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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

監獄の求人、キャラクターのデバッカー

作者: 孤独

「更生はない。ならば、私達のデバッカーとしての労働に貢献してもらおう」


デバック作業は難航している。


「結果は出てるのか?出てないのか?」


人類の一部が行なう、人類への反逆。その1ページ。


「出ました。正しく死者を作り出せました」


地球とは別の。現実とは別の。自分達の世界をここに存在させるための。



◇  ◇


仮想空間というのを生み出すのに、どれだけ脳に伝える刺激があるか。どれだけこのリアルに影響を与えるか。

一つのゲーム会社は各国から寄せられた研究費と協力によって、挑戦を行なった。

その会社は大手企業とは良い難いが、集められた人材は奇想天外な人々。常識の通じない、一般的な発想を持たない連中。


クリエイターという生き物。


「この協力の大元締めは中国とロシア」


いつかはではなく、必ずと予見している者が1人。彼女がこの依頼を作り上げたと言っても良い。

酉麗子とりれいこは夢のプロジェクトを、現実のプロジェクトとしてチームに呼びかける。


「私達で異世界を作りあげる!」


MMOといった類のものをより広めると、


「いえ、こーんな!星を丸ごと変えちゃおうってことね!!」


地球という、宇宙の奇跡を覆してやろうという魔王の素質を秘める発想。

本当の大人が言うのだから、彼女の頭はオカシイのである。そのオカシさに仲間や部下は惹かれてしまう。魅力的な外見は確かにあって、綺麗な人であるが。それよりもその純真さと禍々しさを平然と融合している心。邪悪を語りながらも、邪悪には思われないこと。

彼女の底は見えず、奥も深く、裏も感じさせない。本音も明かしてくれない。


「やっぱり酉さん!あなたについて行きます!」


酉の言葉も、酉という女性すらも、好意を強く男が1人。グラフィッカーを務める松代宗司まつしろそうじ


「俺を狂わせてくれりゃいいよ。死に近ければいい」


付いて行くという意味では松代と同じだけの気持ちを持つ男が1人。プログラマーを務める宮野健太みやのけんた


「全員は揃えず。俺達、3人を納得させりゃ良いって事か?社長は弓長だろ?」


酉、松代、宮野。その3人と比べれば、まだ付き合いは短い。けれども、誰よりも仕事に取り組み姿勢は高い、管理者の三矢正明みつやまさあき



少数精鋭のゲーム会社の中にある精鋭達のクリエイターである。

まずは彼等の協力と団結がなければ、叶えようがない世界構築の話。


「電脳世界や仮想世界からか?どっちでもいくぞ」

「人の話を聞いてた~~?宮野く~ん?」


浮かび上がるのは創作に出てくる現実からかけ離れた、異世界の話。しかし、それは酉の求めていることではなかった。先ほど言った事を普通に理解して欲しいのだ。おかしくはないのだ。


「この星を変える、異世界を作るの。私達の作る異世界が地球を飲み込むの」


気色悪い電波で、頭がおかしいんじゃねぇかと、引いてしまう言い方。

新技術だけでは物足りないことを世界に示せと、酉は3人に伝えている。酉の想像を汲み取ることには……


「手段は?何をすりゃいい?」

「私達はゲームクリエイターよ。ゲーム以外、何があるの?三矢くん」


◇   ◇


ゲームを作ろうという名目ならば軽いことだろう。お客様の多くは、ゲームという物しか見ないし、聞きもせず、楽しまないだろう。

製造の過程を見れば、欲求が失せていくようなことはままあること。


「ミス、麗子」


プロジェクトの大きなスポンサーの一つ、大国のロシアを束ねている男、ダーリヤは資金と技術力の一部を提供していた。

人類全体に影響を与える、その根底作りを酉と共に視察していた。


「私はあなたとあなたの仲間を信頼している。だからこそ、期待を裏切るようなマネだけはしてもらいたくない」

「怖いことを言うのね。別にあなたや伊賀の言葉がなくても、取り組むつもりだったわ。資金と技術、人材の提供には感謝してるけど」


主役となるのは人間という生物。酉も、ダーリヤだってその分類をされている。

それでも、下々の人間とは遠く違っている。心とか体とかそんなレベルじゃないくらいの違いがある。ダーリヤはこのプロジェクトに協力するきっかけとなることが、人類にあった。とっても単純なこと。


「人類は進歩を続けなければならない」


それはダーリヤの1人や、その仲間達が進歩していてもダメなのだ。誰かが歩きを止めていてはダメ。

歩くのが嫌なら死ぬか、引き摺ってでも進ませるか。選択を選択させないまでやってきた、人間達が悪なのだ。

ダーリヤの人材の提供には、デバッカー達が多く運ばれて来ていた。デバッカーと言えばテストプレイを彷彿させるが、ここではタダの実験体に過ぎない。ゲームを嗜む者ならば誰しも、”パラメータ”と呼ばれる数値。キャラクターや背景の数値化。

それらが、しかと身体に現れてくるとしたらどうなる?



