第一話 部活作ります
四月四日、天気はあいにくの大雨
これはもはや台風と言ってもいいかもしれない。
木々が今にも倒れそうなほど揺れ、風も容赦なく人々に襲いかかる。
それにもかかわらず暴風警報はおろか大雨洪水警報すらでていなかった。
それは四季が通うことになった光臨高校の入学式が予定通り行われることである。
「ふっ、ワシともあろうものが傘などと言う原始的な道具に頼ったのが間違いじゃった。」「そうだな、傘は俺たちのことを裏切るんだ。」
時代を感じさせる言葉遣いをする青年、紅葉と彼に同意する青年、四季。
光臨高校の校門まで傘をささずに全速力で走っている二人。
なぜ二人が傘をさしていないかというのは簡単である。
家を出てわずか10秒で家に一本しかない貴重な傘が見事に粉砕したのである。
そんな上状況の中、彼らはとてもたくましかった。
「ちょっ、やばい鼻と目に雨が入ってきやがった。」
「何を言っとる、ワシなんてもはや口にまで入ってきとるんじゃぞ」
全く意味のないところで張り合っている二人の姿を見た校門前にいた先生に
入学式早々何バカみたいなことしてるんだと呆れた顔をされた。
二人は運良く同じクラスになれた。
当たり前だが二人とすれ違った人々からは注目を浴びていた。
なにしろ、下駄箱から自分の教室まで水溜まりが出来るほどに水が垂れていた。
まぁ、あの天気の中傘もささず全速力で走っていた代償というところであろう。
四季は髪が口までおりてオールダウン状態。
それとは対照的に紅葉は髪が全て後ろにいきオールバック状態である。
そんな見るからに怪しいビショビショ男二人に誰が話しかけてくるだろうか。
まず、いないであろうそんな物好きは。
四季と紅葉がさっきまでの状況を話していると、ある二人の女子が話しかけてきた。
「あなたたち、多分なんだけど……秋風 紅葉君と一ノ瀬 四季君?」
多分ってなんだよ多分って。
「あぁ、確かにワシは紅葉でこっちが四季じゃが」声をかけられたものの誰だかわからないという顔をして、「……お主ら誰じゃ?」紅葉は首をかしげていた。
「あっ、紹介が遅れましたね。私は春……」
とまで言いかけたところで俺はその声にかぶせた
「「春桜 桃」」
2人の少女は驚いた顔をする。
四季はさらにもう一人の名前も言う。
「そっちのあんたは涼川 恋夏だ」
紅葉は自分だけが知らないのはイヤだという少年によくありがちな顔をして、「四季、お主彼女たちを知っておるのか?」
「紅葉は昨日の記憶がこいつらによって取られてるからわからないのも無理はないな」
その発言に紅葉はいまいち分からないという顔をした。
同時に二人の女子はさっきよりも驚いた顔をした。
「ど……どういうこと?あなたは昨日ハルに記憶をとられたでしょ?」
「そうですよ私があのとき撃ったのは確実に命中してました」
そんな風に焦りすら見せる二人の言葉に俺は笑って、「言っただろ?人の思いでは簡単に消すことはできないって」昨日俺が言った事をそのまま言ってやった。
だが、紅葉は何を言っているのか全くわからない
「四季お主さっきから何を言っておるんじゃ?」
「今のお前に何を言ったってわからないだろ。だから放課後話すよ」
四季はそういうと恋夏とハルの方に体を向ける
紅葉は四季がいった言葉を聞いて、「とりあえず放課後になったら全部教えるんじゃよ~」と自分とは全く関係のない感じに机で寝た。
四季は、紅葉の後ろの席に座り昨日の話でもしようと思ったが恋夏によってそのことを言う必要が無くなった。
「何であなたに記憶があるの?ハルはミスなんてしてないわよ」
「確信犯め、まぁ正直な話俺も以外と危なかったんだ。」何しろといい小さくため息をつき、「いきなり撃たれたもんだからかわすのがキツかったんだぜ」
「どうやってかわしたんですか?」
「教えてやってもいいんだが、とりあえずお前等の秘密でも教えてくれよ。」
四季がそういったとたん無情にもチャイムが鳴った。
そして待ってましたというように担任の梅宮先生が入ってきた。
「早く席に座りなさい。席替え始めるよぉ。あと俺の名前は梅宮 健太郎ねぇ」
は~いというクラスの声が聞こた。
「おっ早いな。まぁいいや、じゃあまた放課後にでも話そう。……ていうか席替え早いだろう!」俺は出席と席替えという言葉を頭の中で換えていたらしい。
「「……放課後ねぇ」」
ハルと恋夏はそういって自分の席に帰っていった。
出席番号1番と2番で並ぶ紅葉と四季のビショビショの姿を見た梅宮先生に笑われ、入学初日からトラウマを抱えることになった。
その梅宮先生の笑いにつられ他の奴らも笑い始める。
(傘さえ壊れなければこんな事には……)心の中で二人はそう呟いた。
席替えはくじ引きによってすぐに行われた。
だがこれは仕組まれたものだったのかもしれない。
四季は窓側の最後尾、夏は涼しい風を独占し授業中寝ていてもばれにくいと定番のであるが、本当は一番先生が目をつけている席になった。
紅葉はその前の席。
そこまでは運がよかったで済まされる。しかし四季の隣に恋夏その前の席にハルときた時点で、あれ?どこかで不正行為が行われたっけ?などと考えてしまった。
「あら、偶然ね四季君に紅葉君」
偶然……だよなぁ?
「……何したんだ?」
「ささっ、さぁね、あたしたちはな~んもしてないわよ」
恋夏は嘘をつくのが苦手らしい、はじめの時点でもうバレバレだった。それに今時こんなにもわかりやすいごまかし方があるのかと思っていた。
「紅葉さんは昨日のこと覚えてないんですか」
「何のことだかさっぱりじゃが、四季には何をしても効かんぞ」
紅葉が興味深いことをいったのでさらに聞き出そうとした恋夏だったが、あれがやってきた。
あれとは入学式を行うための体育館移動だ。
「残念でした~。まぁ放課後集まるんだから気にすることはない」
そういって四季はとっとと行ってしまった。
そのすぐ後ろで恋夏がひどく睨んでいたとも知らずに。
体育館
まず、校長先生の長ったらしい話が実に二十分ほど続いた。
追い打ちをかけるようにPTA会長からの話。さらに生活指導の先生からの話と、約一時間にわたって聞かされた。
運の悪いことに座らせてもらえなかった。
その理由は、
「すみません、着席と言い忘れてしまいました。」という教頭先生のミスが原因であった。
その言葉に生徒たちは殺気立っていた。
そして最後に校歌斉唱、曲が流れたところでどのような歌かはわからない……と言いたかったのだが、○○な天使のテーゼのような感じの曲だったので歌っている人は多かった。
ただし歌詞がいろいろ混ざり合っていたが。
そんなこんなで入学式がようやく終わった。
式中になにやら俺のクラスではもめ事があったらしいが、すぐに終わったらしいので特に気にはしなかった。
そんなのも含めて入学式はもしかしたら光臨高校の入学式という意味でなく、これから始まる面白い事への入学式だったのかもしれない。
入学式が終わって各自は自分の教室に戻り明日からの予定と自己紹介をしてその日の授業は終わった。
そして放課後……
「四季、もう帰るじゃろ!」
式の最中もぐっすりおねむだった紅葉は妙にテンションが高かった。
だが、放課後のことを何も覚えていないらしい、さっき話があると言ったのにと四季とハルと恋夏の三人は思った。
「忘れてるわよねぇ紅葉君?」
はぁ、っとため息をつきながら言った恋夏の顔は何処か疲れが見られた。
「……あっ。忘れてなんていないんじゃ、ただちょっと冗談をじゃなぁ」
「紅葉、今のあっ。はなんだよ?」
「くっ、さすが四季じゃのう。ワシの嘘を見破るとは!」
「「「誰でもわかるからそんな見え透いた嘘」」」
三人は同時につっこんだ。そのときのツッコミはまるで打ち合わせをしたかのように息が合っていてかつ紅葉に精神的ショックを5ダメージほど与えた。
「うっ、痛いところを突いてきたのう。で、話って何じゃ?」
こいつ開き直りやがった!
