第8話:嫉妬と裏切りの構造計算
エレンの名声が高まるにつれ、彼女の存在を妬む貴族が増えた。彼らは、貴族でもない女が、帝国の礎を築くことに我慢がならなかった。
彼らが目をつけたのは、エレンが設計した「新型巨大倉庫」だった。
「あの女の構造計算は、見たこともないものだ。必ずどこかに欠陥がある」
貴族たちは、クラウディウスの政敵である元老院議員を買収し、倉庫の検査を命じた。
エレンが倉庫の壁に使用したのは、通常の壁よりも薄く、強度が高い「軽量火山灰コンクリート」だった。これは、建物の自重を軽くし、基礎への負荷を下げるための工夫だった。
検査官たちは、壁を叩き、「薄い! 規定の厚さがない! これは手抜きだ!」と騒ぎ立てた。
「エレン! 危険だ。倉庫の使用を中止しろと命令が出た!」
クラウディウスが慌ててエレンに報告した。
エレンは冷静だった。
「いいえ、殿下。壁の厚さが強度ではないことを証明します。むしろ、彼らの指示に従って厚くすれば、自重で建物の寿命は縮まります」
エレンは、検査官たちの前で、倉庫の基礎のコンクリートコアを採取し、自身の配合と強度試験の結果を提示した。
そして、驚くべき提案をした。
「この倉庫の上に、さらに二階分の木造建物を増築します。私の計算が正しければ、倉庫はびくともしません」
現場の職人たちは震え上がったが、エレンの自信に満ちた瞳を見て、作業を開始した。
結果。倉庫は微動だにしなかった。 エレンは、現代の「積載荷重」と「許容応力度」の概念を、古代の素材で完全に証明してみせたのだ。
エレンの信頼は揺るぎないものとなり、彼女の知識は「魔術」ではなく「真の知識」として認められた。




