夢
我ながら、いつにもなくひたすら激しい歌ばかり歌った。その為気持ち良かったが、代償として喉を潰して帰った夜八時頃。
ベッドに仰向けで寝転びながら、両手で掲げたケータイの画面と僕は向き合っていた。
先程、『突然で申し訳ないのですが、次の日曜日に僕と詩織さんで実際に会って頂けないでしょうか?』という文字を何度も打ち込んでは、送信ボタンを押せずに消し、いやでもと思い至ってはまた書いてを繰り返した。悶々と打ち拉がれている中、ページを開くと新たな通知が来ていた。
詩織さんからのメッセージだ。
『いま小説第二章まで書き終わりました(*^_^*)やっと半分くらいです(汗)でもここからどうすれば良いのか決まらなくてちょっと詰まってます(^_^;)』
相変わらず彼女からメッセージが届くと顔が綻んでしまう。
彼女は僕とメッセージを交換しだす少し前から小説を書き始めたと言っていた。それを二章まで書き進めたのか。とは思うものの、二章というのは凄いのだろうか。全然小説を読まず書かずの僕には分からない。
小説なんてベストセラーで映画化もされた作品を健司に勧められたから読んだのぐらいだ。
それでも、そんな僕でも思ったことがある。
『あれから随分進んだんですね! 凄いですね。僕は自主的に何か一つのことを貫くといったことをしたことがないので、書き続けているというだけで凄いと思います(>_<)』
本当に凄いと思って送った。
しかしいつも大体平均返信時間が二、三分の彼女から十分経っても返信がこない。それで不安になるというのだから贅沢なのかもしれないけど、それでも何か変なことを書いてしまったんじゃないかと、いつもの不安が込み上げてくる。
そうして通知が届いたと知った時に僕は思わず安堵の息を吐いてしまった。
『あの……ゆーとんさん。私の小説を、いま書いた所まで読んで頂けないでしょうか?』
えっ、と思わず驚きの声が漏れた。
もう今日は返信来ないのかもしれないなんて諦めを付けようとした時に丁度来たこともそうだけど、自分の書いた小説を読んでくれないかという彼女の依頼に。
だって今まで小説を書いた、書いているという活動報告は受けていたけど、読んでとは一度も言われなかった。それに僕は最初にマンガは読むけど、小説は全然読まないと言っていた。
そんな僕にそんなお願いをしてくるとは。
『えっと、別に僕は良いんですけど、前も言った通り僕は小説なんて全然読まないので、良いアドバイスなんて何も出来ないと思いますよ(汗)』
『はい、分かってます。大丈夫ですよ。――だから、私はあなたに読んだ率直な感想を教えて頂きたいのです。お世辞や気遣いなど無い、ただ読んだ本心を』
読んだ本心。
専門的な感想より、僕のそのままの感想を聞きたいということなのだろうか。
『分かりました。任せてください(^^)d』
それで良いなら、僕が出来ることなら、断る理由がない。
『ありがとうございます! では、よろしくお願いしますm(__)m』
数分後、届いた詩織さんのメッセージにはURLが載っていた。それをクリックして、ページを出す。
まだ投稿はしていないようで、執筆中のその作品が数話並べられている。
タイトルは仮題になっているけど、『』と書かれている。
さて、と自然と声を出しながら、まずはプロローグを開いた。
そこには文字が並べられている。それを目で追い、頭の中にインプットする作業を行う。それを続けていると、ふと文字が切れた。
ああ、もうプロローグは終わりか。
要約すると、上っ面だけの友人付き合いばかりして、心から友達といえる存在がいないという高校生の女の子が、高校二年生に進級した時にある男子と出会う行程が描かれていた。
総文字数は三千文字ということで、読み終わるのに時間は用さなかった。