「あっそうでしたね。ではお聞きします。四季さんにはどうして昨日の記憶があるんですか?」
ど真ん中ストレート。昨日の記憶のない紅葉が入れない空気を一瞬で作り出してしまった。
「そうよ!あっちゃいけない記憶が何であんたにあるのよ?」
恋夏がそういったとたん四季は大きなため息をつく。
そして何も言わずに恋夏の手を握る。
「ちょっ、な、何してんのよあんた?」
急に手を握られた事により驚きと恥ずかしさで恋夏の顔がみるみる赤くなっていく。
だが四季の次の言葉で、紅葉は彼がこれから何かをしようとしているということがわかった
「紅葉、ハルの手を……そして紅葉は俺の肩に手を乗せろ。」
「お主あれをやるきじゃな?」
そういって紅葉は四季に言われたとおりに行動をとる。
「ちょっ、あれって何よ?あたしたちにもわかるように説明しなさいよ」
「この力は説明しにくいんだ、なぜなら現実性がないからな。……だからその体に教え込んでやる」
四季はそういうと右目を親指、人差し指、中指で押さえる。
そして小さく息を吸い、「タイム・アイ」
次の瞬間辺りが急に暗くなった、ある漫画であれば○龍が出てくるのだがそこではそんなことがない。代わりに、さっきまでいた教室が音や光からかけ離れたものになっていると気づいた。
四季は自分の右目を押さえながら自分の席の机に座る。
「えっ、ちょっとあんたハルと紅葉君はどうして動かないの?っていうか何でこんなに暗いの!」
「いろんな事を一度に言わないでくれるとありがたいんだが……」
一度に複数の質問攻めにより四季はどれから答えようか迷っていた。
そしてその質問のうちの一つに答えようとしたとき有る事に気づく。
いや、もっと前に気づけたと思うのだが……
“ハルと紅葉が動かない”
「どうしたのよ?何か言いたいことでもあんの?」
「紅葉のバカが俺の方しっかりつかんでなかったからここで動けないんだよ」
恋夏も自分の机に腰を下ろしながら今、四季が言ったことについて尋ねた
「どういうこと?あんたが故意に動かさないんじゃないの?」
「ちげぇよ、俺はいつからそんな意地悪になったんだよ。っていうかこの状況で俺が紅葉を動かさないなんてよく分かったね」
一応紅葉が俺に“あれをやるんじゃな”といっていたので俺の力である事は簡単に予想できた。それなのに恋夏は、
「えっ、やっぱりこれってあなたの力なの?」
あたしってすごい?と得意げな顔の恋夏を無視しながら話を進めていく
「あぁ、ここは俺の右目。タイム・アイによって固定された世界、ここでの出来事は現実世界には全く影響されない。」つまりと言い次の言葉を紡ぐ。「ものを壊す事はおろか動かす事も出来ないんだ。」
俺が椅子に座らず机に座ったのはそういう理由もある。
「昨日もこれを使ったの?」
「昨日は、今日とは違って時の流れを遅くしただけなんだけどね。今はわかりやすく言えば時間を止めたんだ。俺の能力が分かったところで恋夏の能力も教えてくれない?」
そういって四季は脅すように笑った。
よくよく考えると、今動く事ができるのは四季と恋夏しかいないので、誰も助けにきてくれないだろう。
そして二人だけということは何をされるかわからない。という事は、あたしもしかして大変な事されて……」
「しないからね。全く、心の中の声は口に出して言わないでくれ。おかげで俺、今ものすごい変態になりかけてたろ?」
心を読まれた!という顔をした恋夏だがおもいっきり自分から暴露していた。恋夏はさっきと同じように顔をみるみる赤く染めていく。
「で?恋夏はどんな力があるの?」
はそんな恋夏を小動物を見るような顔をして本題を切り出す。
「なんだと思う?」
なんだかいじめっ子のような顔をして言う恋夏は軽くイラッとした。
「超能力者、しかもかなり強い」
即答!そして答えは
「……当たりです」
まさか一発で当たってしまうなんて……恋夏は今の質問が解けると思っていないらしく涙目になっていた。
戸惑いを隠せない四季はとりあえず慰めようとする。
「んから始まる国があるって知ってる?」この時点で慰めることに失敗していた。
「は?」
当たり前の反応をする恋夏に少しショボっとしながら
「ンジャメナ共和国っていうん……ごめん俺無神経すぎた」
四季が恋夏よりも落ち込んだ瞬間だった。
そんな四季がおもしろくて恋夏が笑った。
はじめは同情してくれてるのかと俺は思ったが、心から笑ってくれているとわかって四季も元気を取り戻す。
「ところであんたどうしてあたしが超能力者ってわかったの?」
目をこすり、涙をぬぐいながら恋夏は聞いてきた。
「だって昨日飛ぶときに足が赤く光ってたじゃん。力使うときは多分あぁなるんだと思うんだけどあってる?」
「漫画の読み過ぎよ。でも合ってるわ。」
俺はそんなに漫画は読まないのだが……
「あとハルは一般人だろ。」
自信満々に答える四季に少し嬉しそうに恋夏は言った
「残念。でも惜しいわねっていうよりあたしに気を遣ってるでしょ?」
さっきの事もあり俺が気を遣っていると恋夏は考えていた。
「ばれたかぁ、でもぶっちゃけこれは信じたくなかったんだ」
「私は別に気にしなくていいからとっとと答え言っちゃいなさい」
恋夏が俺に答えを迫る。仕方ない答えてやるか!
「ハルは未来から来た人型ロボットだろ?」
「うん!正か…って違うわよ!あの子は未来から来てないしましてやロボットでもないわよ」
途中まで本気で正解だと思い込み、自信たっぷりだった四季の心ははまるでベルリンの壁のごとく崩壊した。
「なっ、違うのか?まさか猫型でしたとか?」
「危険なネタはやめなさい!とにかくロボットという概念から外れなさいよ」
もはや出題者と解答者という関係からボケとツッコみという関係に変わってきていた。
「だってハルは記憶の消去をやってのけたじゃないか、あれは未来のアイテムとしか思えないんだ」
だってそうだろ?紅葉の記憶を消したんだぜ?この時代じゃそんな事出来ないだろ。
「残念ね、私の力は見抜けてもあの子は無理だったようね」
ついに勝てたという顔をした恋夏が嬉しそうに言った。
「答え教えてくれ」
「超が2つつく程の天才発明家なのハルは!」
……なんだろうこの気持ち、拍子抜けというかなんというか。
俺は恋夏の言った回答に納得いかなかった。
「……インパクト薄いなぁ。やっぱり人型ロボットにぃぃぃぃぃってちょい待ち何この体を締め上げられるこの感覚はぁぁっぁ」
四季が人型ロボットと言った瞬間に体に激痛が走るどうやら恋夏が何かしているらしい。
彼女の方を見ると右手がぼんやり赤く光っている。
あぁ、これが超能力かと四季は納得した。そして痛みを全く感じなていないようなそぶりを見せる
「どう?あたしのサイキは?」
サイキとはサイコキネシスの省略形らしい。いい具合に省略したものだと感心しながら四季は体に力を込める。次の瞬間ブチッっという何かが切れた音がする。
「えっ?あんた今何したの?あたしのサイキが破られるなんて」
恋夏は驚いた。おそらく今日まで一度もサイキが破られることなどなかったであろう。
いや、これから先もそんな日は訪れることはないと思っていた恋夏にとって今のサイキ破りは非常に堪えたはずである。
「ワリィな、俺にはサイキとやらはそんなに効かないらしい」
そういって四季は右手を強く握りゆっくりと手を広げる。
手の中にはビー玉ぐらいの黒い玉があった
「何……それ?」
得体の知れないものに警戒しつつ恋夏はそれについて尋ねる
「お前だな?四季に攻撃してきたのは?」
聞き覚えのない声に当たりを見渡すが誰もいない。その声は、四季の手の中にある黒い物体からのものだった。
「四季、オイラ竜の姿になっていい?」
「いいよ、ただし恋夏をあんま脅かすなよ?」
「うん!」
四季の忠告に元気よく答えその黒い物体は姿を変えていく
グチュッグチュッとまるで何かの肉を引きちぎるような気持ちの悪い音が教室に鳴り響く。そして黒い物体がいつの間にか体長2メートル近くある竜になった。
「くかぁ、やっぱこの姿が一番だよねぇ四季?」
いかにも眠そうにしている先ほどの黒い物体はどうやら四季や恋夏をどうこうするわけではないらしい
「紹介が遅れたな。こいつの名前は黒龍紅。3年前の爆弾テロの時にあったんだ」
「えっ、それって犯人が体に爆弾巻いて走り回ってたってやつ?」
「ちょっと、っていうかだいぶ内容が違うけどまぁ爆弾テロなんていったらその事件だよ」
内容が全く違う二つの話なのによく話していけるなぁと黒龍紅は感心していた。
でも黒龍紅は話しについていけなくなり暇になったので少し恋夏をからかってみることにした。
「四季~こいつ食べていいの?」
初めてその言葉を聞いた人がどうなるか分かるだろ?
