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第8話 「反則の笑顔」

 後ろからでもリアナさんが苦しんでいるのが伝わってきた。


「リアナさん!大丈夫?」


「はい、心配に及びません。このぐらいで耐えます!体の影響がないはず!」

 そう言って、彼女はまた台座に手を伸ばしていた。でも、伸ばそうとするたびに、手から身体へと痛みが伝わっていくのが見て取れた。


「どうなっているの?!」

 俺が叫んだ。


「魂の残滓の怨念が強すぎる。怨念から残っている死の痛みや後悔がすざまじい!その感情を受けながら浄化しないと成功できない。」

 リアナさんは苦しんでいる声で言った。


「頑張って!リアナさんが凄い幽霊能力者だって、俺でも分かるよ!」


「ありがとう!頑張ります!」

 手を再び台座にー


「はあはあ」

 リアナさんの呼吸が苦しくなってた。


 やっぱりもう後ろでじっとしていられない!近くに移動してみた。

 隣でリアナさんの顔を覗き見た。痛みで目が泳いでいるようで、顔色も青くなっている。


「一回休憩でもする?」

 リアナさんなら出来ると思うけど、やっぱり作戦を考え直すべき。このまま、身体に良く無いじゃない。


「はあはあ」

 返事らしい返事じゃなかった。


「リアナさん!リアナさん!」

 叫んでみたが、よく考えれば俺の声なんて音じゃない。頭がいっぱいなら聞こえないだけかもしれない。実体がない俺には何ができる?!手はないけど、握るような感覚で、リアナさんの震える手に幽体を重ねた。


 ――それで、いきなり感じた。 

 これは……怨念が残した感情だろう。

 最初の試練で感じた。俺の感情がもう一度蘇ってた。

 凍りつくような死への恐怖、沸き上げる罪悪感。死にたくなかった!

 痛い!怖い!いや!

 ああ……これは俺だけの気持ちだけじゃない。これは数え切れないほどの人間が感じていた気持ち。

 リアナさんの手を通じて、俺の中に怨念の気持ちが逆流してきた。


「辛かったね!絶望だね!俺もその気持ちが分かる!」

 どうしようもない重い負の感情で心が痛んでいるのが、共感ができる"人"がいることで何故かほんわりとやわらかい気持ちにもなってた。


 隣でリアナさんの目がみるみるうちにいつもの優しい目に戻っていった。


「怨念の叫びが消えていく。これなら浄化できそう。」

 それを言いながら目から涙が一気に流れていた。


「もう、大丈夫?」

 確認して聞いてみたが、本当に正気に戻ったそうだった。


「ええ。死ってそんな気持ちだったか~どんなに勉強してもこれは分からない気持ちね。私一人だったら共感ができなかった。怨念の悲しみを落ち着かせる事はできなかったはずです。本当にありがとうございました!」


 それを言って、彼女はまた手を伸ばした。今度は問題なく台座の上まで届いた。涙を流したまま、笑顔を作った。リアナさんはまた言葉にらしい言葉のない歌を歌いだした。心から美しいと思えるような声。子守唄を聞いているような感覚で、俺さえも眠ってしまいそうな感覚。先まで感じた恐怖がもう完全に消えた。もう怨念は完全に消えたでしょう。


 リアナさんはまた俺に顔を向いて笑った。


「私の方がラッキーだったみたいね!悠真さん!」

 あの笑顔が反則ね。心臓がドキッと感じられない幽霊は本当に辛い。


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