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小4男子、ビブリオバトる  作者: らと
【第一章】小4男子とビブリオバトル
4/33

1-2-2 「本当、憐れなツインテールだね」

 司瑞が落ち着いたところで、いよいよイベントスペースの中に。

「おじゃましまーす……」

 中にいる人は、ええと……ざっと数えて、20人くらいかな?

 立って話してる人もいるけど、もうだいたいが椅子に座ってるみたい。

 オレと同じくらいの子もいれば、少し上の子も――あ、ちょっと下っぽい子もいる!

 司瑞が言ってたとおり――うまくいけば、たくさん友達できるかも?

「あれ?」

 えーっと、あの、……クラスメイト、だよね? あの子。

 ……少し伸びた黒い髪の、なんか眠そうな目の男子。

「司瑞、司瑞」

「ん?」

「……誰だっけ、あの、同じクラスの……」

 ちょっと申し訳ないけど、ここはこっそり聞いてみよう。今聞いとけば、あとで話す機会があっても安心できるしね。

「ん? ああ、あそこにいる――男子、で合ってる?」

 そうそうそう!

「えっとね、書川(フミカワ)。あ、書川氷河(フミカワヒョウガ)! そっか、本庄、まだ話したことないかもしれないな」

「そうだね。だいたい誰かといるときは、隣の津田(ツダ)緩井(ユルイ)が一緒かな」

 そっか、女子と一緒にいることが多いんだ。班も違うし、男子のグループに来ないなら――ヘタしたら、ずっと話さないまま5年生に、……なんてこともあったりするのかな。

 ……書川のことまだ知らないけど、それはちょっと寂しいかも。

「――それでは、ここで問題です!」

「えっ!?」

 なんかクイズ始まった!

「本庄、緩井と津田――どっちがどっちか覚えてる?」

 えっと――。

「じゅー、きゅー、はーち、なーな……」

 司瑞! カウントしないで! 待って待って!

「ええと、髪の短い方が緩井で、結んでる方が津田っ!」

「正解!」

 よし!

「……フルネームで?」

 え。

「……本庄、フルネームで?」

 なんか! なんか黒いオーラ出てるんだけど観上! 邪悪な顔!!

「えーと、えーと……」

「十、九、八……」

 観上もそれやるの!?

「えーと! ……緩井が『るいるい』だから――『緩井るい』っ!」

「うん。……で、津田は?」

「え」

「……津田は?」

 怖い怖い観上怖い、なんか知らないけどすごく怖い!!

 ……多分オレ、今外から見たら『ぼのぼの』みたいになってると思う。汗いっぱい出てる。

「ごめんごめん、ちょっと意地悪だったね」

 ……だいぶイジワルな感じだったと思うんだけど……。

「……そっか。津田、あんまり覚えられてなかったんだ」

 まだ転校したてだし、そこは許してほしいな。

 ……ていうか二週間でここまで覚えられてるんだから、少しくらい褒められてもいいような?

「そっか――」「津田は本当、憐れなツインテール(・・・・・・・・・)だね」

 仕草も声の大きさも、なんかわざとらしく感じるのは――うーん、オレの気のせいかな?


「――あっ、また私のことツインテールって呼んだでしょ!」


 遠くの方にいた津田が、ズカズカこっちに向かってきた。結んだ髪も一緒にびょこびょこ。

「あれ、聞こえてたの? ……自意識過剰なツインテールだなあ」

 ……なんとなくだけど、わざとらしく感じたのって――もしかして、気のせいじゃなかったりする?

「人を髪型で呼ぶなって言ってんでしょ!」

 ん、『髪型』?

「それ、ツインテールっていうの?」

 ……なんか、津田がすごい顔でこっちを見てきた、

「うぇ、知らないの!? ……今までどうやって生きてきたの!?」

 えー……?

 ……オレが男子だからかもしれないけど、別に今までフツーに生きてきたよ……?


 ――いや。

 逆にもしかしたら、津田は『空気・水・ご飯・睡眠・ツインテール』くらいの勢いで生きてきたのかも。

 ……からかわれてもやめないくらいだし、本当にそのくらいの気持ちで生きてきたのかも。

 ……オレにはよく分からないけど、津田にとっての『譲れないこだわり』ってやつなのかも。

 ……なんか、それってかっこいい!

 ……うまく言えないけど、なんか……なんだか、それってすごい!