「だめにきまってんだろつうかやったとたん幻想眼使うからな?」
タイム・アイとは別の眼の名前に恋夏は反応した。
「幻想眼って何なの?」
「オイラをふぐっ……」
そこまで言ったところで黒龍紅は四季に口を閉ざされた
「何でもない、今言えることはいつかみんなにも見せる機会があるって事。」
「何よそれ?」
ふてくされたように言う恋夏に面白いものを見せようと四季は黒龍紅にあることを要求した。
「わかった、じゃあいくよ」
そういうとまたグチュッグチュっと言う音を立て今度は手のひらサイズの鳥の形になった。
「何にでもなれるの黒ちゃんって?」
「何にでもなれるよ。黒ちゃんってもしかしてオイラのこと?」
赤い眼をきらきらさせて聞いてくる黒龍紅に恋夏はうんっと答えた。
そのとき、四季にある異変が起きていると恋夏は気づいた。
「あんた眼から血が出てるわよ!」
「ふぇ?……あっやべっ」
そういって四季は持っていたハンカチで眼を押さえ始めた
「どうしたの?」
右眼から出る出血をハンカチで抑えながら、「もう時間切れなんだ」
「何が?」
「止まっていた時間が動き出すってこと。俺たちには何の影響もないから問題はない」
そういうとまるでダイアモンドダストのようなきれいな輝きを見せ辺りは明るくなった。
「四季!早く行かんと時間がなくなってしまうじゃろう」
紅葉が普通に動いている、時間の動く教室に戻って来れたとわかった。
四季は紅葉を哀れみの目で見た。
「もしかしてもう行っちまったんじゃないだろうのう?」
「あぁ、どっかの誰かさんが俺の肩をしっかり掴んでなかったからもう行ってきちゃったんだよねぇ」
顔は笑っているものの四季は怒っていた。なにしろ紅葉に忠告として、しっかり肩を掴んでいろと言ったのにもかかわらず掴んでいなかったので当たり前と言えば当たり前だ。
おかげで一回ですむ説明をもう一度しなくてはいけなくなってしまったのだから。
「四季さん、もしかして何かしてたんですか?」
ハルが不思議そうな顔をしてみている。今さっきまで四季と行動をともにしていた恋夏はそんなハルに、今あったことはあとでまた教えてあげるからっと言いながらハルの方に歩いていく。
「うん、わかった。それですごかった?四季さんの力って?」
あれ?今あたしあとで話すって言わなかったけ?などと恋夏は考えていたがそれが通用しそうになかったので少しだけさっきの話をした。
「ってわけこいつものすごい奴だったのよ」
「もうお互い他人って訳じゃないんだから名前で呼んでくれよ」
未だに右目を押さえながら話す俺を見て恋夏は少しションボリした。
「ごめん、四季君」
「そういえば自己紹介をしていなかったんで今しませんか?」
俺たちのクラスでは自己紹介の時間がもうけられなくまだ名前の知らない生徒がたくさんいた。
「そのことなんだけど、紅葉君の記憶を元に戻してあげてくれないハル?」
「えっ?いいの」
せっかく消した記憶をまた元に戻すと聞きハルは驚きを隠せなかった。
「やはりワシは記憶を失っているんじゃな?」
「記憶を戻してくれるっていうんだから俺からは何も説明はしないぞ」
そう俺が言ったとたん後ろからカチャカチャと機械音がした。
そこにはハルがいた。
「三、四分で記憶の復元マシーンを作りますから少しの間待ってて下さい」
紅葉はその光景を楽しそうに見ていた。
まるで、幼稚園生が自分が初めて見るものを見るあのキラキラした目をしている。
そんな光景に俺は声をかけても無駄なんだろうなぁなどと考え同じ状況に立たされている恋夏と話をし始めた。
「何で急に紅葉の記憶を戻そうなんて考えたんだ?」
「だって、あんな事があったから紅葉君にも何かありそうで怖かったんだもん」
やはりあんな事があったからには怖がるのはあたりまえであった。
「悪かったね怖がらせちゃって」
「いえ、もう怖くないから大丈夫よ」
「それはよかった。あと、紅葉にも力っていうかやばいものがあるんだよ」
「どんな力なの?」
「それは言えない。あとそのことを紅葉には絶対に言うなよ。」
これは秘密とかではなく忠告または警告のようなものだと瞬時に恋夏は理解した。
「どうして?」
「俺、前死にかけたんだよ紅葉と初めてあったとき」
危険な会話をさらっと言い出した。
俺はそのとき左肩を押さえた。もしかしたら今の話と関係があるのかと思ったのだが聞いちゃいけないことなのだと悟って聞けなかった。
「あっそういえばタイムアイについてもっと教えてくれない?」
「ん?いいよ。簡単な説明でいい?」
複雑な説明はめんどくさいので、簡単な者だけを抜粋させてもらう事にした。
「うん、それでいいわ」
「タイムアイは、時間を止めたり時間の流れを自由に操れるんだ。ただし巻き戻しはできない」
「ってことは時間をゆっくり進めたり早くすることはできるけど、過去に行くことはできないって事?」
「そういうこと、でも残念ながら時間を早めることはできないのさ」
できそうでできない事が意外と合ったのに恋夏は驚いた。
「おまけに、24時間に2回しかできない。そして止められる時間は長くて5分といったところか」
「それだけあれば十分じゃない?あと3回目はどうなるの?」
「3回目を発動させると、1週間動けなくなる」
1回目と2回目を比べると随分重いリスクになってしまった。
1回目と2回目ってなんか四季に甘くない?ツンデレとはもしかしてこれの事を言うのではないかと密かに思ったがどうやらこれも言葉に出していたらしい。
「いや、そのツンデレ俺に対してひどいなんてもんじゃないでしょ?」
「あなた心を読めるのねやっぱり?」
「……いい加減学習してくれ!言葉に出てるんだよ!!」
「えっ……」
「なんだよその告白された女子のような反応は!」
「そんな反応してないでしょ!?」
ブンブンと首を横に振り否定の言葉を言う
「そうだな、ちょっと待って目が疲れてきた」
そう言ってもう出血が止まった右目を四季が押さえる
恋夏はそういえば昨日のタイムアイを合わせてもう2回使ってるんだなぁと思った。
そうとすれば今、四季はよっぽどの事がない限りタイムアイを使う事がなくなる。
「目から血が出るのは副作用なんだ、俺には痛みがないから血が出てるかがわからないんだ。」
恋夏は今考えていた事がまた言葉に出ているのかと思いビクッとしたがどうやら違ったらしい。
「あっ、えっと、だから四季君出血に気づかなかったのね?」
謎が解けた探偵のような顔をして恋夏はうなずいた。
恋夏の話し方に少し疑問を持った四季だったがここで○パネットタカタの店長のような高いテンションで話し始める
「そしてここからが重要なんだ!」
「えっ、なになに?」
どっかの悪徳商法にかかっているみたいな会話の流れになってきている。
「タイムアイは発動しても俺が触れているものしか動かない!」
「へぇ~それで~」
幼稚園生が絵本の読み聞かせの時にするリアクションをありがとう。
「机とかいすは止まっているから壊す事も動かす事も出来ないんだ!」
「それがどうしたの?」
今度は随分と冷めちまったなぁ、もしかしてもう話に飽きてきたか。
「分かってないなぁ。つまり、豆腐やこんにゃくだってタイムアイの発動中は切る事が出来ないんだ!」
「!なんかよく分からないけど分かったわ」
「えっ?それどっちだよ」
全く、そんな反応されると分かってんだか分かってないんだかがよく分からない。ってまさかの分からないの4段法とはこのことだ!ここテスト出るから覚えておきなさい!
