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夢現の箱庭  作者: 星咲 美夜
窓口の少女と噂
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悪夢の侵食

凛と華憐は同じ学校に通う女子高生である。好みの服も性格も正反対の二人だが、付き合いは長く、幼稚園からの幼馴染みで、家も隣同士である。そして、いつも一緒にいた。だから、何かあれば真っ先にお互いに相談するし、それは学年が上がって、クラス替えでクラスが別々になっても変わらなかった。


ただ、以前から、凛は華憐から華憐のクラス内のイジメについては少し聞いてはいたのだが、隣のクラスの事ということもあり、あまり深く考えてはいなかった。ましてや、そのイジメの被害者が自殺するなんて、思ってもいなかったのだ。そんなことは自分の身近で起きる事じゃなく、ニュースで報道されていても、自分には無関係だと思っていた。実際に、人が一人亡くなってるのは事実なのだが、正直な話、フワフワとしか実感がないのだ。



  ✡



亡くなった生徒の葬儀なども終わり、暫くたった頃。放課後に華憐から呼び出された凛は、ある相談をされた。


「華憐、どうしたの?」

「実はね・・・最近、うちのクラスで変なことが起きてて」

「変なこと?」


話を聞くと、なんでも、華憐のクラスでは、よく小さな持ち物が無くなるらしい。そして、決まってその無くし物は、亡くなった生徒の机の中から出てくるのだという。最初はみんな、クラスの誰かのイタズラだと思って、こういう事をして不謹慎だのなんだのと言って、笑って気にしてはいなかったのだが、段々とその頻度も増えてきたので、一体、誰の仕業なのかを調べたものの、クラスの中で、誰もそんなことをやってないと言うのだとか。普通に考えれば、誰かが嘘をついているのだと思うが、目撃者もいないので、どうもそれはないらしい。


「どうしたらいいのかな?」

「うーん・・・そういう事は、あたしじゃちょっと分からないかな・・・?」

「そうだよね・・・ごめん」


コレがただのイタズラならともかく、心霊現象とかオカルト的な事となってくると、さすがにどう解決するのかなんて凛には分からない。さらに、知り合いにそんなことを解決できる人もいないし。まぁ、そんなことは華憐だって分かっているのだろう。


「まぁ、とりあえず塩とか置いとけばいいんじゃない?」

「そうだね・・・」


華憐は納得していないようではあったが、時間も遅くなってしまった為、今日のところは帰ることにした。



  ✡



朝。華憐は歩きながらも考えていた。昨日、凛には一応相談してみたものの、やはりというか、想像通りの答えしか返ってこなかった。とはいっても、実際に彼女に解決策を求めていた訳でもなかったのだが。いつものように教室のドアを開け、自分の席に着く。ちらりと後ろをみると、窓際の一番後ろの机の上には、未だ花が飾られている。クラスメイト達から追いやられ、そこにしか居場所がなかった『彼女』の席。今はもう、誰も座ることのない場所。最近の奇妙な事が起きてからというもの、クラスメイトも教師達も、何かをすると自分達も巻き込まれるのではないかと気味悪がって、机を片付けることも、その話題にさえも触れることを避けている。しかし、他のクラスの生徒にはこんな事まで言う者までいる。


「この机には『彼女』がまだいるのではないか」


──元々の、その席の主は、地味で目立たない女子生徒だった。大人しく、控えめでのんびりとしていた印象だったと記憶している。華憐は入学した時から、彼女とは同じ美術部だったのだが、入部時は違うクラスだったため、挨拶はすれどあまり会話というのはなかった。


学年が上がり、華憐は同じクラスになって初めて、彼女はイジメにあっていたことを知った。それも、同じクラスの一つの女子グループからの。不幸なことに彼女は、その加害者とはまた同じクラスになってしまったようだ。周りの話を聞いたところ、どうやら一年の終わり頃から、そのイジメは始まったらしい。きっかけは分からないが、何かトラブルがあったのだろう。とにかく執拗で、陰湿なイジメを受けていた。


教室や加害者のいる所では、男子も女子もあまり彼女には近づくことはしなかった。やはり、みんな後のことを、次は自分も標的にされるのでは、と考えてしまうのだろう。華憐も一度は、その加害者の女子を止めようとはしたものの、周りにそれは阻まれたことがあった。それからは、加害者のいない部活で会う度に、少しずつ話を聞くようにしていた。話を聞いても、彼女は「これは自分が悪いから」と言って自分を責め、あまり加害者のことは悪くは言わなかった。その事も含めて、度々、凛にはどうしたらいいのか相談していたが、残念なことに、彼女は自ら校庭の桜の木で首を吊って、この世を去ってしまったのだ。そんなことを思い出しながらも、華憐は今、起きていることがどうにかならないかと解決策を考えていた。

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