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東海道中珍栗毛  作者: なごやかたろう
東海上中賑やかし
9/65

「呑んで寝て、そして潜る」

安定航行に入ったじぇっとふぉいるの船内。弥次さんは、どこからともなく取り出した一升瓶を手に、すっかり宴会モード。


「へへっ、やっぱ旅といえばこれよ、これ! 海の上で呑む酒は、また格別だねぇ!」


「はいはい、ほどほどにしときなよ。あんた、さっき転がったばっかりなんだから」


喜多さんは苦笑しながらも、盃を一度だけ交わして、あとは水をちびちび。


「……うん、やっぱり弥次さんは呑兵衛だな」


藤兵衛、背後から漂う酒の香りと笑い声に、そっと心の中でつぶやく。


やがて、喜多さんが「ちょっと厠に」と席を立つと、弥次さんはひとりで勝手に盛り上がり、


やがて――


「ぐおぉぉぉ……ぐがぁぁ……」


大鼾をかき始めた。


「……うるさいのう」


藤兵衛、眉をひそめながらも、もはや驚きはしない。


と、そこへ――


「ちょっと! またあなたですか!」


先ほど説教していた船員が、怒りを抑えきれぬ様子で駆け寄ってきた。


「なんで酒なんて持ち込んでるんですか! しかも鼾がうるさくて、他のお客様の迷惑になります!」


弥次さん、うっすら目を開けて、


「へいへい……すんませんねぇ……」


と、まるで蚊の鳴くような声で適当に返事をする。


「まったく……!」


船員は呆れ顔で立ち去っていった。


その背中を見送りながら、弥次さんはぽつりとつぶやく。


「うるさいっていってもなぁ……あ、そうだ。あの中に入れば、音も漏れねぇんじゃねぇか?」


そう言うやいなや、座席の下の収納をガバッと開けて、ずるずると中に潜り込んでいく。


「……おいおい、まさか本気で……」


藤兵衛、思わず身を乗り出す。

座席の下にすっぽりと収まった弥次さん、満足げに「ふふん」と鼻を鳴らし、蓋を半分閉める。


「……これは、何かが起こる予感しかしないのう」


藤兵衛、胸の奥に湧き上がる期待と不安を抱えながら、じっとその座席を見つめるのであった。

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