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東海道中珍栗毛  作者: なごやかたろう
焼き物と湯けむりと赤ら顔
61/65

「焼き物の里へ、海を越えて」

藤兵衛一行は、島の西にある港を目指して歩いていた。


「島の端から端まで歩けるとは、なかなか風情があるのう」

と、藤兵衛が潮風に吹かれながら言えば、


「東から西へ、まるで島一周の旅ですな」

と、権兵衛が笑う。


「蛸の香りがまだ残ってる気がします!」

と、定吉は鼻をくんくんさせていた。


西の港に着いた三人は、早速船の札所へ。


「じぇっとふぉいる、またですな」

と、権兵衛が札を眺める。


係員に尋ねると、

「師崎港行きと、少し遠い河和港行きがございます。

 河和の方が駅馬車の便がよろしいですよ」とのこと。


「ふむ、少し長くても便利な方がよかろう」

と、藤兵衛は河和行きの札を求めた。


乗船まで少し時間があったので、

港近くの茶屋で一服することに。


湯気の立つ茶をすすりながら、

三人は日間賀島での出来事を振り返った。


「蛸、うまかったのう……」

と、藤兵衛が目を細める。


「蛸壺の数には驚きましたな」

と、権兵衛が頷く。


「でも一番びっくりしたのは、やっぱり……」

と、定吉が言いかけると、


「言うな。思い出すだけで壺の中がむず痒くなる」

と、藤兵衛がぴしゃりと遮った。


やがて乗船時刻となり、

三人は慣れた足取りでじぇっとふぉいるに乗り込んだ。


「これで三度目じゃな」

と、藤兵衛が笑う。


「もう、乗り方も完璧です」

と、定吉が胸を張る。


「次は“じぇっとふぉいる指南役”でも名乗れそうですな」

と、権兵衛が冗談を飛ばす。


出発してしばらく、

藤兵衛はふと立ち上がり、外の景色を眺めに出た。


左手には知多半島の陸地、

前方にも陸、右手にも遠く陸が見える。


「なるほど、湾の中というのは、

 いつもと景色が違って新鮮じゃのう……」

と、藤兵衛はしみじみと呟いた。


やがて、船は河和港に無事到着。


「……なにもありませんでしたね」

と、定吉がぽつり。


「そうそう何か起こりはせんぞ」

と、藤兵衛が肩をすくめる。


「まぁ、あのお方はまだ日間賀島でしょうしな」

と、権兵衛が静かに言った。


三人はそれぞれの思いを胸に、

海路から陸路へと、旅の舞台を移していった。

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