていた。
「2対1とはね」
ファデルはパネルを操作し、車から飛び出す。
「足運び【浜木綿】」
ファデルは一瞬で黒い豹に近づき、取り出した棍で殴った。豹は近くの建物に激突した、黒い車がファデルに迫る。
「このくらいの力かな」
ファデルは棍を振り黒の車を止めた、
「お前、炎上家か?」
車から降りてきた【黒服】が吐く、
「まあ、そんなところだね」
ファデルは棍で【黒服】に攻撃をしかける、【黒服】は鎌を取り出し棍を止める。ファデルは棍を振り回し【黒服】を攻撃していく、【黒服】は鎌で攻撃を防いでいるだけだが余裕のある感じだ、
チリン
「よっと!」
後ろから飛びかかってきた豹の顔面を棍で殴り飛ばす。
「炎上家ならばその反応もうなずける、それはなんだ?」
「答えるわけないだろう」
ファデルは任務中は常時、独特間合い【夾竹桃】を発動させている。
「その力は強き悪意には反応するようだな」
「だからどうだと?」
「別に」
ファデルの足元の影の形が変わり、実体となってファデルを捕らえる、
「これは!!」
「つまり、そういうことだ」
「くそっ!」
ファデルは影の拘束を解こうとするが拘束は締まる一方である。
「無駄だ、自身の影を元に形成されたモノは確かだ」
【黒服】は鎌をファデルの喉元にあてがう。
「さて、貴様にはまだ利用価値がある。このままもう一匹をおびき寄せる餌になってもらうぞ」
「お断りだね、それにそんなこと出来ると?」
「それは自分の状態が安全な時に言うものだ。だが今のお前はそうじゃない」
「それは違うな」
「随分と強気だ、なっ、がっ!!」
突然【黒服】が鎌を落とし首元に手をやる、まるで誰かに首を絞められているかのようだ。ファデルを締めつけていた拘束も解かれる。
「は、放せ!」
「大丈夫だ殺しはしないさ、我らが敵【黒服】」
視目は静かに言う、
「ふっ、これは、御免だな」
【黒服】が消え、鎌を拾いファデルに襲いかかる。
「失念したな使い走り、ここは内だ」
ファデルは【黒服】の攻撃を防ぎ反撃したが再び消えて当たらなかった。
「全く、ここらが引き際か、…いい加減起きろ」
【黒服】の声に反応し、ファデルに殴り飛ばされて気絶していた豹が起き上がる。
「お前達から言わせればシャドウパンサーか、これは伸びる、いずれお前達の脅威となる」
【黒服】とシャドウパンサーは消えた。