第13話 「疲れない俺と、疲れていく彼女」
一日町を探索した結果、小さな怨念があちこちに見つかった。
ほとんどは本当に小さく、力もほとんどない、ただの悲しみの残滓だ。
人が死の瞬間に何を無念に思うかは人それぞれで、状況によって大きく変わるのだと肌で感じた。
まあ、俺には肌なんてないから、「肌で感じた」のはリアナさんのほうだろうけど
幽霊能力者として、試練や経験を通して死に向き合うことは珍しくないのだろう。
それでも、一日でこれだけの怨念に触れれば、心も体も疲れて当然だ。
昼時、リアナさんは「お腹は空いていない」と言って、肉の串を一本だけ食べた。
最初は朝にたくさん食べたからだろうと軽く考えていたが、時間が経つにつれ、彼女の顔は次第にやつれていった。
夕方になるころには、ぐったりしているのが誰の目にも明らかだった。
「今日はここまでにして、宿に戻りましょう」
俺は彼女の疲れを指摘せず、そう提案した。
昔、妹と遊園地に行ったとき、自分が疲れたせいで帰ることになると、申し訳なさから機嫌が悪くなってしまったことがある。だから、帰る理由はなるべく自分のほうに背負うようにしている。
リアナさんは素直にうなずき、宿に戻って軽い夕食を頼んだ。
朝とは違い、彼女は終始無口で、運ばれてきたスープを静かに飲んでいる。
その湯気が、心と体を少しずつ温めているように見えた。
俺のほうはわりと元気だった。
この世界に来てから眠ってもいないし、何も食べてもいない。それでも問題なく動けるし、考えられる。
ある意味、これも転生のチートと言えるのかもしれない。
いや、ただ幽霊の性質というべきか。
もっとも、食欲があったとしても、食べたくても食べられないのだが。
まあ、餓鬼じゃなくてよかったと思うしかない。
それでも、リアナさんのスープはやっぱり美味しそうに見えた。
だが、彼女は食欲がなさそうに、ゆっくりと口に運んでいる。
「美味しくないのか?」
念のため聞いてみた。
「ええ、少し味が薄いかな。今日はあまり食欲がなくて」
少しだけ元気なふりをして、彼女はそう言った。
「今日はたくさん収穫しました。怨念の量としては大したものではありませんけど、確実に少しずつ力は増えています」
そう言って微笑む。だが次の瞬間、顔に疲れがにじんだ。
スープを半分ほど残したまま、彼女はスプーンを置き、席を立った。
「明日も大変でしょうし、今日はここまでにしましょう。休みましょう」
空元気な声でタンスへ歩き、扉を開ける。
「どうぞ。おやすみなさい」
俺は従ってタンスの中に入る。
「また明日。おやすみなさい」
「……おやすみ」
今のところ、この世界で頼れるのはリアナさんただ一人だ。
町には、俺の存在に気づいている者はいないらしい。
彼女が俺を助ける動機は分からない。
だが理由が何であれ、ここまでしてくれているのは事実だ。
こんなに疲れている彼女を、黙って見ているわけにはいかない。
俺は疲れない。なら、一晩タンスでじっとしている必要もない。
そう思い、彼女がぐっすり眠ったのを確認してから、俺は壁をすり抜け、夜の町へと出た。
第13話、いかがでしたか?
疲れない事はチート?祟り?次回から夜の町の探検!
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