第16話「幽霊なのに寝不足ってどういうこと?」
オレはぼんやりと木炭画を見つめ、失った息子の姿を眺めていた。悔しくて、悔しくて、我を失いそうだった。守れなかった悔しさが、すべてを飲み込んでしまいそうになる。だけど、どこか違和感があった。
「お兄さん!」
心の底から響いてきた。結菜の声だ。
「あ、妹だ...無事で良かった。結菜を救えて、本当によかった!」
そう思った瞬間、俺の中で何かが弾けた。
俺は死んで悔しかった、無念だった。でも確かに、妹と母は無事だった。さっきまでの激しい感情は、残滓の記憶が引き起こしたものだったんだ。
目の前の残滓の気配は、さっきよりも強く感じられて、気持ち悪くなった。
「悪夢でも見た気分。腹がないのに吐き出しそう!どういうことだよ...!」
気分悪くて、外の空気を吸いたくなった。部屋の壁をすり抜けて外に出たけど、肺がないから当然意味がない。あの悪夢みたいな体験がまだ残っていて、少し、自分がおかしくなりかけていた。
さっきまで真夜中だったはずなのに、もう何時間も経っていた。日はまだ昇ってないが、町がほんの少し明るくなっていた。
「寝られないと思ったのに、悪夢から醒めてしまった。寝るならせめて楽しい夢が見たかったのに...!」
楽しい残滓なんて残ってないだろ、と自分に突っ込んだ。
目覚めが最悪な気分で、急いでリアナさんが寝ている宿に戻った。夜と朝の違いもあって、ちょっと迷いそうになったけど、何とかリアナさんが起きる前に戻ることができた。無防備に寝ている彼女をじっと見るのは、紳士としてマズいと思い、タンスに直行しようとした。
それでも、少し心配だったから一瞬だけ眺めてしまった。
美しい横顔で、なんだか幸せそうな寝顔をしていた。心が温かくなって、少しだけ気分が回復した。
タンスに戻ってから10分も経っていないうちに、リアナさんの目覚めの声が聞こえた。
「あぁ~ よく寝た!悠真さん!おはようございます!今から着替えするから、少しだけ待っててね!」
本当にギリギリだった。
着替え終わった後、タンスを開けてくれたリアナさんは俺を見て眉を寄せた。
「悠真さん、大丈夫?」
昨日やつれた顔をしてたリアナさんは、一晩で完全に元気を取り戻していた。俺の方を見て、心配そうに囁いた。
「ごめん、夜の間に抜け出した。一時的に、ちょっと危なかった」
「一時?!今でも魂が消えそうなんですけど!」
そう言って、リアナさんは慌てて月のアクセサリーを取り出し、祈るように握って呪文を唱えた。
心がじんわり温かくなって、いつもの調子に戻った。
「気持ち良くなった、ありがとう!」
「これで、昨日集めた力は全部使ってしまいました...」
責めるつもりないんだろうけど、声が落ち込んでいるのが伝わってきた。
「ごめんね。」
「いや、悠真さんを助けられるくらいの力を集められて良かったですね。昨日の頑張りのおかげで悠真さんが消えずに済みそうで、ほっとしています!でも...何があったんですか?」
「ちょっと長い話になるから、まずは朝食を頼んで来た方がいいかも。」
リアナさんは頷いて部屋を出た。一人になった俺は、色々反省した。
やっぱり、幽霊ってチート能力じゃなかったんだな...
第16話、いかがでしたか?
危ないところでしたね!次回ではリアナとの会議が始まります!
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