そしてそのまますぐに次の話のページを開いた。
また文字を目で追っていく。
しかし、読みながら、不思議な感覚に陥った。
普段日常的に触れている文字。でも小説を読まない僕には、人に物語を読ませる為に並べられた文字の羅列を目に入れたという経験はあまり無い。
だというのに、その文章は滞ることなく頭に入ってきた。
ある時、ヒロインは出会った男子に自分は本物の友達が出来たことがないということを告げた。すると俺はお前と友達になりたいと言われた。そうして友達となり、一緒に過ごす中で徐々にヒロインは自分の気持ちに気付いていった。ヒロインは男子に恋をしていた。それを他にも出来た友人二人に相談し、その二人の画策でヒロインと男子がデートすることになったところで終わった。
全て読み終わり、小説のページを閉じる。ふと時計を見ると驚いた。思ったよりも時間が経っていなかったことに。
とりあえず、彼女に報告しないとな。
『詩織さん、今丁度読み終わりました』
返信はすぐに来た。
『では、感想を聞かせてもらってもよろしいですか?』
『はい、分かりました』
送ってから、今読んだ時に感じていた気持ちを思い出して、整理する。
そしてそれをそのまま文字に起こす。
『何度も言っている通り、僕は小説はほとんど読んだことがありません。
だから、大したことは言えないですし、言っても的外れな発言になってしまうかもしれないですが、それでもまず改善点というか、気になった点を挙げさせて頂くとすれば、時々男性キャラの発言や行動に違和感を持った部分があったことです。そのキャラになりきれていないというか、詩織さんの自身の発言や行動になってしまっているって感じでしょうか。
……あっ、そんなことを偉そうに語ってしまいすいません。でも、勿論それだけじゃありません。いや、それ以上にあなたの文章を読んでみて感じたことがいくつかあります。驚いたこともありました。
それは、この僕が、全く滞ることなく最後まで読めたということです。
僕にとって小説はお硬いものっていうイメージがありますし、寧ろそういうのを読むのが苦手なタイプだと自分でも思っていました。なのに、読めたんです。
勿論、依頼を受けたという使命感や交流を続けさせてもらってる友人が書いた文章だからという余計な雑念も最初はありましたが、読んでる最中からはただ純粋に欲求のままに読み進めていたんです。最後まで読めたどころか、続きを読みたいと思えたんです。それは自分好みのストーリーや王道だからといった理由だけではありません。
楽しんで書いているというのが伝わってきたから。活字にあまり触れない僕でも生き生きとして楽しんでいるのが分かる文章を見せてもらって、楽しませて頂きました。
――才能があるなんて小説を何も知らない僕が簡単に口にして良い言葉ではないと思います。でも、あなたの文章には小説に興味も何も無かった人を惹き付けただけのものがあるというのは、変えようのない事実です。それって誇って良いことではないでしょうか。……って自分で言うのもおかしな話なのですが(笑)
ああ、長文になってしまい申し訳ありません! とりあえずここまでで送らせて頂きます』
送った。
その前にもう一度見直したけど、やっぱり長すぎだろと思ってしまった。それでもこれが僕の正直な気持ちだからそのまま送った。
数分経っても彼女から返信がない。長ったらしく、素人が知ったような口を聞いたことに腹を立ててしまわれたなど、あるわけがなかろうな。なんて考えたが、時間が経つ度にその考えが自分の中で真実味が増していく。
早く来てくれ、と祈るように待つこと十分程経ってから、じーと眺めていたケータイにメッセージ通知の文字が浮かんだ。
来た!
