第7話:インフラ革命の夜明け
アウレリウスの没落後、エレン建設商会は、崩壊したスラム街の再建を皇帝から命じられた。
エレンの設計した新しい集合住宅街は、これまでのインスラとは全く異なっていた。
耐震構造の導入: 垂直剛性を高めるための筋交いを石材と木材で構築。
衛生的な生活: 全戸に陶器製の配管で安全な上水道を引き、各フロアに水洗トイレを設置。排泄物は専用の下水道に流す。
火災対策: 延焼を防ぐため、コンクリート壁で区切られた防火帯を設置。
エレンは、現場で奴隷たちに、ただ作業を命じるのではなく、「なぜこの工法が必要なのか」を熱心に説明した。
「アーチの中心の石(要石)は、全体の力を支える心臓です。手抜きをしたら、自分の家族の命が危ない。貴族の目がないからといって手を抜くな。この建物は、貴族のためではなく、君たちのための家だ」
奴隷たちは、初めて自分たちの仕事が「命を救う」ことに繋がると知り、熱意を持って建設に取り組んだ。
この建設には、エレンの解放奴隷時代の仲間も参加し、彼らはエレンを心から尊敬した。
この頃、エレンとクラウディウスの関係は公然の秘密となっていた。 二人の会話は、もはや主従のものではなく、対等な共同研究者、そして恋人同士のものだった。
「エレン。君の衛生革命で、帝都の寿命は延びた。だが、貴族の連中は、君の知識を『道具』として見ているぞ」
「構いません。道具として見てもらうことで、私は自由を得て、彼らよりも安全な家を建てられるのですから。私はもう、あの絶望的な奴隷には戻りたくない」
エレンはクラウディウスの腕の中でそう呟いた。




