第6話:インスラ倒壊と告発
エレンの警告は現実となった。
冬の嵐が帝都を襲った翌日、アウレリウスが建てた巨大なインスラが、あっけなく倒壊した。数千人の庶民が瓦礫の下敷きとなり、帝都は混乱に陥った。
アウレリウスは「天罰だ」と主張し、責任を逃れようとした。
しかし、エレンは動いた。
彼女はクラウディウスの助けを借り、倒壊現場の瓦礫の中から、アウレリウスが使用した粗悪なモルタル(コンクリート)のサンプルと、意図的に薄くされた壁の残骸を掘り出した。
そして、クラウディウスは、その物的証拠とエレンの構造計算図面を持って、皇帝の面前でアウレリウスを告発した。
「アウレリウスは、安価な素材で利益を膨らませ、市民の命を奪いました! エレンが計算した通り、この建物の自重は、使用された素材の強度を上回っていたのです!」
アウレリウスは「女奴隷の嘘だ!」と叫んだ。
その時、エレンが進み出た。彼女は汚れた石の塊を皇帝の前に差し出した。
「陛下。これが、アウレリウスが使ったモルタルの断面です。不純物が多く、火山灰と石灰の比率がデタラメです。そして、これが私が作ったモルタルの断面です」
エレンが次に示したのは、水道橋修復で使われた、緻密な結晶構造を持つ新型コンクリートの塊だった。
「強度、耐久性。どちらが帝都の礎にふさわしいか、陛下ご自身でご確認ください」
皇帝は二つの石を手に取り、その重さと硬さの違いに驚愕した。
「真の美とは、機能と誠実さの中にある」
クラウディウスが叫んだ。彼の熱弁とエレンの科学的な証拠により、アウレリウスは有罪となり、全財産を没収され、奴隷にまで身分を落とされた。
この事件により、エレンの建設商会は一躍、帝都で最も信頼される存在となった。




