子供が出来ない
「子供は諦めてくださいって…」
「そうか…」
やはりそうだった。
卵巣癌。そう聞いた瞬間、頭の中に浮かんでいた事だし、そもそもNの年齢では子供が出来づらい、場合によっては出来ないかもしれないと話していたからかもしれない。スグに返事をする余裕はあった。
もしかしたら、癌の告白による衝撃が強すぎて、感覚がおかしくなっていたのかもしれない。
「私…Tとの子供が欲しかったよ…」
俺だってそうだ。子供を作って、家族を作って、いっぱい家族で遊んで、互いの実家の両親とも家族で交流して…そんなことを想像してた。
「N…子供はしょうがない。もともと授かりものなんだ。
しょうがない…」
「ゴメンねぇT…」
「バカ…謝るなよ。
心配するな。大丈夫。ずっとそばにいるから。
な?大丈夫。心配するな。」
後は二人でひたすら泣いた。
しばらく泣いて、少し落ち着いたら今後の予定を話あった。
正式な検査結果は一週間程あと。
会社が終わってから行ける時間なので、病院で落ち合うことにする。
互いの両親に伝えるのは結果が出てからにする事にした。
大丈夫、まだ良性の可能性だってある。あえて必要以上に悪く言ったのかもしれない。結果は意外とたいしたこと無いかもしれない。
一緒に僅かな希望を口にし合った。
そうしないと二人共、悲しみに潰されるから。
そして、その夜は二人で抱き合って又泣いて、抱き合いながら眠りについた。
ただただ離れたく無かった。