とは言ったものの四季には言わなくてはいけない重要な事があったためタイムアイの説明はここまでにした。
「あと黒龍紅のことはまだあの二人には秘密しといてくれない」
「どうして?」
「それは言えないんだけど、今はまだ言えない。だからさっきハルにいろいろ話してたときに黒龍紅のこと言っちゃうかドキドキしてたんだ。」
「そういえばあたしハルに黒ちゃんのこと言ってなかったわね。っていうか黒ちゃんさっき見えてたんじゃないの?」
「それはないよ、俺が姿が見えないようにしてたから」
「ってことはそこら辺に今もいるの?」
「オイラはここだよ~~」
いきなり声が聞こえてびくっとした恋夏だったがそれが誰の声かわかったのですぐに冷静になった。
「ばか!お前紅葉いるんだから体入ってろ」
「ちぇっ、もうちょい外にいたかったんだけどなぁ」
グチュグチュと音を立て黒い玉が現れた。
「じゃあねなっちゃん。また今度会おうね」
そういって黒龍紅は四季の体の中に入っていく。そのとき四季の顔がこわばっていくそれは黒龍紅が体に入っていった事によるものであった。
「ふぅ、やっぱりきついなぁ」額に汗を滲ませる四季を心配して恋夏が声をかける
「どういうこと?」
だがその言葉はあの二人によって消されることになってしまう
「「できた~~~」」
どうやらハルの作っていた記憶修正マシーンとやらが完成したらしい。
そして、紅葉が四季を見ていた。直感で四季は顔をそらす。
四季の予想は当たっていた。なぜなら猛ダッシュで黒板から四季の席までってきた。
そして肩を掴み大きく揺らす
「四季ようやくワシの記憶が戻るんじゃすごくね?すごすぎて何も言えんじゃろ?」
「ちょい待て、そんなに揺らすな軽くよっちまう」
「ワシの記憶が戻ったらどんなすごいことになるんじゃろう」
昨日の紅葉といえばただナンパをして、その後ボーリングですべてガーターという悲惨な結果を残した記憶である。
普通は思い出したくない悪い記憶なのだがそのことを覚えていない紅葉としてはおもいだしたいのだろうなぁと考えていた四季だが今はそれどころではなかった。
なにしろ、紅葉の肩ゆらしが予想外にきつかった。
「四季~ワシの記憶が」
「うるせぇ!とりあえず俺の話を聞け!」
強引に振り切ってはみたものの四季には残念な結末しか待っていなかった。まずはじめに強く振り切ったために勢いがつきすぎた四季の体はそのまま頭を机に打ち付けた。そして追い打ちをかけるように床にも頭と腰を打ち付けた。
何とも声にしがたいものが響いた
言葉にできないというものは言葉以前に声が出せないというものだったのであろう。
こうして四季はまた一つ重要なことを学んだのである。
「いってぇ!何この無駄にいたい痛みの提供はこんなの絶対にもうけることなんてできないぞ」
床を無駄に転がり痛みを和らげようとしたがそれが命取りだった。
机に膝を思いっきり打ち付けた。
紅葉たちは四季が何をしたいのかもう分からなくなって哀れみの目で見つめている。
その視線に気づいた四季は何事もなかったかのように自分の机に座った。
「さて、紅葉の記憶を戻してもらおうか」
「四季、お主随分と開き直りがはや」
パンッ
乾いた発砲音が鳴り響く。その音とともに紅葉も倒れる。
「なっ、誰だ!」
「ちょっ、紅葉君?」
「紅葉さん大丈夫ですか?」
みんな紅葉のことを心配して集まってくるが、一人だけ心配してないものがいた。
「ねぇハル……あなたが持ってるその拳銃は何?」
右手に持っている黒い拳銃を振りながら「えっ、紅葉さんに撃ったんです」
「お前かよ!っていうかも紅葉マジで起きんのかこれ?」
「平気じゃよ。と言うよりも撃つなら撃つと言ってほしかったもんなのじゃがのう」
紅葉が復活した
「よかった、よかった意外と心配したんだぜ紅葉?」
「悪かったのう四季」
「……紅葉君さっきとなんて言うか雰囲気がちがくない?」
そういわれてみれば少し元気があふれているというか明るくなったというか。
いや、正確には上半身から上がさっきまでとは変わっている気がするのだが……
「「「あっ!!!」」」
紅葉以外の三人がついに異変に気づく
「何じゃ?ワシの記憶が戻ったってこれってひどい記憶だったんだな」
「紅葉、お前髪が!」
「かみ?あぁ神様の事ね。確かに今のワシなら神様に一番近い存在だと思うのだがねぇ」
記憶が戻った程度で何を調子に乗っているのだか。
だが、今はそんなことを言っている暇がなかった。
「紅葉さんすみません。髪の色が」そういいながらもハルは口を押さえていた。
「へ?なんのことじ…あぁ~~~~!!!」
そう紅葉は変わっていたのだ。髪の色が黒から茶色になっている。
「まぁしかたないじゃろ、こうなってしまったのもきっとなんかの縁じゃ」
実に前向きな考えだっが当の本人も気になることがあった。
「これって6ヶ月ぐらいで髪切れば元に戻るんじゃろ?」
「残念ながら遺伝子レベルでの組み替えなので絶対に髪の色が戻ることはありません」
あれ、なんか笑ってない?そしてどこか喜んでない?
「ワシは一生この髪の色なのじゃな。まぁ髪を染めたかったから別にいいんじゃけどな」
お前は頼もしいよ
「っていうかハルのドジも直らないわねぇ」
「それは言わない約束でしょ?なっちゃん。私だって一生懸命なんだから」
と言ったところでハルは涙目になる。
「どうしたんじゃ?」
「だって、私のせいでひっく紅葉さんの髪がうぅぇぇぇぇん」
泣き出してしまった。
「さっきもいったんじゃがワシは気にしてはおらんよ」
「あ、っそうですか?よかった~」
あれ?反省という言葉が見あたらないように感じるのは気のせいかなぁ。
ハルはあっ、じゃあちょっと……といって、「疲れたんで座らせてもらいます。」そういって自分の席に座った。
「「「おい!!」」」
軽く三人でつっこんだところでそれぞれの席に座る。
だが俺は机に座るのが好きなのでジャンプをして机に座る。
そのとたん机が大きく揺れる危なく落ちそうになった。
だが机の上に座るというところだけは譲れないらしく、普通に机に座ることにした。
外を見るともう雨はやんでいた。
窓からは明るい日差しが差し込んでいた紅葉と四季は朝ビショビショになったブレザーを日当たりの一番いいところに乾かしに行く。
ついでに四季は眩しすぎる明かりを遮断するためにカーテンを閉める。
そしてさっきとは違いゆつくりと机に座る。
かすかに開いている窓から春風が気持ちよく流れてくる。
そんな風を感じながらしばし休憩を取る。
いや、休憩と言うよりもお互いに何を話すかが分からなくなっていた。
さっきまでの時間が嘘のように沈黙が続く。
時間とは不思議なものである。楽しいときは時間が流れるのが早く感じるものである。
そして、退屈なときなどは時間がたつのが遅く感じるものである。
言っては悪いが授業中などがいい例である。まぁ寝てしまっている生徒としてはこの時間はすぐにたってしまうのであろう。
そのようなのも含めて、時間は皆平等に流れるのだろう。
そんな老後に考えるようなことを高校生という若さで四季は悩んでいた。
「ねぇ、ねぇってばぁ」
時間の流れを考えていた四季に恋夏が声をかけてきた
「ん、あぁワリィ。んでどうしたの?」
「みんなは中学の時何やってたのかなぁっておもったのよ」
ナイスタイミングだった。このタイミングできてくれるとはなんていい子なんだ。
「ワシは剣道部、柔道部、ボクシング部の3つを掛け持ちしておったんじゃ。」
格闘技系統をほとんどコンプリートしていた。戦ったらものすごく強いんだろうなぁ。
「四季さんは何に入ってたんですか?」
いいずらそうに、「俺は何にも入ってなかったんだよ」と笑いながら言った。
「四季は趣味がものすごくあったんだ」
「どんな趣味があったの?」
さっきと違いそのことを誇らしく、「楽器系は何でもできるあとは弓道、アメリカで拳銃の練習をしていた。スポーツは何でもできるよ」スポーツマン顔負けの運動神経とバンドマン顔負けの音楽線すっを俺は兼ね備えている。
そんな俺にみんな唖然としたが、恋夏はいち早くおれに声を掛けてきた。
「すごっ!何でそんなにやってるの?」
「やらなくちゃ体力がやばいことになっちゃうだろ?」
確かにそうだ。部活もやらない自主トレもやらないでは将来ニートになるか思いっきり太って養豚場に送られるかのどちらかだ。
「四季さんは今も何かやっているんですか?」
腰まである桃色の髪を後ろで結びながらハルは聞いてくる
「今はひたすら銃の練習だよ」
物騒な……銃刀法違反というものに軽く引っかかっているのだがみんな気にしていなかった。
「ワシとの戦いのためか?」
「お前と戦うときは刀と銃の二つじゃなくちゃ勝てないからな」
「いいのう、また今度戦うとしようかのう」
「あぁ、お前もあの力でこい~~~~~たい力で俺の体が締め上げられている」
言うまでもなく恋夏のサイキである。
「何でみんなで楽しく話してる最中でよく分からない会話を混ぜるのよ」
「だだだだだだ今あいつ寝てるからもろに俺の体がぁ~~~」
どうやら黒龍紅が寝ているときはもろにダメージを食らってくれているらしい。
これはチャンスとばかりにめいいっぱい力を込める。
四季の目が白目になっていく。
