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智美なりの普通
そのころ、独学で司法試験の勉強をする車いすの修一は智美のために試験に受からないとと思っていた
部屋の机には智美とお揃いの青い宝石 ラピスラズリ。智美が好きな宝石である
「大泉君?」
智美をよく知る男性弁護士が顔を見せた
「葛西先生、どうなさったんですか?」
葛西と呼ばれた黒いスーツの弁護士は六十代後半
「大学に行く気はないか?」
大学ですか。ですがお金が
先生と智美の関係は?
伊集院智美さんとの関係は姪と叔父だよ
修一は彼、葛西泰道が医療裁判で有名な弁護士であることを知らない
「葛西先生はお医者様ですか?」
面白いことを言うねぇ。今晩は飲むぞ。
葛西弁護士は修一の家庭教師になる
修一と葛西弁護士は意気投合
「余談だが、伊集院家は資産家でね。ここだけの話、智美さんは資産家になるのを嫌がっている。」
お金持ちが嫌なんですか?
ごくごく普通の人になりたいんだそうだ
恐らく智美は模索しているのだ。何が普通かを
お金持ちの家に生まれたがゆえに、智美のお母さんはそれなりの普通を求めている
と修一
なるほど。君は智美さんを守るかい?
葛西弁護士に聞かれ、修一は首を縦に振る