……恐る恐る、メッセージを開いて見た。
『……なんというか、驚いています。小説は読まないと元々聞いていたので、こんなにはっきりとした感想を頂けるとは思っていなくて。――って、これだと少し失礼な言い方になってしまいますね。申し訳ありませんm(__)m』
ここまでが書かれていた。
えっ、これだけっ? っと拍子抜けしていると、その疑問に答えるかのように詩織さんからメッセージが届いた。
『改善点は自分でも気になっていた部分なのでそれを知れたのは非常にありがたいです。実は私、女子高に通っているというのもあるんですけど、男の人とあまり仲良くなったという経験が無いので、よく分からなかった部分でもあったんです。やっぱり、生の声っていうのは参考になりますね。良かったら具体例も挙げて頂いてもよろしいでしょうか?』
読んでみて、そういえばと思い出す。
確かに前に詩織さんの通ってる学校を聞いた時に、有名な女子高の名前を挙げていた筈だ。
『勿論良いですよ。ちょっと整理するので待ってください』
『あっ、すいません、その前にまだ言わせて頂きたいことがあるんです』
『はい、何でしょう?』
『私の作品に対する肯定的な言葉も述べて頂き、ありがとうございました。自分を惹き付けられたんだから誇って良いですか。そんなこと初めて言われました(笑)――そんな言われるなんて想ってもいなかったことだから、嘘じゃないと分かるから、本当に嬉しいです。正直、面白かったとか、よく分からなかったとか、そんな簡単な感想だと思ってましたから(笑)』
『いやいや、街中アンケートじゃないんですから。いくら何でもそんな適当な感じでは終わらせないですよ(笑)』
自分で言ってたんだから、まあそうだよなとは思うけど、そこまで期待されていなかったというのは正直複雑な気分だ。
でも、ありがとうって言われて、僕のやったことが役に立てたんだって嬉しくなった。
『ふふ、優しい方ですね……。ありがとうございます』
『いえいえそんな、大袈裟なことじゃないですよ』
これらのやり取りを少しずつの間で交換してきたが、しかしここでまた返信が途絶える。僕は具体例を出そうと、また詩織さんの小説を眺めてる内に熱中しながらも思い出しプロフィール画面を開くと、メッセージが来ていた。
スパンは五分程だった。
『……それと、ゆーとんさん。やっぱりもう一つ、話を聞いて頂いてもよろしいでしょうか? 今度は小説というより私のことになりますし、大分長くなると思うんですけど』
詩織さんについての話……?
この文章を読んだ途端、様々な想いが沸き上がってきた。
話って何だろう、それに何故僕なんだろうという疑問。
それと僕に頼ってくれた、彼女にとって僕はとりあえず話を聞いてもらうくらいの存在にはなっているという喜びだ。
でもだからこそ。まだそんなことを考えてしまうくらいの仲だから、気になった。
『結構大事な話、みたいですね? それなら、こんなネットで短期間交流したくらいの僕で良いんですか? 親とか、友達とかの方が……』
『だからこそです。近過ぎず遠過ぎない、適切な距離にいるあなただからこそ私は話してみたいと思ったんです』
なるほど。まあ、別にそこまで言われて断る気なんて元々ない。
そもそも嬉しいくらいだし。
だから僕は『分かりました。なら、僕は全然構いません。話してください』と送った。
『ありがとうございます。
……まず、ゆーとんさん。以前、私が紹介した投稿サイトで長年小説を書いているという話をしましたよね。
書き始めたきっかけは昔読んだ小説が面白くて、私も面白いストーリーを書いてみたいと思ったという、ありふれた理由だったんです。そして書き場として選んだのがあのサイトでした。
あ、のサイトはユーザー間交流が盛んで、私も様々な人と交流しようと思ったのですが、昔から自分から友達を作るのはあまり得意な方ではなかった為上手く行かず、そんなのに時間を費やすなら文章を書いていたいと思うようになったんです。だから他ユーザーとの交流はほとんど無かったのですが、一人だけ、歳が近く同じラブストーリーが好きな女性と仲良くなることが出来ました。
