軍事基地(1)
「後5分程で到着します」
パイロットの声を聞いてファデルはゆっくり目を開けた。
「おはようファデル君」
別に寝てたのではなく精神統一してただけである。
「そういえば視目さん出発時あの代表と何か話してたようですけど」
「ああ、あれね。ほら僕達今から基地に行くだろ?基地で襲撃があった時被害が出ても大丈夫かって聞いたんだ」
「それで?」
「認めたよ、別に構わないって」
「へえ、よく認めましたね」
「まあ彼が思ってる被害は少々だろうね」
「違うんですか?」
「そりゃなるべく被害は抑えるけどシャドウドラゴンみたいなのがまた現れたらその時は基地を破壊する位の気持ちで戦わないとね」
その言葉を聞きパイロットが反応する。
「まあ、よほどの時はだけどね」
それから5分後、ヘリは基地の着地地点に止まった。
「それではこれで失礼します、帰りも連絡してくだされば迎えに行きます」
「はいはい、ご苦労様」
ヘリが飛び立つのを確認して視目は辺りを見渡す。
「とりあえず建造物から洗っていくか」
「そうですね」
チリン
「え?」
突然ファデルは自身の足元が地に着いていない感覚を味わう、次に身体が沈み、そしてファデルは宙に放り出されていた。
「ファデル君!?」
とっさに視目がファデルの腕をつかもうとしたがなぜか身体が思うように動かなかった。
「うわ」
そのままファデルは重力を無視して文字通りふっ飛んだ。
「ファデル君!!くそ、なんで動けないんだ」
「動かないだろうな、私に捕らわれているんだから」
視目は視線を前に向ける、そこには全身黒い服に身を包みサングラスをかけた男が立っていた。
「誰だ?」
「おや?彼から聞いてないのか、まあ良い、私は【黒服】君たちの敵さ」
「なるほど、お前がシャドウドラゴンを仕向けた張本人か。それで?ファデル君をどこに飛ばした?」
「さあ?少なくともこの島からは出ていないだろう」
「それなら安心したよ、あのヘリには乗りたくなかったからね」
「そんな戯れ言を言っている暇があるかな?」
「あるさ、ここお前にとっては荒らされてほしくない場所の一つだろ?」
「だがここでお前達がやられてくれればなんの問題もない」
「あいにくとその予定はないんでね」
「どうかな」
【黒服】は笑いながら消えた。
「さてと」
視目は身体が動くことを確認して歩きだした。
ファデルは気づくと仰向けになっていた、
「ん、よいしょ」
起き上がり辺りを見る、林のようだが舗装された道がある。
「とりあえず島からは出ていないのかな?」
しかし随分と遠くに飛ばされたようですぐ後ろには金網のフェンスがあった。
「視目さんと連絡取れたらいいんだけど…」
ファデルは小型の通信機を取り出すが通信機は反応しない。
「壊れてないようだから妨害電波か、まあ軍事基地だからかな?」
ファデルはとりあえず建物を探すため歩き出す、
「武器は…、そうか作っておいたんだっか」
しばらく歩いているとファデルは何者かの視線を感じた、
「あいつじゃないな」
手に黒い拳銃を持つ、この銃こそファデルが作っておいたという武器の1つである。
「キキッ」
木陰から何かが飛び出して来た、ファデルは驚いた様子もなく何かに対して引き金を引く、飛び出した何かはファデルの足元に倒れた。
「猿?」
それは黒毛の猿だった。
「この島に住んでいたわけないよな、だとするとあいつが差し向けてきたやつか」
ファデルは再び歩き出したがその歩調は遅かった。
「結構いるな」
視線を感じながらも歩く、
「もう少しで抜けそうだが…」
林を出たところでファデルは驚いた、奥に建物が見え道もそこまで繋がっているのだろう、しかし目の前には大量の猿がいた。
「囲まれてたわけだ」
「キキッー!!」
猿の一匹が叫んだ瞬間、猿の軍団がファデルを襲うために飛びかかった。