偶発的な殺人鬼との出会い
人により不快に感じる表現があります
苦手な方はブラウザバックをオススメします
ソレは、全くの偶然だった
好きな漫画の最新刊を買いに出掛け、近道に少し路地に入って歩いていた時の事である
端的に言えば、人が一人倒れていた
それも顔を悲痛に歪ませ、涙を流し口や鼻からは涎や鼻水と共に血が流れている
見るからに、殴られたような痕が幾つも見える
そんな男性の傍らに、一人の少年が立っていた
こちらは対して口を吊り上げて満面の笑みであり、黒い革製の指空き手袋を着けた拳には倒れている男性の物と思われる血が付いていた
見るからに、喧嘩の真っ最中と言った様子であるが倒れている男性の反応はない
死んだように、動かない
「・・・・・なんだ、お前? 見せ物じゃねぇぞ?」
そう、僕に気付いた少年は睨みながら言葉を口にする
「消えろ、今の俺は大変機嫌がいい。お前も死にたくなかったらとっとと・・・」
と、少年の言葉は止まってしまった
僕はと言えば、あまりにも突拍子もない出来事に混乱して動けないでいた
「お前、見たことあるな。確か、機織んとこの魔女の彼氏だったか?」
少年が口にした言葉に、僕は沙羅に混乱する
え、今なんて言った?
リリアちゃんを魔女と、そう口にしなかったか?
「やぁ、悪い悪い。お前の話は聞いてるぜ、確か名前は犬童和花って言ったっけ? 機織んとこの魔女と最近付き合い始めたとか何とか。
いやぁ、すまねぇなぁ。面白くねぇもん見しちまってよ。どうだ? 良かったらお詫びにコーヒーでも奢ってやるよ」
混乱する僕を尻目に少年はそう言って呆然とする僕の腕を引いて路地を出る
ちょっと待って、あの倒れてた人は放っておくの?
「俺もアンタとは話がしたかったんだ。聞くと奴が魔女と知ってて付き合ってるらしいじゃねぇか。
どんな面白い奴かと思ってたがアンタみたいな奴だとはなぁ、いやぁ今日の俺はツイてるぜ。まさか仕事中に出くわすなんてなぁ」
「え、いや、ちょっと、訳が分からないんだけどっ」
「まぁまぁまぁまぁ、そう結論を急ぐなよ。どうせ話すんならコーヒー飲みながらゆっくり話そうじゃねぇか。
幸いこの街で一番美味いコーヒー出す店知ってんだよ、そこ行こうぜ?」
そんな、今にして考えても意味が分からないままに腕を引かれて街を歩き一軒の喫茶店に入る
そう、先日来たばかりの『喫茶 向屋』である
「おう、いらっしゃ、い・・・・・これはどういう組み合わせだ?」
「よう此方、コーヒー二つと適当に食いもん出してくれ」
「いや、構わないがアンタ達知り合いだったのかい?」
「いや、ついそこで合ったはかりの他人だぜ?」
「和花君、君は今日は厄日だ。コイツに出会ったっていうのが何と言うか、災難だねぇ」
「訳が分からないんですけど、この人誰ですか?」
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は『篠ノ木夭伽』、生きる為に人を殺す鬼、篠ノ木の殺人鬼だぜ、よろしく」
これが、人を殺す事を生業とする殺人鬼との出会いであり、産まれて初めて出くわした殺人現場であった