同居前日
癌になったと婚約者から聞いたのは、同居を始めた初日だった。
以後、婚約者をN、俺はTとする。
告知をされたのは、その前日。
俺は実家に住んでいたから、「その日は独身最後の家族団欒を楽しんで!」とNが言ってくれて、俺はその言葉に甘えた。
検査をすることは知っていたが、まだお互いに最悪は手術するのかな?そうなったら式に間に合うような日に出来るかな?…とその程度に思っていたから、特に深刻には考えていなかった。
家族との夕食を済ませ、自室のベッドで横になっていると、携帯にNから連絡が入った。検査結果が終わったら連絡頂戴と言っていたから、それだ。掛かって来たのは8時過ぎだったと思う。ちょいと遅いなとは思ったが特に深く考えずに出た。
「どうだった?」
普段通りの声で声を掛けたが、Nの様子がおかしい。
「思ってたより時間かかったね。」
「うん、シャワー浴びてたから。落ち着かないし…」
…泣いてる?
どうしたの?何があったの?何度も聞いた。
「T…」
「N…思ってたより酷かったのか?」
「うん…」
「そうか、どんな様子なの?」
「言えない…」
「言えないって…、かえって気になるよ。
どうした?」
「言えない。明日言うから、Tは団欒を楽しんで…」
「でも泣いてるじゃん。
気になるよ!教えて。」
「電話で言えない…
ちゃんと明日言うから…」
「ならこれから行くよ…」
「いい、大丈夫。明日言うから…。
ね?お願い。」
「…」
ただ事では無いのは分かったが、結局俺は折れて、じゃあ明日ちゃんと教えてと言って電話を切るしかなかった。