「四季?お主どうしたんじゃ?」
「何でもないわよ、あたしは何も知りません」
荒だ銃のあらゆる箇所を押さえながら、「とぼけんなよ全く」と痛みを感じさせないそぶりを見せる。
恋夏はサイキはがきかなくなったので黒龍紅が起きたと理解する。
「ちぇっもう起きちゃったのね?」
「ヘタいくと俺今死んじゃってたもん」
「なっちゃん、人にサイキなんてやっちゃだめでしょ?」
四季を心配してか恋夏を注意するハル。だが顔はとってもがっかりしている。
Sなのかな。
「さて、とりあえず話を戻そう。恋夏は中学のとき何かやってたの?」
「あたしは、軽音楽部でギターボーカルをやってたの」
「おっいいねぇ今度俺と一曲やってみないか?」
「あっそれいいねぇ。でもどうせならみんなでやろうよ」
盛り上がっていく二人だがそれが限りなく大変な事だと知る。
「やるのはいいんじゃがワシは楽器など何もできんのじゃが」
「私もリコーダーくらいしかできないいんですけど」
「よし!じゃあハルはリコーダーで紅葉はボーカルにしよう」
えっ本当にそれでいいの?そんなことしているバンドの方なんて見た事ないんですけどという顔をする四季以外の三人をよそに次の質問へと移る。
「ハルは中学の時に何をやってたの?」
そのとたんハルの目がさっきまでと別物に変わった。
なんというか目が輝いている。
「はい!電子工学部に!」
「「やっぱりな」」
四季と紅葉は顔を見合わせてうなずく
あの発明力からいって第一に電子工学部その次の可能性としてコンピューター研究部であろう。
いや、帰宅部によりいわゆる研究所で発明というのも考えられた。
しかし、帰宅部以外にさっきのような記憶修復マシーンなどを作る機会があるのだろうか。いや、まずないであろうそんな事は。
「電子工学部ではどんなものを作ってたんじゃ?」
「私はタイムマシーン、○ケコプター、若返りの薬、ラジコンカーなどを作ってました」
あれ?現代科学で作る事ができないものが三つもある、そして最後のラジコンカーも間違いなく何かあるだろう。
「はい、ちょっと待って~今俺つっこむところが4っつ近く見つけちゃったよ」
「えっ?私何かおかしい事言ってましたか?」
とぼけるなよ、間違いなく作れないものがたくさんあるだろう。
「さて、一つ目はタイムマシーンだ。どうやって作って今どうした」
「あっ、それは」
もしかして作れなかった?見栄張っちゃった?かわいい奴だなあ
「過去に行ってかえって来れなくなっちゃった人が1人いたんです」
やばい、笑い事じゃなかった。
こいつ殺人犯だ、できれば今すぐに自首してほしい
だが、タイムマシーン作ったら知り合いが1人帰ってこなくなっちゃたんです。
なんて言っても頭がおかしい人と勘違いされてそれで終わってしまうだろう。
「でも俺はそんな事件テレビでも新聞でも効いた事がないんだけど」
「実は偉い人にその発表をしたらタイムマシーン取られちゃったんです」
あぁもうこの子は警戒心というものがないのか、そんなものが取られてしまったらどうなるのか分かったものじゃない。
「それでどうしたんじゃ?」
「一方通行にしたんです。」
さっきと違い目を本気にしているハルに対して俺も真剣に、「どういう事だ?」
「私頭いいですからねぇ、行ったら帰って来れなくしちゃったんです」
軽い自慢話が出ている気もしたが、なんか複雑な問題が巡っていた。
「えぇっとそれはつまり帰ったらもうこの時代には戻れなくしちゃったって事で合ってる?」
「はい、白亜紀の恐竜がたくさんいる時代にしか行けないように設定したんで絶対に……絶対に帰って来れないんです」
「その偉い人に何か恨みでもあるの?」
明らかに殺意を持っているハルに恐る恐る四季は聞いてみる。
「な~んにも」
笑顔になったハルだが絶対に恨みがあるであろうとここにいるみんなが分かった。
「そのときはワシの時みたいに失敗してなかったのか?」
「ハルは人の命に関わる事に関しては失敗はしないわ」
さっきの事を思い出して泣きそうになるハルの代わりに恋夏が答えた
「それはどういう事だ?」
「それは私から説明します。私はどうでもいい事に関しては本気で作っても何処か失敗してしまうんですが重要な事に関してはミスなんてしないのです」
自信満々に言っているものの紅葉の髪は茶色くなっている。
「何で紅葉のはミスったの」
「記憶修正は植物人間になる可能性があったんで失敗はありませんでした」
と言う事は成功していたのか?もしかして紅葉は元々髪が茶色かったから本当の色に戻ったという事だったのであろうか?と思い俺はいくつかの可能性を脳裏に宿し、「髪は何で失敗したのハル?」
「えっ、だってそんな重要じゃないでしょ?」
はい、俺の脳裏での考えは前言撤回!
「おいおいおいおい!ワシの髪など何でもないのか?」
「あっ、じゃあ今の話はなしにしてください」
「「「……………」」」
皆さんもご一緒に
「「「何じゃそりゃ~~~~」」」
気を取り直していこう
「さて次のツッコミといこう、○ケコプターって何だよ」
「えっ?知りませんか?頭につけて空を飛ぶんです」
「それは知ってるのじゃがそれを実際にやるとなると普通は出来んのではないんか?」
「でもあれは失敗作です」
悲しそうな顔をするハルだが一体どんな事をミスったのだろう。
飛んでいるときに落ちたりしたら命の危険ではないか。これは失敗などしないと思っていたのだが。
「実は首の骨がグキっていっちゃって大変な事になっちゃたんです」
飛ぶ以前であった。俺と紅葉は笑っていたが約1名怒りに震えたものがいた。
「それは誰の首がそうなっちゃたんだっけハルちゃん?」
恋夏が怖いまるで何かに恨みがあるようにまさかその首って
「うん、なっちゃんの首だよ」
笑顔になるハルそして怒りの形相を浮かべる恋夏。
数学で言うと反比例である。学校の教師もこのくらいわかりやすい例であげてくれると内容もすぐに分かりいいのだが。
「今あの物体はどうしているんだっけ?」
恋夏さ~ん○ケコプターですよーといえる人は誰もいなかった
「うぅぅぅぅ、今は私の机の引き出しに大事に保管してあります。 なっちゃんが首ひねったときの写真と一緒に」
最後に聞いてはいけないセリフが聞こえた。
その瞬間恋夏が消えた。そして2、3分後に帰ってきた。
その手にはなにやらビリビリになった写真らしきものが握られていた。
「ハル、ちょっとあなたのお家にお邪魔させてもらったわ」
「うん、何をしてたかは聞かないであげるね。どうせまだ写真はあるし」
「あとでその場所も教えなさい!」
怖い!怖いから!それは写真を奪うだけでなく家を燃やしかねないのではないか
「○ケコプターはどうしたのなっちゃん?」
「机の上に置いて置いたわ」
そんな物騒なものを見えるところに置かないでほしいものである。
「間違えて私が使ったらどうするのなっちゃん?」
いや、使ったらどうなるか分かるのだから普通は使わないであろう。
「使わないじゃろう?」
「すごい私は使っちゃうんです。っていうよりも研究心が……」
なんかハァハァ言い出してきたハルに恐怖を覚えてきた四季は逃げるように次の話題栄光とした
「もうその話は俺ついていけないから次のツッコミに入っていいか?」
「えっ、それは別にいいですがつっこむところなんてあったんですか?」
「ああ、若返りの薬って何だよ!」
「それってツッコミの部類に入っちゃうんですね。まぁそれは中学の先生が作ってほしいっていうので試しに作ってみたんです。」
なにその朝ご飯は卵焼きがいいなぁと言われたお母さんがしょうがないわねぇと言って作ってしまうようなノリは。
そんなノリで若返りの薬など作れてしまうのであろうか、いや作れるわけがない。
そんなことしてしまったら高齢化社会など存在しなくなってしまうではないか。
「結果はどうなったんじゃ?」
机に手をかけピョンピョン跳びながら紅葉は聞いた
「はい!60歳の独身男性杉谷 由輝先生が25歳まで若返ったんです」
杉谷先生の個人情報の一部をさらっと暴露したにもかかわらず、私いいことしたんです!という満面の笑みを浮かべるハルだが、絶対にやってはいけない人の死期を変えるような事をしてしまっている。
「杉谷先生は今どうしているんだ?」
先ほど人に流れる時について考えていた四季にとって今の話はだいぶ気になった。
若返るというのはつまり、その分の寿命も戻ってしまうのだろうか。
事故で死ぬわけでもない不治の病で死ぬわけでもない。他の何者でもない寿命というものはそもそもそんな簡単に変えてしまっていいのだろうか。
「その先生は今自分のやりたかった職業に就きました」
「第二の人生って奴よ四季君」
「その人の寿命はどうなっちまったんだ?」
恐る恐る聞いてみた
「それは60歳の時と同様の寿命です」
「若返っても60歳以上生きるって事か?」
「いいえ、若返る前の寿命と一緒という事です」
「よく分からないんじゃが」
「ですから杉谷先生が60歳の時25歳に若返ったら、第一の人生の残った寿命までしか生きられないって事です!」
よく分からないという人が多いと思うのでここで軽く補足説明でもしておこう。
~四季先生の早わかり寿命計算~
つまり80歳までの寿命だった人がいるとするね?