その人とはお互いにお互いの作品を批評などしあって切磋琢磨しあいました。私も楽しくてそれも長く続けてきたのですが、最近はその人と交流することがほとんど無くなりました。その人の書いた小説が出版社の目に留まったんです。書籍化が決まり出版し、彼女はプロの道を歩み出しました。更に普通に社会人として兼用で仕事もこなしているようで、もうプライベートに時間を割くことは難しくなっているのでしょう。
それは寂しかったですけど、私は彼女を心から祝福していますし、応援しています。
そして、彼女のデビューは私の心にも変化をもたらしました。それまでただ趣味として自分の伝えたい物語を紡いできた、そして単に感想を貰えれば程度で公開してきた私が、もっと多くの人に見て貰いたいと想ったんです。仲良くしていた方がデビューしたことによりプロという到達点があることを意識してしまったから。私も彼女の向かった場所を目指したいと想ったんです。
――すいません、長々と私の過去話をしてしまって。
ですが、ここからが本題なんです。プロという明確な目標が出来た私にはその為に、小説の専門学校に入りたいと思うようになりました。いえ、勿論プロにはなりたいですが、例えなれなくてもそこで学んでみたい、大好きな小説を書くのに集中出来る、技術を学べる授業を受けてみたいんです。
そう想ってる筈なのに……私は未だに先生にも親にも友達にもそのことを相談出来ないでいるんです。私達高校二年生は、そろそろ進路を固めていかなきゃいけない時期に入ってきましたよね。言わなきゃいけないと分かっているのに、言えないんです。いえ、正しくはそれで良いのか私自身も迷っているんです。
現実的に見て小説家になれる確率なんてそう高いものではない。あくまで小説を書くのは趣味の範囲に収めて、普通に大学進学して安定した職に入った方が良いんじゃないのか。そもそも、私にはプロになれるような才能なんてあるのかな、っとそればかり考えてしまいます。才能がないなら、最初から夢見ること自体が間違っているんじゃないかって嫌な考えばかりが浮かんで。
そのことについて、自分だけで考えてもどうしようもないと思って、ゆーとんさんはどう考えるのか聞いてみたいんです。
勿論、ゆーとんさんの答えで私の答えが決まるなんて重たいものではなく、あくまで参考程度に聞かせて頂けないでしょうか?
……すいません。話を聞いて頂くというより、相談になってしまって。その上、こんな大きな相談をあなたにしてしまって……』
時間を掛けて送られてきたのは、長々と綴られた文章。詩織さんの言う通り、全く予想していなかったぐらいに大きいこんな相談を見て、呆然としていた。返事を適当にしてはいけないと思い、何度も見直すがけどすっと文章が入ってこない。
それは長いからなんて理由じゃない。まるで庶民と王のような、なんて例えは適切かは分からないけど、それぐらい同じ人間なのに全く違う人種の人と接しているような錯覚に陥ってしまうぐらい、あまりにも自分からかけ離れたことが書かれているからだ。住んでいる世界が違う、とまでは行かなくてもそれぐらい明確な差は感じた。
確かに詩織さんの書く小説は、素人目とはいえ、別段目立つほど変な文章ではないし、やっぱり書く力というか、読ませる力はあると感じた。でも、だから才能があるから大丈夫なんて言えないし、言いたくない。知らないことを知ったように語るのが一番最悪の方法だ。
なら、諦めた方が良いなんていうのか……? それも違う。
――やっぱり正直に言うしかないよな。思ったことを書くしかない。
知らないことを知ったかぶって語るのがだめなら、知らないとはっきり言えば良い。
『僕、たまに思うんです。時間は経つのが早いなって……。つい、この前高校入学したばかりって感じがするのに、もう二年生ですよ。本当に早いです』
『えっ……』
思ったことからそのまま書いたら、明らかに困惑していると分かる彼女の文章が届いた。
このままだと、話をぷっつんした上に急に訳分からないことを語り出したヤバイ奴だと思われるんじゃないかという焦りから、急いで次の文章を打つ。
勿論自分の気持ちをそのまま移しこむように。
