私は一流鑑定士、しかし男を見るのは三流……
私は生まれながら特異的なスキルがあった……
鑑定スキル!
これは一般的に物語で言われている鑑定とは違う……
良いものが何かは見抜けないのだが悪いもの、特に良く装っている詐欺を見抜くことができる能力なのである。
だから騙す気の無い素人の絵と、どこかの芸術家の落書きみたいな絵の区別は正直できない。
どちらも騙す気が無いから……
もっとも芸術家のほうは私の鑑定に引っかかることありますけどね……
芸術家がそういう落書き紛いなのを書く時って、何でもありがたがる貴族を馬鹿にしてる意図がある時あるんですよ……
自分が書いたものなら何でもありがたがるのなら落書きでもいいよな的な……
こういう発想で描かれたものだと私の鑑定に引っかかるのです……
ようは偽物の詐欺扱いに該当するのでしょうね……
このスキルのおかげで、私の家は外れを引かされることなく、私が生まれてから安定して成り立っている。
このスキルを知られると色々面倒なことになるのも想定できるので、知っているのはお父様とお母様と妹だけである。
だからわが伯爵家はゆっくりと最近台頭しているのである(失敗しないからこそ大胆に攻められるのだ!)
そんな私にも最大の弱点があった!
惚れっぽいのである!
しかも惚れてしまうと鑑定スキルが消失してしまうようで、相手の男が酷いケースでも鑑定の警報が鳴らない!
おかげで私は何度も貢いだり、二股されたり、何度も何度も煮え湯を飲んでいて、さらにそういう風だから評判も悪く(お馬鹿令嬢扱いである)ますますろくな男しか寄ってこないのである……
妹には「何でお姉様は普段はしっかりしているのにそんなにポンコツなんですか!」と叱られてしまう……
うん……自分でも分かっているけどさあ……
妹は幼い頃から仲のいい男の子とそのまま婚約までして今もいい仲だって言うのに……
「お姉様はあの男はやめておきなさい!って私が言っても聞かないから……」
「うるさいなー!惚れちゃったら仕方ないだろ!」
こんなやりとりが日常茶飯事なのである!
そして今度こそという男と出会うことができた!
侯爵家の三男で、顔よし、紳士な振る舞い、家柄は言うまでもなし!三男だからきっと私の家に嫁ぎに来るのね……うちは2人だけの姉妹だから……
私はお父様とお母様に素晴らしい相手を見つけてきたと自慢したが、2人とも懐疑的だ!
「お前は恋愛となると駄目だからな!」
お父様手厳しい……
「貴女では当てにならないわ……」
お母様は妹に見てもらえとまで言う……
……「馬鹿にしないで頂きたいわ!私だって男を見る目もちゃんとあります!」
ふん、今度こそ2人とも後悔させてあげるわ!
私だってやれるんだとね!
私がご機嫌からデートに帰って来ると、妹が私に言ってきた……
「お姉様、こっそりとお姉様の相手を見たのですが、あの男はやめておきなさい!」
「はぁ?あんたねえ!言っていいことと悪いことがあるよ!あの人は絶対に大丈夫だから!」
「……そのセリフ今まで何回聞いたと思ってるんですか?私がいつも正しかったでしょう!」
「……今回ばかりは貴女の外れね!今までの失敗はあの方と会うための試練だったのよ!」
「……呆れてモノが言えないわ……」
「アンタこそ証拠なんて無いでしょう?私はね今回は絶対に上手く行くと信じているの!」
ふん……妹も分かっていないね、私はね今回は上手く行くって分かっているの。私の鑑定を舐めないでよね!
今日もあの方とデート!
するとあの方がこんなことを言ってきた……
「君も多分知っていると思うが、我が家は苦しい!おかげで僕は小遣いもろくにもらえなくなった……家のためだから我慢しないといけないが、今後はデートがあまりできなくなるかもしれない……」
「そんな!私の家は最近上手く行っていますから、私がアナタのためにお金くらい用意して差し上げますわ!」
うんうん、愛する人が困ったら助けるのは当然よね!
こうしてお金を渡して私は助けることにした。
将来の夫だもの、これくらいなんてこともないわ!
するとある時とんでもないものを見てしまった……
なんと、あの方と子爵令嬢が2人で歩いているでは無いか!
「ねえ、伯爵令嬢を騙してるみたいだけど大丈夫なの?」
「お馬鹿令嬢だろ?大丈夫大丈夫、あいつはお金を持っているのに馬鹿だから俺の貯金箱だぜ!」
「あら悪い人……」
「そう言うなよ、おかげでこれから豪華に楽しめるんだぜ……」
……私は今度こそと思ったが絶望のまま家にたどり着いた……
普段は口うるさい妹も、あまりにも落ち込んだ私の様子を見て、厳しいことを言ってこない……
そして妹は言う……
「あのですねお姉様、もしかしてなんですけど、私にもお姉様とは違う鑑定スキルがあるのかもしれませんわ!」
「……どういうことかしら?」
「偽物の愛を見抜くスキルがあるかもしれません!婚約者相手には一切発動しなかったから自覚できなかったけど、お姉様の相手を見るたびに、妙な警鐘を感じるんです!」
「……あんたそれ多分鑑定スキルよ!」
「……ごめんなさい自信が無かったし、幸せそうなお姉様に根拠無く絶対ダメって言えなかったのもあるから……まあそれでもダメだとは言いましたけど……」
「ってことは毎回毎回警鐘があったのね?」
「そうだけど、単なる嫌な予感だと思っていて、お姉様と同じスキルと思わなかったから……」
「……いいわ、私だって最初は半信半疑だったから同じよ……そして私は誓ったわ!情けないけど、あんたに男を見てもらって決めるわ!」
「……うんそれがいいと思う、お姉様は惚れてしまうと鑑定スキルが発動しないからね……」
こうして私は情けないが、妹に良い男、いや正確には詐欺で無い男を教えてもらうことを誓った。
ちなみにだが、私に金をせびった馬鹿侯爵令息だが、
何と私の金を当てにしていて、借金までしていたらしく、私が貢がないことで、その借金を返済できなくなったらしく、親に知られて勘当されたそうだ……
うん……いくらなんでも私見る目無さすぎだったね……