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2.苦しい想い





離宮の庭を歩いていた昼下がり。

ついにエイダンと遭遇してしまった。




「お、ラナ!ちょっといいか?」


「…何でしょうか」




エイダンの隣にいたマテオに呼ばれて私は2人の元へ向かう。


黒の短髪に銀色の瞳で荒っぽい印象の美青年がマテオで、サラサラの金髪にアメジストの瞳のミステリアスな雰囲気を漂わせているもう1人の美青年がエイダンだ。


2人とも印象こそ違えどどちらも美しい。


昼下がりの太陽を受けて、離宮の美しい庭に存在する2人はまるで何かの絵画のようだった。




「次の任務の話なんだけどよ?1週間くらいあっちに滞在予定だろ?だから宿のグレード上げてくれよ。高級宿とか」


「いつもそれなりの高級宿を選んでいますよ?もしかして希望の宿があるんですか?」


「あるある。さすがラナだな。話が早くて助かる」




ガバッとマテオに肩を抱かれるが別に気にはならない。

私はそのままマテオに身を任せて話を聞くことにした。




「ほら、ここ。知ってるか?アムル地方の最高級ホテルプリモだ」




そんな私に上機嫌にマテオが魔法でどんどんホテルプリモの映像を流し始める。


マテオが見せる魔法の映像に映るホテルプリモは、お城のように美しく精巧な作りをしており、四方は湖に囲まれ、ホテルを囲む湖の周りには小さな森が広がっていた。


さらにその森には今の時期にだけ咲き、夜には白く光るタルの花が咲いており、ホテルと湖を囲んで光り輝く光景はとても美しいものだった。


マテオが気に入り、行きたがっている理由もよくわかる。




「どうだ?最高の景色だろ?しかも飯も酒も美味いんだぜ?女も美人が多くていい宿なんだよな」


「…素敵なホテルですね。予算を確認してみます。予算内なら何とかなりそうですけどどうなるかは…」


「予算だぁ?そんなもの勝手にどっかから引っ張ってくるか、お前が国王に掛け合えよ?」


「私にそんな権限は…」


「あるよ。俺が保証する。何ならこのマテオ様が今からお前の言うことを聞かない全ての者を殺すって言って回ってもいいんだぜ?」


「…うぅ、そんな物騒なこと言わないでくださいよ。ただでさえ、ちょっと距離置かれているのに」


「ははっ!世にも恐ろしい魔法使いたちの唯一のお気に入りだからな。お前のことも怖いだろうよ」


「笑い事ではないですよ」




愉快そうに笑うマテオに私は肩を落とす。

先ほどよりさらに強く抱きしめられているが、やはり気にはならない。

異性だとわかっているが、そうだとは思えない。


だからアランも危機感がないとか言っているんだろうな。

自覚はあるつもりだ。




「おら、顔こっち向けろよ」


「…何ですか。急に」




マテオにそう言われたのでマテオの方へ顔を向ける。

すると…




「っ!」




マテオにキスをされた。


まただ。

これで何回目かと言われるとわからない。

マテオはこうやって急にキスをする癖がある。




「魔法使いのお気に入りのラナ様?今、俺の魔力をちょっとばかしお前に与えておいた。このまま国王に命令でもして来い。俺がプリモに泊まりたいから予算を出せってな?俺の魔力がチラつけば恐怖で受け入れるだろうよ」


「…だ、だからってキスで魔力を与えないでください!もっと他の方法があるでしょう!?」


「キスが1番効率的だろうが?それともあれか?こんなにもキスしてきた仲なのに恥ずかしくなっちまったのか?」


「当たり前でしょう!慣れるわけないじゃないですか!」


「はっ!かわいい奴だな。もっとキスしてやらないと」


「何でそうなるんですか!」




もう一度キスをしようとしてきたマテオを私は何とか両手で押しのける。



何度も何度もされないから!



そうやってマテオと変な攻防をしていると、急にエイダンが私たちに近づいて来た。

そしてそのまま私の顔に自分の顔を寄せた。



え、何。



私の両手はマテオの顔を押さえている。

さらに肩をマテオに抱かれている為、身動きも取れない。

今の私には逃げ場がない。


目の前に迫る美しすぎるエイダンの顔。

何を考えているのかわからないアメジストの瞳が私をまっすぐ見つめている。


それだけでドクン!と心臓が跳ねた。




「…何て顔しているの。ああ、やっぱりお前は気持ち悪いね」




悪意に満ちたエイダンの顔には、この前のような不快感はない。

むしろ顔を真っ赤にしている私を何故か愉快そうに見ていた。



エイダンが何を考えているのかわからない。




「キスしてあげようか?マテオみたいに」


「え!?」


「魔力をあげるってことだよ?意味なんてないから。欲しいでしょ?俺の魔力。きっともっと周りの人間はお前を怖がるよ?」


「…いっ」




要らないと言わなければならない。

そんなことはわかっている。

他の魔法使いにそう言われても、きっと私はすぐに「要らない」と言うはずだから。


エイダンもみんなと一緒でなければならない。

もうこれ以上、彼に異性としての想いをぶつけてはいけない。



だけど、彼にならキスされたい。




「要らないです」


「ふーん」




やっとの思いで出した答えに、エイダンはニヤニヤと嬉しそうに目を細めた。

どうしてそんな顔をするのかわからない。


エイダンは確かに私からの想いが気持ち悪いはずなのに。




「じゃあ、あげない」




にっこりと愉快そうにエイダンは笑うと私から距離を取った。





「お前、やっぱり気持ち悪いね。そんな女の顔するなよ?」




またエイダンから嫌悪感を向けられた。

不快そうなエイダンに申し訳ない気持ちになる。


辛くて辛くてどうしたらいいのかわからない。




「…ご、ごめんなさい」




私はそれだけ言うとマテオの腕から逃れて、何とかその場から走って逃げ去った。




「エイダン、お前なぁ。本当、捻くれすぎ」


「何が?お前こそラナに何回キスすれば気が済むわけ?発情期なの?」


「はっ、お前、ラナのキスされた時の顔知らねぇの?アイツ、キスされる度にかわいい顔するんだぜ?あれ見る為なら何回でもしてぇよ」


「ふーん」







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