そして70歳の時に若返っても寿命の残りは80ー70で10年!
若返って25歳になったとして残り十年分の寿命つまり35歳までしか生きられないということにのだ!
大分ややこしい四季先生の説明でした。
さて、その事はどうやって知ったのでしょう?
「それが分かるって事は杉谷先生はもう」
その質問が何を意味するか、そしてその答えを聞く覚悟が出来た。
「はい、実は杉谷先生は……今は元気に柔道選手をやってます」
あれ答えが違くない?
あの話の重さと四季の質問からいっては悪いがその先生とやらはお亡くなりになっていたものと考えていた。
「生きてたんじゃのうその先生」
失礼すぎるだろう紅葉!
「はい、まだまだ生きるぞ~って今でも年賀状くるんですよ」
杉谷先生はまだまだ長生きするだろうな。
いやそれ以前に気になることがあった。
「まってくれ、俺今気づいたんだがその杉谷先生ってもしかしてこの間オリンピックで金メダルを取った人か?」
「今更気づいたの四季君?」
名前が何処かで聞いたことあるとは思っていたがまさか日本の代表選手になっていたとは……っということは杉谷選手が死んだらその場で寿命が終わったことになってしまうのか。
「どうしたんですか四季さん?」
考え事をしている四季に心配そうにハルが声をかけてきた。
「いやなんでもない」
そういって四季は天井を見上げて心の中で呟いた
いつまでも輝いていてください。
そして100歳(第一の人生での)まで長生きしてください杉谷先生もとい選手。
一通り自己紹介が終わりしばしの沈黙が流れる
少し開いた窓から風が吹いてくる。こういうのを春一番というのか、いや俺たちを苦しめた大雨のあとのこの快晴許せないな。
そう考えていたのは紅葉も一緒だったと思う。なぜなら彼は外を見て黄昏れているからである。
「そういえばあなた達は高校で部活やるの?」
傘を持っていて雨に濡れていない人たちは明るいなぁ。
「ワシは何もやるつもりはないよ。四季はどうじゃ?」
「俺か?俺は……うん、俺もやらないと思う。」
「私も何もやりませんよ。なっちゃんは何かやるの?」
「…………」
恋夏は黙ってしまった。自分から振った話題なのになぜ黙っているんだろう。
「あぁ、ごめんあたしは何にもやらないわよ」
結局誰も部活はやらないらしい。
ニートまっしぐらか……これは将来が不安だねぇ。
「そうだ……」
恋夏が何かを思いついたようだ
「部活を作ればいいのよ!」
「何を言ってるんだお前は」
「私たちで部活を作りましょうよ」
「「OK!」」
紅葉とハルは同時に了解をした。
「なんでOKしてんの?まだ何をするかも分からない部活動を何でそんなすぐに認められる?」
「だって楽しそうじゃないですか」
「そうじゃよ四季、面白そうな事が光臨高校で起こりそうなんじゃからのう」
簡単にそんなこと起こってしまってはたまったもんではない。
あれ?もしかしてこの状況がおかしいと思っているのは俺だけ?
俺だけがこの考えについていけなくなってるのか?
くっ、3対1か周りは囲まれちまって逃げ道がなさそうだな。
「とりあえずはいる入らないは別として何をやるつもりなんだ恋夏?」
とは言ったものの学校でやれるものなど限られてしまう。
スポーツ系であれば野球、サッカー、バスケと言ったところであろう
文化系なら囲碁将棋、コンピ研などか……だが光臨高校はこの程度の部活などは普通にあるであろう。そう考えると一体何をやるのであろう。おっと、○OS団敵なのがまだあったな。
「聞いて驚きなさい!あたしたちはこの光臨高校で何でも屋を作ります!」
「一抜けでお願いします」
四季はものすごいスピードでつっこんだ
しかしそれは無理だった。
「部長は四季君あなたよ!」
「まてまてまて!俺はやるなんていってない!それに何で恋夏じゃなくて俺が部長をやる事になっているんだよ!」
「おめでとう四季。ワシは心からお主の昇格を祝うとします」
「お前言葉遣いおかしくなってるぞ?それに何その無駄な昇格!」
「四季さん、みんなで仲良くやっていきましょう」
なんだこの今すぐにでも誕生を祝おうとしているこの空気は。
追いつめられていく、さすがの四季も三対1では勝てないらしい
だが逃げ道は一つだけあった。
「新しい部活を作るのは5人からじゃないのか?」
梅宮先生はHR中に部活の話をしていた。
「明日から自由に部活見学していっていいからね~~あっ、言い忘れたちゃった部活動を作るのは最低でも5人は必要だからね~まぁ、1年から部活を作ろうというものもいないと思うから詳しく知りたい人はまた俺のところに聞きにきてねぇ」
だった気がする。
「それなら問題ないわ」
えっ?嘘?俺の唯一の逃げ道は今たたれてしまったのか?
「はい、一人心当たりがいます」
何だと?入学式は今日だったのにもうそんな仲良くなった人がいるのか。
まぁ、俺たちの関係も相当なものなのだが
「四季よ、お主は気づかなかったのか?」
えっ?まさか紅葉まで気づいていたの?俺は何にも分からなかったよ。
「そう」
「あいつしかおらん」
「ですよね?」
「「「せ~の!二海堂冬侍!」」」
「……誰それ?」
素で知らない人の名前だった。
もしかして俺の知らないところでみんなもうその人と挨拶というか何というかすれ違ったりしたのだろうか。
「知らないの四季君?」
「お主そりゃないぜよ」
「冬侍さんが可哀想じゃないですか」
何でおれこんなに批判されてるんだろう、俺そんなに悪いことした?
そんな国民的アイドルの名前を間違えたのならまだしも……もしかしてアイドルだったりする?
