当日、移動
結局、不安を抱えたまま夜を過ごした。
それでも眠ることが出来たのは助かった。実家の車を使って、荷物を新居に持っていく手筈だったので、眠れていないと車の運転も危険だし体力的にもキツかっただろう。
お袋の作ってくれた朝食を食べ、荷物を車に載せて行く。本当は楽しくて仕方がない作業のハズなのに、心にこびりついた不安がそれを許さない。黙々と作業をしていた。表情も曇っていたと思う。
ただ流石に荷物を積み終えて、自室を整理し終えると、あーこの部屋とお別れか…。と感傷に浸ることは出来た。
出発の時間、お袋は泣きそうな顔で見送ってくれた。元々、子離れがしきれて無い人だから、泣かなかったのは、それはそれで祝福の気持ちがあったからだと思う。
親父は引っ越しの手伝いをして貰うのと、車を運転して帰って貰う為に一緒に新居へ来て貰った。
車の中では親父が、夫婦の間でコノヤロって思うこともある。ちゃんと夫婦で外出しろ。とアドバイスとか、自分達の新婚旅行の話とか色々としてくれた。親父とお袋の昔の話等をこんなに聞いたのは初めてだった。それも、どこか嬉しそうに話してる。
もっと早く、聞いてあげれば良かったかな…
そう後悔したし、又、子供が出来たら俺とNの思い出話を聞かせようと、新しい夢が出来た。
でも、新しい夢が出来ても言いようの無い不安は消える事が無かった。