『時間っていうのは限られてるくせに、そんなの知ったことかとあっという間に過ぎ去っていく。だから、あっ、これは僕の個人的な考えなんですけど、だからこそその時間を無駄なく好きなように生きていきたいって思うんです。
限られているんだから、ただ何となく過ごしていくよりも、ひたすらやりたいことを求めて楽しんで過ごしていきたいなって。まあ、思ってるだけで今のところ実践出来てないんですけど。僕には特にこれが好きってことも、これがやりたいってこともないんです。見つけられないままここまで過ごしてきました。思い返してみれば、特に印象のない、他の人から見てだけじゃなくて自分から見ても全く面白くない日々を過ごしてきたんですよ。我ながら、そんなの嫌ですよ』
ここで一旦送信した。
そして次の文字を打ち始める。
でもそんな僕だけど、今は楽しい時間を過ごせていると思える。顔も見たことない人と、ただちょっと仲良くなっただけなのに、それでも僕にはそれだけでとても色付いた楽しい日々を過ごせているように感じるんだ。
なんだかんだで、健司には感謝することしか出来ない。
でも彼女には僕には持っていないものを持っている。
『だから、本気で悩む程向き合える夢を持っているあなたが凄いと思いました。正直に言えば羨ましくて、でも今の僕にはとても手に入りそうにない、とても大事なものを詩織さんは持っています。
だから結論を言いますと、僕は絶対に自分のやりたいことをひたすら追求するべきだと思います。よく聞く言葉ですが、やらずに後悔よりやって後悔です。リスクや安定性なんか考えて普通を求めたら、それはそれで良いこともあるかもしれませんが、きっと夢を諦めた後悔はずっと残ることになると思います。
そもそも才能なんてものは、目に見えない、実態のないものを人間が定義し、言葉として固定化させたものでしかない。だから誰かが、例えそれが自分だったとしても簡単に、才能あるからやるべき、無いから諦めるべきなんて線引きして良いものではないのではないでしょうか。
それに才能っていうならあなたはずば抜けた才能を持っているじゃないですか。
リスクがあると知って、それでも本気で悩める程好きなものがあるということ。長年続けられる程好きなものがあるということ。何かを本気で好きでい続けるというのは、かなりの才能だと思います。くさい台詞になってしまいますが、ずば抜けた小説に対する愛と情熱は武器になると思いますよ。その才能を無駄にしないでください』
打ち終わって気付けば、何故かはあはあと息が乱れている。
指を動かしすぎた。こんな長文を一気に短時間で書いたのはこれが初めてだからだな。というより、興奮していたというのが一番大きな理由だと思うけど。
『本気で好きでい続けることが、才能、ですか……』
送ってから暫くしてそのメッセージが届いた。
復唱された。あれっ、もしかして何言ってんだ、こいつ的な感じなのか!
『ゆーとんさん。今、私どんな顔してると思います?』
突然の予期せぬ質問に戸惑う僕。
えっ、どういう意図で聞いてきたんだ、この質問?
『えっと、怒ってます?』
『えっ! ……すいません、今のは笑ってしまいました。何でここまで言って貰って怒るんですか』
『はは、違いましたか』
僕はそっと胸を撫で下ろした。
何も知らないくせに生意気ばっか言いやがって、とか思われてる可能性も無きにしもあらずだと考えていたという事実は闇に葬っておこう。
『ゆーとんさん、本当にありがとうございました! ゆーとんさんの掛けてくれた言葉一つ一つが勇気になりました。親と先生に話してみる決意が出来ました』
画面を見た瞬間、僕はほっと自然と柔らかい笑みを溢した。
自分の言葉で彼女が勇気を持ってくれたことに安心したんだ、僕は。
『って顔していました(笑)』
不意の彼女の補足に、えっと声を出してしまった僕は真意を聞こうと文字を打ち始めたが、また新たな詩織さんからのメッセージの方が先に届いた。
『それとゆーとんさん……』
『はい?』
今度は何だろうと返信を待っていると、すぐにメッセージが届き、僕はいつも通り何の気なしにそれを開いた。
そして我が目を疑った。
『ゆーとんさんと実際に会って話がしてみたいと思いました。なので次の日曜日、私と会って頂けないでしょうか?』