「えぇっと冬侍だっけ?それは一体誰なんだ?」
「同じクラスにいたじゃろうが、四季はそんな事も覚えられんのか?」
うん、悪いのは俺ではない。何せ自己紹介もしていないクラスで名前を覚えろなんて普通は無理だろう
「四季君は気づいた?」
「何にだ?」
「あなたを含んで、いえここにいるみんなに共通する事があるのよ」
そんなものあったけ?もしかして俺のタイムアイのような異能の力の事であろうか
ハルは異能の力を持ってはいな……道具が異能の力を通り越しているから問題ないな。
紅葉はまぁあんなのは異能のレベルを軽く超えてるし何よりその力を使ってるときの紅葉にタイムアイが効かない……と言うより使っても必ず致命傷を受けちまうからな。
「考え込んでいるところ悪いんだけどその考えは違うと思うわ」
「へっ?異能の力じゃないの?」
「冬侍君の力なんて知らないもん」
ごもっともだ、俺も知らないよ
「じゃあなんなんだ?」
「本当に分からないのね、じゃあ教えてあげる」
恋夏は少しためてから言う
「あたしたちには季節に関係のある言葉が入っているの」
春桜 桃…春だな。涼川 恋夏…夏だな。秋風 紅葉…秋か。じゃあ二海堂 冬侍は…あぁ冬か俺は四季…まさか!
「お前とりあえず仕切ってみんなを束ねそうだからって言う理由で俺を部長に決めたな?」
「「「今更?」」」
みんな一斉に言わなくても
「もう分かったよ!俺もその部活はいってやるよそれでいいんだろ?」
「「「当たり前じゃん」」」
ひどい、ひどすぎる何で俺がこんな目に遭っているの?
悲劇のヒーローとはまさにこのことだな
ピンポンパンポーン
『全校生徒に連絡します完全下校の時間になりました。教室にいる生徒は速やかに帰宅しましょう。繰り返します……』
「やべっ、もうそんな時間か入学式早々こんな時間までいるのは俺たちだけ何じゃないのか?」
「それはそうでしょう、入学式なんてとっとと終わるんだから普通はすぐに帰るでしょう」
四季の意見に恋夏が笑いながら賛同した。
だが、のんびりしている時間はなかった。なぜなら見回りの先生に学校から追い出されてしまったからだ。
ーーー校門前ーーー
「さっきの見回りの先生すげぇ力だったな。まさか俺と紅葉を持って階段をダッシュするなんて思わなかった」
そう、さっきの見回りの先生はものすごく強かった。
生き残りというか残っている生徒を抱えて階段をダッシュしていたのだ。
そして自分の名を名乗ることなくニヤッと笑って消えていった。
っていうか普通に帰るのだから放っておいてほしかった。
「ワシはジェットコースターみたいだ楽しめたのじゃがのう」
のんきなものだぜ
「あたしたちはあんなのお断りよ」
「うん、セクハラで訴えちゃいそうです。」
顔が引きつっている相当さっきの見回りの先生が怖かったのであろう
「じゃあ今日はもう疲れた市ここら辺でお開きにしないか?」
四季はそういった。そのとき昇降口から誰か男の人出てきた。
その男は眼鏡を掛け肩まである白銀の髪を手で払いながら歩いていた。
あの顔はうちのクラスにいたような気が……
四季は知らなかった。その男こそが二海堂冬侍である事を。
四季が昇降口を見ていたときいたずらな風が吹いた。
その風を四季と紅葉は後に悪意を込めて「殺人疾風」と名づけた。
「「キャ~~」」
ハルと恋夏はスカートを押さえる
四季は勿論その瞬間を見ていない。
だが紅葉は違った。
はじめにチェ、短パンかと言った紅葉は次におぉ~~っと変な声を上げた
バキッ、ボキッ
刹那恋夏が笑いを浮かべていた、指を鳴らしながら
「紅葉君、今あたしたちのスカートの中見たでしょ?」
怖い!顔は笑っているが後ろになんか悪魔が見える気がした。
その悪魔は間違いなく紅葉を殺す気だ。そう思った四季は紅葉から距離を置いた
だがその悪魔は四季の方にも回ってきた
「四季君も見たよねぇ?」
「いや、俺は見てないよ」
正直者の俺は嘘をつかないのだ
「何を言っておるのじゃ?お主だって一緒に見たじゃろう」
なっ俺を巻き込むのかお前は
「もしやお主感動のあまり声が出ないんじゃなぁ?」
いつからおれそんな変態キャラに仕立て上げられたの?
「恋夏は短パンをはいていてがっかりじゃったがハルのほうは水た ぐはっ、うっ、ギャ~~」
バタッ
「なぜお主がワシの後ろにいるのじゃ恋夏?」
遠のく意識の中最後の力を振り絞って聞いた
四季はその光景をしっかり見ていた
まさかテレポートからの連携技とは……まず裏拳、次に正拳突き、最後に回し蹴りという最強のフルコンボだった。
「よそ見とは余裕ねもしかしてタイムアイを使う気?あっそういえば24時間に2回だから今使ったら今日から1週間動けないんだったわね」
おいおい冗談じゃないぞこれもしかして死亡フラグ来たんじゃないのか?
その瞬間時間が遅くなった。
タイムアイは使っていない、これは走馬燈のようなものであった
テレポートによって四季の真ん前に来た恋夏は足を蹴飛ばしバランスを崩す。
そしてそのまま倒す最後には十字固めだ
「ちょっ、まで!俺は恋夏とハルのスカートの中は見ていない!」
「嘘です!私四季さんがえろい顔をしているのを見ました」
顔を手で覆い泣いていや口元が笑っている
くっ、はめられたハルの奴恋夏を殺人犯にするつもりだ。
「四季君はあたしが短パン履いててがっかりしたでしょっと」
「ギャ~~~ちょ、マジでギブ!いつこの骨が砕け散るか分からないからもうやめてくれ~~」
「きゃ~なっちゃん大変!四季さんが満面の笑みに変わっています。」
おい~いつ俺ハルの地雷踏んじまったんだよ俺は
えっ?いつ?when?where?what?how?why?
とりあえず疑問詞を並べてみるが答えは出ない追い打ちをかけるような言葉が次々に四季を襲い始める
「四季君ってM……いえ、ドMだったのね」
「そうです、私たちに何か仕掛けて怒らせ自分を攻撃させようと」
「ちっが~う」
必死の抵抗もむなしく口をふさがれる今がどこにいるのか理解しているのか?
校門の前だぞ?世間の目を粋にするべきだ!
なぜ俺はSMプレイらしき事を外で……外でやらなくちゃ行けないんだ~~
「まぁ四季さんは昇降口にいた冬侍さんを見ていたんでスカートの中を見てないんですけどね」
とどめの一撃、なんと知っていたのだ
「えっ?そうだったの四季君」
「俺言ったよねえ見てないって」
「それは本当にごめんなさい。でも本気で逃げなかったところからMっていうのは本当だよね」
やばいそういう目で見られている
「冗談よ冗談お詫びにあたしのスカートの中見せてあげるよ」
「いや、やめておれ新しいキャラずけ決まっちゃうから」
目の前で本当にスカートをまくっている恋夏から顔をそらし言う。
「何顔そらしてんのよ、あたし短パンって言ったじゃない」
「言ってない!それにたとえそうだったとしても女の子なんだから恥じらいというものを持ちなさい」
「えっあたしを女の子としてみてくれるの」
もうよく分からなくなってきてしまった。このままいくと恋夏ルートに突入なのか?
「何じゃかよくわからんがラブコメが始まるらし……ぐはっ」
ぐはっ?
なぜ今そのような言葉が出るのかと思ったが四季の前から恋夏がいなくなっていたので事情はすべて分かった。
復活した紅葉に対して恋夏は速攻で肘鉄を食らわせたのだ。
ハルはその光景に絶倒していた。
そこで四季はようやく疑問に思った事があった。
ハルってこんなキャラだったけ?
「気づいた四季君?」
「ハルの事か?」
「うん、今あの子人格変えちゃえマシーンで作られた別の人格なの」
「ふぅんそうなん……って、えぇぇぇぇぇ」
いきなりのサプライズだな。この2日間で分からない事が多すぎる。
四季にタイムアイやその他諸々がついていなければ発狂するか気を失うかどっちかだと思う。
「いつそんなの使ったんだよ?」
すくなくとも教室にいたときは使っていなかったはず、見回りの先生の時のセクハラで訴えそうでしたのときにもしかして使ってたのか?
