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東海道中珍栗毛  作者: なごやかたろう
動く歩道に乗るの巻
18/35

「―異国の香りと、聞き覚えの声―」

団子を平らげ、茶をゆっくりと味わいながら飲み干すと、藤兵衛は懐から銭を取り出し、代金を払った。


「さて、そろそろ参るとするか」


茶屋を後にし、再び入場門へと向かう。先ほどよりも列は短くなっており、思ったよりも早く進みそうだ。


「……弥次さんたちの姿は、もう見えぬな。先に入ったか」


潮の香が鼻をくすぐる中、藤兵衛は列に並び、やがて自分の番がやってきた。


「はい、入場券を拝見いたします」


受付の男に札を差し出すと、男は目を細めて言った。


「おお、イの一とは縁起が良い。こちら、今日の瓦版でございます」


そう言って手渡されたのは、博覧会の案内が記された瓦版。藤兵衛はそれを受け取り、門をくぐった。

中はまさに異国の香りと熱気に満ちていた。大陸の国々の絹や陶器、香辛料の香りが漂い、黒船で来たという米国や南蛮の国々の品々が所狭しと並んでいる。


「ほう……これはまた、見たこともないものばかりじゃのう」


瓦版を片手に、藤兵衛はぶらぶらと歩きながら、異国情緒を楽しんだ。

やがて、南蛮の国の一角にたどり着く。そこでは、麦酒ばくしゅと呼ばれる黄金色の飲み物と、腸詰ちょうづめなる食べ物が売られていた。


「麦から酒を作るとは……まことに不思議な国もあるものよ」


興味深げに眺めていると、どこからか大きな声が響いてきた。


「か~っ、これが麦酒ってやつか! 泡が鼻に入るでござるよ!」


「だから、そんなに一気に飲むから……!」


その声に、藤兵衛の耳がぴくりと動いた。


「……ん?」


どこかで聞いたことのある、あの調子。あの響き。


「……まさか」


藤兵衛は、声のする方へとゆっくりと顔を向けた。

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