第3話
あの食事会の時僕は緊張のあまり彼女と話すことができなかった。
彼女も父親である新庄さんとは会話をしていたが母が彼女に話しかけても頷くだけだった。
たぶん彼女はこの再婚に反対なのかもしれない。
そして2時間ほどでお開きになった。
新庄さんが家まで送ると言ってくれたが母は断り僕と一緒に電車に乗って帰った。
僕は宇都宮梓に会えたことで半ば放心状態のままだった。
電車に乗って席に座ると母が話しかけてきた。
「徹、梓ちゃん可愛かったでしょう」
「うん……可愛かった……じゃなくてビックリしたよ。まさかあの宇都宮梓が新庄さんの娘さんだなんて言ってくれれればいいのに」
僕は母に不満を言う。
そんな僕の態度に笑う母。
「ふふふ、言っちゃうと面白くないでしょ」
「もう……でも母さん」
「何?」
僕は今日の食事会での宇都宮梓の態度を見て再婚は反対していると思った。
だから母に
「梓ちゃん……再婚に反対みたいな気がするんだけど」
「ん……そんな事ないわよ。梓ちゃんとお話させてもらったときにズボラな父ですがよろしくお願いしますて笑いながら言われたのよ」
と思い出して笑う母。
え……でも今日の態度どう見ても賛成しているような気がしないんだが。
僕が考えていると
「今日の梓ちゃんとても緊張していたみたいね」
「緊張?」
「ええ、今日の梓ちゃんほとんど喋らなかったでしょう」
「うん、なんだか不機嫌そうだった」
緊張してたというよりなんだかすごく不機嫌な表情をしていた気がする。
母はため息を吐き
「ちがうの、梓ちゃんね実はね人見知りが激しい子なの」
人見知りが激しい子が芸能界でやっていけるんだろうか?
「だからね徹、こういったときは男の子が頑張らないと」
「無理だよ……ただでさえ女の子としゃべるのが苦手なのに」
女の子が嫌いなわけではない。
ただ女の子と話すのが恥ずかしいのだ。
ましてやあの宇都宮梓と話なんて……できないよ。
「ふふ、梓ちゃんも恥ずかしがり屋だからお兄ちゃんである徹が頑張らないとだめよ」
そう言って僕の頭を撫でる母。
恥ずかしいから人前ではやめてほしいんだけど僕は何も言えない。
2週間後僕と母は新庄さん達が住むマンションに引っ越す予定だけど僕は彼女と仲良くなれるのかな。
そんなことを考えながらも今日初めてあった宇都宮梓を家族として一緒に過ごすことができるのかと考えながら僕は母と一緒にもうすぐ出て行くアパートに帰った。
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