「ん?あたしが紅葉君を最強のコンボでぶっ倒した瞬間よ」
ボンッ
急になった乾いた破裂音に驚きその方向を見る。
そこにはハルがいた
「もしかしてもうきれちゃったのハル?」
「うんもって3~4分ってところみたい」
「何の事を話してるんだ?」
「四季君はまだ見た事なかったんだね。では改めて説明をどうぞハル!!」
急に振られた説明にハルは少々とまどっていたがとりあえず話し始める
「これは人格を変える事が出来ちゃう便利なアイテムその名もType Characterです」
そういって○クマ・ドロップの缶を出す。
っというよりもさっき恋夏がいっていた性格変えちゃえマシーンというのがType Characterなのだろうか。
中にはあめ玉がたくさん入っていた。
「その飴がType Characterなのか?」
「はい、そうです。私は今みたいな状況だとついて行く事が出来なくなっちゃうんでこれを使ったんです」
「そうだったのか、でもその考えは間違っていると思うよ俺は」
四季はそういってハルからの言葉を待っていた。だが次の言葉を四季は予想できていた。
「何でですか?」「何でなの?」
何故か恋夏まで聞いてきた。
小さなため息をついて四季はその質問に答える
「自分を変えようとしているその努力は認めてやる。でもなぁ」
「「でも?」」
「道具を使って一時的に得た性格なんて本当の自分じゃないだろ」
「「……………」」
ハルは下を向いてしまった。
「俺はハルにも、勿論恋夏にも本当の自分で接してほしいと思ってる。まぁ昨日会ったばかりの俺が偉そうにいうのもあれだけどな」
「でも私はなっちゃんと違ってつまらない女だし」
「何言ってんだ?それがお前らしさ何だハル。お前は変わる必要なんてない。それにハルはどちらかというとユニークの部類に入るんじゃないのか?」
クスッハルが笑ったそれにつられて恋夏と四季も笑い始める。残念ながら紅葉はまだ死んでいる。
「四季さん、ありがとうございます私そんな事言われたの初めてだったんでとても嬉しかったです」
「それはなによりだよ」
「ハルのフラグが四季にたったようじゃのう」
紅葉がここにいる誰かに聞こえるか聞こえないかの声でそういった。
だが恋夏には聞こえていたらしい
「ちょっ、何言ってんのよあんた」
顔を真っ赤に染め上げた恋夏を見て四季はまたスカートの中の事などを話したのではと思った。
「もしかして恋夏、お主も四季のこ、グハッ、ギャ~~なんじゃこの締め付けられる感じは」
サイキというのは便利だなぁ。こんな簡単に紅葉をぶっ倒せるなんて。
だがこれにより紅葉は三度目の死を迎えた。
よく二度ある事は三度あると言うがこんな目に3回も遭うってのは御免被りたいものである。
時刻は13時30分、学校が終わったのが12時だったので1時間半近くも話していたらしい。
勿論タイムアイを抜いての計算である。
今日はもうお開きにしますかの四季の一言により解散した。
校門前には大きな忘れ物があったのだが……
勿論紅葉である。誰にも心配される事なく放置をされた紅葉。
未だに意識は戻っていない、その横にはある男が立っていた。
そしてこのあとその男は四季の家に侵入する事を誰も知らなかった。
四季が家に着いたのは14時ジャストだった。
今日着ていった制服をハンガーに掛け、ワイシャツを洗濯機に入れる。
そして冷蔵庫に入っているコーラの缶を一気飲みしながら今日遭った事をおさらいを始める。
一日にいろいろな事があったため今日のおさらいは大分きついものになるであろうと笑いながら考え階段をのぼり始める。
そしてすぐに脳内でおさらいを始める
四季の脳内でのおさらい
一つ、紅葉の記憶が戻った
二つ、恋夏は超能力者、ハルは未来から……でなく発明家
三つ、眼を使いすぎてしなった
四つ、部長になりました
五つ、恋夏とハルのスカートの中は……いやこれはなしにしよう。
思いっきり大雑把にまとめるとこんな感じであろう。と四季は独り言を言って自分の部屋に入る。
そして寝間着に着替え始める。
家には四季以外は誰もいなかった
母は四季が小学校1年生の時に他界した。それを機に父は2人の子供を残してぶらっと何処かへ行き帰ってこなくなった。
そしてその二人の子供とは四季とその兄の事である。
四季の兄の名前は一ノ瀬 夕日。四季とは8つ年の離れた四季の最も心から慕い、頼りにしていた人物だ。
だが、夕日も四季が3年生の時に家を出た。別れの時夕日はこういった。
「俺はお前の友達を助けにいってくる。それがどれだけ大変な事であっても絶対帰ってくるからおとなしく待っているんだぞ」
そういって雨の中傘も差さずに出かけていった。
今も四季は夕日にあっていない。
今考えてみてもそれがどういう意味だったのかが四季には分からなかった。
四季の友達を助けに行くと言っても心当たりがどこにも見つからなかったからである。
だが、四季は夕日を探しに行こうとはしなかった。
父はそもそも勝手に出て行ったのだから探すという考えすら浮かんでこなかった。
夕日の能力は四季よりも強い力と強靱な肉体を持ちその力を振る舞ったとき、見たものを恐怖のどん底にたたきつけるように恐ろしかった。
それ故に何かあっても何とかするだろうと考えていた。
だから四季は夕日を探すのではなく待ち続けようと決心した。
いつか会える日を心待ちにしながら。
今日の放課後の集まりでハルの発明品を見たり聞いたりしたときこれなら夕日を見つけられるかもしれないと考えたがそれが無駄であるとすぐに分かった。
それは、ハルのドジっ子属性だ。人の命に関わらないとその発明品が完成しない。
これのせいでたとえ夕日を見つけられたとしても何らかの後遺症が出るというのは手に取るように分かった。
四季は夕日の事を含めたハルの発明品の事。
そしてもう一つ部活動の事について考えていた。
何でも屋とはよく言ったものだ。構内の清掃?そんなのクラスの奴らにやらせておけばいい。
先生方の手伝い?誰でも出来る事しかないであろう。
そんな誰でも出来るような事ではつまらない。
四季は自分たちの力をフルに使った仕事が来るのを望んでいた。
例えば何らかの事件である。
発砲事件などなら100パーセント四季の大活躍であろう。
そんな楽しくも現実からかけ離れた非現実的なものを四季は期待していた。
そして忘れては行けないものがもう一つあった。
二海堂冬侍だ。
四季ははじめ彼の存在を知らなかったが昇降口にいた冬侍を見たとき四季は何かを感じ取った
四季の能力はタイムアイ、幻想眼、黒龍紅の3つであるがそれ以上に第六感が異様に優れているのだ。
四季は冬侍を見た瞬間何か危険なものを感じ取っていた。それは恋夏やハルそして紅葉などとはかけ離れた恐ろしい力がある気がしてならなかった。
恋夏の能力は第六感により超能力だと分かったのに対し、冬侍のは分からなかった。
いや正確には恐怖だけは伝わってきた。つまり四季の力を持ってしてもそこまでしか分からなかったのである。
「夕日兄さん、俺は光臨高校だ楽しい生活を送る事が出来そうだ。夕日兄さんも暇だったら顔くらい見せてくれよな」
誰かにその言葉を言うわけでもなく四季は独り言を呟いた。
そしてまだ15時なのに布団に入りスヤスヤと眠り始めた
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「一ノ瀬 四季か。面白いな」
その男は玄関から入ったわけでもましてや窓を割って四季の部屋に入ってきた訳ではない。
瞬間的にそこに現れ寝ている四季の真横に立つ。
「明日……てめぇの事を襲撃してやるから、せいぜいこの俺様を楽しませろよ」
続けて
「他の3人の能力も面白そうだから期待しててやる。おっと言い忘れた、俺様を部に誘うのは勝手だが、入れるには俺様をまず倒してからだ。クックックッハァ~~~ハハハハハ」
シュンと言う音を立ててその男は姿を消した。
笑い声が聞こえた気がしたので四季は目を覚ます。
だがそこには誰もいない。
床に着いた少し大きめの足跡に気づき四季は飛び起きる。
自分の身に起こるのは黒龍紅によって遮断されるから問題はない。
しかし家の中を荒らされてはたまったものではない。
そう考えた四季は風のごとく下の階におり預金通帳と家の鍵を確認する。
しかし家の中は何にも変わっていない。
そして一瞬、足跡は夕日のものであったのではないかと考えたがそれはないなと笑った。
時刻は深夜2時、こんな事があったから眠れなくなってしまった。
そして始まった。四季の眠れない戦いの火ぶたが……
布団に入るも冷えた体が妙に気持ち悪く、暖まりだしたら何故か強い風が吹き雨戸が、ガタガタとなっていた。
(……寝なくていいかなぁ?)
そして4月5日の朝を一睡もせずに迎えた。
これから起こる地獄への道が開かれたとは知らずに……




