俺の神(仮)生活
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「で?」
「で、と言われましても……」
「あんたが神だっていう証拠はどこにあるんだ。あんたのいう神ってのは世界を創造した後は干渉はしてはいけないんだろ」
「そうです」
「この世界で死んだ俺をここに呼ぶことについてはその干渉に含まれないのか? それに手違いで殺すとか、明らかに干渉して起きたことだよな。しかもそれも揉み消すために異世界へ転生だって?」
「あう、はい。わたしは干渉しました……ごめんなさい。貴方を殺したことは悪いとは思っています。貴方は五十三歳で病死することになっていましたから、三十六年分の生が失われたことになりますから」
「五十三歳で病死だと。住宅ローンの支払いや嫁子供の為に必死で働いて中年で終了って予想がするな……働き蜂や働き蟻のような」
「よく分かりましたね、その通りです。過労で倒れたところを検査して病が見つかり、そのまま半年後に病死することになってました」
「俺の人生って結局どっちにしろ最悪じゃないか」
「そうでしょうか、ですが貴方の住む国では多いことですよ」
「……はあそう」
「でですね、貴方は三十六年分の生を異世界で生きてもらうのですが、それについて説明します」
「決定かよ!」
「でないと世界に亀裂が入ってしまいますので」
「なんだと、俺って世界に亀裂入れるくらい重要だったのか」
「世界を構成する枠組みである貴方がたは既定調和からはみ出してはいけないのです。それは蜂や蟻も同じです。昆虫や植物も既定から外れてしまうと世界に亀裂が入ります」
「あ、そう……」
「その亀裂を発生させない為に、本来の生をまっとうしてもらわないといけません。ちなみに、異世界で転生した貴方の寿命と今回の三十六年分のを合わせた分生きていただくことになります」
「合わせたって、転生先で一〇〇歳くらいまでだってありうるんだろ、だったら百三十六歳とかもあるってことじゃないか、困るぞ」
「いえ、三十六といっても異世界で換算しますと約十億倍になります。ですのでその場合だと三百六十億と一〇〇歳です」
「……は?」
「貴方の世界とは銀河系が違いますので、三十六年分の生が流れるのにそのくらい必要なんです」
「ちょまておい。それもはや人間の寿命レベル超越してんじゃんかよ!」
「そうですね。わたしの世界でも人間種の寿命は一〇〇年ほどですから。一番長い岩種族でも千単位ですし。でも大丈夫ですよ、慣れれば生物の寿命は一瞬ですから」
「岩? そんなのもいるのかよ。千単位でも一瞬て神みたいなもんだろ。今まで一般市民だった俺には無理だ! 精神破綻するに決まってる!」
「それも心配いりませんよ。転生する際に私と同じ造りに変わりますから」
「え」
「ちょうどわたしも見守っているだけじゃ寂しいなと思い始めていたので、せっかくですしこれからは一緒に私の世界を見守っていきましょうね、ふふ」
「あれなんか、ただの転生にしちゃおかしい雲行きじゃないかこれ」
「そうですか? さっき思いついたのですけど貴方には私の対になってもらうことにしたんです。悠久の寿命になり体の構造も私と同じですから、私の世界では神ということになりますね。あ、寿命をまっとうした後にそのまま昇華して寿命という括りをなくすか、また転生して世界の枠組みに入るか決めていただくことになります」
「そんなこと思いつかないで!? 枠組みに入る方向でお願いします」
「寿命をなくして仮初の神から本当の神になることをわたしは希望します」
「いやいや、一般市民で」
「大丈夫です。時間はたっぷりありますから、ゆっくり考えましょう。神としての役割もお教えしますから」
「いやだから」
「楽しみですね。本当の対神になる日が待ち遠しいです」
「えとさ」
「さあ、話も決まったことですし早速わたしの世界へ向かいましょうか。世界を観測しながらわたし達が生活する宮へ案内しますね」
「話を」
「界を渡ればもう体の構造は変化しますので大丈夫ですよ」
「きけって」
「では参りましょう!」
「ちょ、わ、ま!」
こうしてなしくずしに俺の神(仮)生活が始まった。
ここまで読んでくださった方、本当に有難うございました。