「ゲームに興味はないがこれは面白いことだ。その数値にたる人間を生み出すのだから」

「あくまで根底、最低限の性能ですわ。私か宮野がいれば、このくらいはするのよ。して当然なの」



人は心臓、脳、肺、胃、などの内臓器官。それらを覆い隠し、最終的な形状に至る肌、髪、手、足、積みなど。

本来ならば、ありえないテクノロジーで生存している人間が、別の生物へと生まれ変わることがあっての良いだろうか?


『パラメータの挿入を行います』


プログラミングの処理ではなく、現実として処理されるとしたら人体にかかる負荷はどれだけのことだろう。

形状は人間のままに留めながら、ブルドーザーと変わらぬパワーを所持させるとしたら。

筋肉の繊維、骨密度、皮膚の鋼化。人間の中身を完全に捨てなければならないことだ。


「ぶはあぁっ、あああっっ」

「肉がさけぶびぼぉぉ」


デバッカーの8割はパラメータの挿入で死んでしまう。当初は100%であった死者率も、多大な犠牲を持ってその率を減らしていっている。しかし、調べるべきことは積み上げた犠牲の数よりも、成功率と成功させるための法則の過程、成功の上下解消。ともかく、成功しか求めていない。

まだ生きている人に求めず、生きることを諦めた人や捨てた人に求めた人体実験。



「人のために役に立たなきゃ、更正とは言えないの。死体となるのも貢献よ。成否の出る死ならなおさら貢献度がある」


このデバッカーの募集は世界中にいる監獄の中だけにある。

運が味方し、生き残ったとしても離れることはないデバッカー達。



「お、檻の中に帰らせてくれ!」

「道徳を守れ!お前等!悪魔か!」


極悪人共に疑われるほどの悪行。それが裁かれないことがオカシイと訴えられても、その者は裁かれた存在なのだ。そして、


「人を殺めたり、人達の生き方を変えてきたお前等は囚人だ」


ダーリヤも、酉も、この手のことには変わりようのないこと。そして、多くが望んでいるとこの不幸を謳う。


「お前1人死んでも何も思われないのなら、世界のために犠牲になる人の方がカッコがつくだろう?」


テメェがやれよ、そう叫びたいが。彼等がここにやってきた理由は彼等にある。ただの快楽やその場の気持ちで2人はやっていない。どちらにも確固たる目的があって、手を赤く染めている。その赤色に、2人共気付くことはない。

20年以上前は存在時代が夢だと思われた携帯電話、それらが今となっては当たり前となり、誰しもが持っている。時代の進みと共に人も歩むため、今はその犠牲を尽くしてのこと。人類が強くなるためのα版みたいなテストプレイ中。



「やべっ、やべっ、やびちてくれ」

「大丈夫よ。成功したら少しは生きられるんだから」


鉄道のスピードと馬力を埋め込まれようとする者。彼の身体は徐々に膨れ上がり、人間の体が壊れかけていく。


「凄い!まだ生きられるのね!」


長い時間を掛けて更正させるよりも、短い時間で実験に貢献させてみせる。囚人としては立派な示しである。そして、示し終えると体は爆裂し、汚い骸を実験室全体に撒き散らすのであった。


「酉~。今のでまた少し、法則が掴めてきたぞ」

「そう!さすが、宮野くん!一番頼りにしてるわ」


裁かれない悪がここにある。だが、その悪の認識は世間が悪に辿り着いていないからだ。彼等の技術が完成された時、人類はこぞってその悪を掴む。掴まされる。悪から生まれた、光のテクノロジーと称されるほど。

積み重なった死者の数、失敗の数は普及と共に消え去っていく。彼女達の世界はこうして造られていった。




個人的なことになりますが、


性質の悪い犯罪者への死刑制度や終身刑とかはいりませんから、365日24時間の労働とか。太平洋を縦に横断させるとか。空腹に耐えられなくなるのは何年目なのかとか。時速100キロで走る自動車に跳ねられると、どれだけ身体が裂傷されてしまうのかという実験をさせた方が良いと思うんですよね。



許してやれという気持ちも分からなくはないですが、その個人や被害者、周囲という第三者にとっても、時間と税金の浪費だけで納得するのかな?ってのはあります。失った者を埋めるのは並大抵のことじゃないですし、再発した場合は誰が責任をとるのか?その責任追及や、刑を執行するまで生かすための金と時間、人件費。これも無駄だと思うんですよね。


犯罪者が消えたところで、失った者が帰って来るわけじゃないですけど。居ない方がいいでしょ?彼等に飯を食わせるのも、トイレで排便させるのも、毛布を包んで眠っているのも、私は嫌です。

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