意思のある人形の話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
「あれ?」
さっきまで私はシドに乗って国を目指していたはずだ。
そして国について入国審査を受けてから入国した。
…なのに今は変に暗い場所にいる。
ここ、どこ?
もしかして襲われてしまった?
シドはどうなった?
というか、体が一ミリも動かない。
まるで自分が自分ではなくなったみたいな感じがする…。
でも体が綿のように軽い。
どういうことだろう。
「ガチャリ」
あ!扉が開いた!ということはここは部屋の中ってことか。
おーい、誰か知らないけど助けてー!
「どうぞ、メルさん。」
ん?なんで私の名前を知ってるの?
もしかして私を誘拐した人?!
「ありがとうございます。シドも入ってきていいって。」
「やったー!外は暑いからねぇ」
…え?なんで私が二人いるの!?
ていうか…でかい!
「どうでしたか旅人さん。私達の国は。」
「うーん。やっぱり人形が多いですね。」
「そうでしょう。それには理由があってですね。」
「りゆう?」
「はい。実はこの国に入るとその人の人形ができるんです!」
「へぇ〜。じゃあ私やシドの人形も?」
「旅人さんのはありますが…自転車などの生きてる乗り物の人形はできないそうです。」
「ちぇー。」
「ちなみに私の人形は…?」
「あぁ。あそこです。」
指をさされたのは…私?え?なんで?
「すごいですね。ちゃんと作られてる。」
「しかもですね、その人形にはなんと!意思が宿ってるんです!」
「えぇ?!」
「驚きでしょう。しかも記憶や人格はそのもととなった人のものになるんです!」
「つまり…メルがもう一人できたということ?」
「正解です!シドさん。でも、自分の人格が宿った人形なんて気味悪いでしょ?だから旅人さんが旅立つときに、これは燃やしてしまいます。」
「…そうですか。」
え?ちょっと!なに?え?
「人形さん?聞こえますかー?」
「わはははは、人形は喋れないんですよ。」
「そうなんですか。あ、そろそろお昼なので帰ります。」
「わかりました。短い間ですが、私達の国を満喫していってくださいね。」
「ありがとうございます。では。」
「ありがとねー。おっちゃん」
ねぇ!まってよ!ねぇ!ねぇってば!
私はまだ旅を続けるんでしょ?ねぇ!
シド!おいてかないで!
「それじゃあ、処分しますか…」
やめて!連れてかないで!
わたしはメルだよ!ねぇ!
ある国の焼却炉で、人形が燃えています。
その国に来た旅人の形をした人形が。
意思はあるが、自分から動けない。
まるで、シドみたいですね。
─おしゃべりな部分を除いては。




