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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
窓口の少女と噂
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侵食する噂

昼休み。高校にしては珍しく、この学校は休み時間と放課後には(天気がよければの話だが)屋上が解放される。ベンチなども置かれていて、よくカップルなんかが人目を気にせずにいちゃついてたりする。正直イラッとするが、本人達がそれでいいなら関係はない。そんないちゃついてる奴らを横目に見ながら、凛は華憐を待っていた。


すると、突然。


「乾さん、乾さん!」


急に苗字を呼ばれて顔を向けると、そこには自分のクラスメイトの女子が三人、楽しそうに立っていた。よく教室で恋ばなとか噂話をしている三人組だ。


「乾さん、なんか悩みごと?」

「うーん・・・あたしのっていうか、隣のクラスの、かな」

「あぁ〜っ!!最近、すっごい噂になってるよね〜」

「うんうん、なんでも自殺した生徒の呪いだっけ?」

「え~?イジメの復讐とかじゃなくて〜?」


もうやめてよーとか、こわーいとか、笑いながらもその三人組の一人は話を続ける。正直、イジメに関しては笑い事では済まされないはずなのだが、結局は他人事、対岸の火事ということか。


「噂って言えばさ、乾さん、こんな噂知ってる?」

「噂?どんなの?」

「なんでも、そういう普通じゃ解決できなさそうな『悩み事』とか、相談にのってくれる相談所がどこかにあるんだって」

「あ!アタシその話、知ってる〜!なんか~・・・手紙に相談内容を書いて〜、送ると返事が来るんだっけ〜?」

「そうそう!あたしの知り合いがそれやって、ホントに返事きたとか聞いたよ」


少し後ろで二人の話は盛り上がっているが、凛はお構い無しに話を聞く。その話は、以前にも誰かからうっすらと聞いた事があるような気はするが、あまり凛には興味がなくて、詳細までは知らなかったのだ。


「手紙を送るにしても、どこに送るの?」

「えっとね・・・?確か・・・《箱庭相談所窓口》行きって書くだけで届くって聞いたよ」

「そ、それだけ?」

「うん、それだけ」


なんだか拍子抜けしてしまった。もう少し彼女達から話を聞きたいところだが、それ以上の話はないらしい。まぁ、あくまでも噂話だからね、どうしても解決できないようなら試してみるといいんじゃない?と三人組はどこかに行ってしまった。


「凛、お待たせーっ!」


華憐が小走りで、三人組と入れ替わるように近づいてくる。


「華憐、こないだの相談の事なんだけどさ」

「?」


華憐に先程、クラスメイトの三人組から聞いた噂話を話す。華憐は、その話を興味深そうに聞いていた。


「あくまでも噂だけどさ、試してみない?何もやらないよりは、幾分かマシだと思うんだけど」

「うーん・・・それじゃあ、やってみようか?もしかしたらってこともあるし」



  ✡



夜。華憐は昼間に幼馴染から聞いた噂を試すため、便箋に『悩み事』を書き、可愛らしいデザインの封筒に入れる。宛先は《箱庭相談所窓口》行きとだけ。ポストは幸いなことに家の近くにあったため、すぐに投函した。


「これで何か返事があればいいんだけどな・・・」



──夢と現の間の世界で、一人の少女は一通の手紙を受け取る。

その少女は一通り手紙を読み終えると、ため息を一つ吐いた。


「はぁ・・・今回は『悩み事』ですか・・・それも『彼女』が関係した・・・」


少女以外、誰もいない部屋で彼女は一人呟く。


「まぁ『彼女』も、もしかしたらこうなるかもしれないとは言っていましたし・・・わたしも仕事をしますかね」


「それにしても、ここの噂は現実(そと)で確実に広まっているみたいですね・・・?」


手紙をしまいながら、少女は嬉しそうに微笑んだ。



──一人の少女の死から始まった醒めない悪夢。その悪夢を見ているのは一体、誰?

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