おんながおとこに抱かれるということ。 おとこのかおはいつも近すぎてぼやける。
好きなんだよといわれて、視界がその肩でおおわれるのをみる。
思い出すことはかぎりがなく、私はただその円環に沈みこんでいく。
私はこれを知っている。
くりかえすいくつもの円環のどこかで、同じように
首をさらうように抱え込んでくちびるを近づけるおとこがいた。
繰り返すいつかのどこかの。時間と温度のない部屋で。
あなたはこれまでのだれかとよく似ていて、
これからわたしを抱くであろうどこかのだれかは、あなたに似ている。
シャワーをあびる。からだをふく。
ひかりが遠ざかり、時間のない暗闇が私たちをつつみこむ。
好きなんだよといわれる。おとこのかおはいつも近すぎてぼやける。
私もそうおもう。だから心の中で返事をする。
おかえりなさい。