「あの、よく分かんないけど……じわじわ『感心感心』みたいな顔になるの、止めてくれない? なんか、すごくやりづらいんだけど……」

「あ、ごめん! ……あのね!」


「自分にしっかり『こだわり』があるなんて、津田ってすごいな、カッコいいな! ――って!」


「あのね、本当にすごいと思う! ちゃんとしっかり『こだわってるもの』があるの! からかわれても止めたりしないの、津田ってすっごくツインテールのこと好きなんだろうな、って思うし、きっと、なんか――それだけこだわってるんだよね! すごい! すごい素敵なことだと思う! オレあんまりそういうの無いから、だからすごく、あの……すっごくカッコいいな、って思う!」


 ……ええと、なんだろう。津田がすごい赤くなってるんだけど。漫画ならプシューって言いそうなレベルで、どんどん。

「えぅ、あ、そんな、こだわりってほどじゃ……あるけど……でもあの、一応、その……ありがとうっていうか……その、普段、みんな、そんなに褒めてくれないし、うー、あうぅ……」

 あ、津田、普段からイジられてるんだ……。

「……本庄、近すぎ」

 え。



 状況確認。

 ……観上の声。

 ……蒸気が出そうに真っ赤な津田。


 ――津田の肩、ガシッて掴んでめちゃくちゃ顔近付けてるオレ。



「うわあああああ!! ごめん、ごめん津田ぁっ!」


 そうだよね、そりゃ照れるよ、困るよ!! ありがとう観上!! ごめん津田ー!!

「いやー、おれ、本庄がそのままチューするんじゃないかってちょっとワクワク……」

 変なこと言わないで司瑞!?

「やだな司瑞、そんなワケないじゃん。……ねぇ、本庄?」

 観上も怖い顔するのやめて!!?

「えうぅ、ひょーがぁ……」

 津田、ゾンビみたいによろよろしてる。ホントにごめん。

 ……なんとなく、津田のツインテールがしょぼんとしてるみたいに見える。なんか犬のしっぽみたいで――ってそうじゃなくて!

「ええと、本当にごめん! ごめんね! 津、田――?」

 あ、いつの間に書川と緩井が近くまで来てたみたい。……結構騒いじゃったから、心配してこっち来たのかも。……うう、本当にごめん。

「ひょーがぁぁぁ……」

 ふらぁっと寄りかかる津田を、絶妙に書川がナイスキャッチ!

 ん? 書川――なんかちょっとだけ、ニコって笑ってる?

「うえぇぇぇぇ」

「レン」

 あ、名前判明。

 そっか、津田は『レン』って名前なんだ。おぼえとこ。……観上怖いし。

「なぁにぃぃぃ……?」

「……良かったな。ツインテール――」


 ええええええええええええ!?

「ふえぇぇぇぇぇ」

 書川、まさかの追い打ち!?

 あ、でも――なんかちょっと、微妙にしょんぼりしてる?

 もしかして、「ツインテール」の後、なにか言いかけてたり……した?


「うえええぇぇぇぇ、るいぃぃ……」

 半泣きで抱きついてくる津田を、今度は緩井が優しくぎゅっ、からの「よしよし」。

 ……なんか緩井、津田に頼られてちょっと嬉しそうかも。

「ええと……本庄くん」

「は、はいっ!」

 なんかいま身長測ったらすごく伸びてそうなくらい『シャキッ!』ってしちゃったねオレ!?

「……あの、びっくりさせてたらごめんね? レンちゃん結構照れ屋さんで……。たくさん褒められるとすぐあうあうしちゃうから、その……難しいかもしれないけど、あんまり一気に褒めないであげてほしいな」

「う、うん。ごめん」

 正直、少しずつ褒めてもパニックになりそうな気がするけど……。

「……観上くんは、あんまりレンちゃんいじめたらダメだよ?」

「はーい」


「……本庄本庄」

 ん?

「あれな? 観上、反省してない顔」

 だよね。


「……じゃあ、そろそろ向こう戻ろっか。レンちゃん、もう平気?」

「……んん」

 ぐじぐじ顔をこすって、津田が緩井から離れた。……同い年のはずなのに、なんか転んじゃったちっちゃい子みたい。緩井がよしよししたくなるの、ちょっとだけ分かるかも……?


「うんうん。――それじゃあ本庄くんたち、またあとでお話できたらいいね!」


 津田たちの姿が遠くなったところで、観上が肩を叩いてきた。……なんか良くない予感がする。


「本庄」「津田――


……からかうと面白いでしょ?」



「ワルだ! ワルがいる!!」

 反省してないどころじゃないよこれ!?

「……本庄」

「司瑞は何!!?」

「そんなにボルテージ全開(フルボル)してるとさ、ビブリオバトルの時寝ちゃわね?」

 そうだった!

 これ、まだ始まってないんだった――!


「はは、本庄、すごいしょんぼりしてる」

「すげー顔文字みたいだな! ほら、ぐにゃーんて落ち込んでるやつ!」


緩井るい:漢字で書くと「緩井 類」。本人はひらがな表記の方が「可愛くて好き」らしい。

津田レン:漢字で書くと「津田 憐」。ちなみに観上は漢字表記をちゃんと知っている。

観上シオン:漢字で書くと「観上 詩穏」。ちっとも穏やかじゃない。

司瑞キョウ:漢字で書くと「司瑞 鏡」。曰く、名前について「カタカナにすると名字も全部定規で書ける!」

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