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8.ゴブリン☆バット



 ゲヘゲヘと不快な笑い声をあげて、近寄ってくるゴブリンたち。完全に舐められている気配がする! ま、油断してくれているなら、ありがたいんだけどね。


 一対三だし、まともにやり合うつもりはない。こういうときは投擲攻撃にかぎるね!


 投げるのはただの石ころ。こんな時のために、薬草採取のついでに収納リングにせっせと溜め込んでおいたんだ。


 左と真ん中のゴブリンを狙うことにする。右のゴブリンだけはあえて放置だ。


 スキルはないけど、器用値がそれなりにあるせいか、思ったよりも狙い通りに飛んでいく。とはいえ、ゴブリンも避けるから当たりはしないんだけどね。でも、それで構わない。


 狙われたゴブリンは多少怯むし、回避行動で足が止まる。一方で、唯一狙わなかった右のゴブリンは足を止めるどころか怒って走り出した。結果として、右のゴブリンだけが突出した形になる。僕の狙いはまさにこの状況だ!


 僕の方も一気に加速して、突出したゴブリンに迫る。不意を突かれたゴブリンは慌てて棍棒を振るうが――遅い!


 半身をずらして棍棒を避けた僕はそのままゴブリンの背後に回る。ゴブリンの背丈は子供の僕と同程度。つまり、僕でも首を狙いやすいということ。


 ナイフで首すじを一閃!

 魔法の砥石の効果で切れ味抜群のナイフはゴブリンの首を簡単に切り裂いた。


 ゴブリンは大量の血を吹き出しながら、ゆっくりと振り返る。そして、虚ろな目で僕を見ながら――煙のように立ち消えた。


 これがダンジョン特有の現象。ダンジョンモンスターは息絶えると、ドロップアイテムを残して消失するんだ。


 それにしても、失敗した。返り血を思いっきり浴びてしまった! 不快な匂いが染み付いて離れない。死体が消えるときに一緒に消えてくれたらいいのに。これは早速〈クリーン〉の出番かな?


「ゲヒャ!」

「ゲヒッ」


 おっと危ない!

 まだ戦いは終わってないんだった。投石攻撃に怯んでいた二匹のゴブリンたちが、近寄って来ている。連携も何もないから、問題なく(かわ)すことができたけど。


 この距離では投石攻撃で多少怯ませたところでゴブリンたちを分断するのは無理だ。それでも牽制にはなるだろうから、積極的に投げるけど。


 ともかく、二体同時に相手をしないように立ち回る。ゴブリンたちと僕が一列に並ぶような位置取りだね。この状態なら同時に攻撃を受けることがないから、攻撃を躱すのもたやすい。その代わり僕の方も、ナイフで一撃を入れる暇はない。


 なので、ゴブリンの攻撃を躱したときに距離を取りながら石を投げることにした。このタイミングなら、ゴブリンは石を避けられないみたい。大きなダメージは与えられないけど、ジワジワと効いてくるはずだ。現に幾度も投石を受けたゴブリンたちは動きが鈍ってきている。


 もうそろそろ攻勢に出ても大丈夫かな?


 僕は一息で後方のゴブリンの後ろに回り込んだ。ダメージが蓄積したゴブリンは動きについてこられない。無防備に晒された首すじにナイフを突き入れると、ゴブリンはビクリと体を震わせて絶命した。


 残るは一体。こうなれば、結果は決まったようなものだ。さっきと同じように後ろに回り込んでから、ナイフで一撃。それで片が付いた。


 うーん、戦い方がどうにも暗殺者チックだ。講師の人を間違えたかな? そもそも短剣の戦闘スタイルは的確に弱点を狙うっていうものだから、どうしてもこういう戦い方になるんだろうけど。


 まあ、ゴブリンは無事に倒せたわけだしヨシとしよう。人型魔物を倒したのは初めてだけど、特に嫌悪感とかもない。だって、相手は魔物だし。殺らなきゃ殺られる世界だ。その辺りの事は、奴隷時代に囮に使われたことで身に染みてるからね。


 ドロップアイテムは魔石が三つに、ゴブリンの持っていた棍棒が三本だ。


 ゴブリンの魔石の買い取り価格は事前に調べてある。一つ大銅貨が5枚だ。三つで銀貨1枚と大銅貨5枚なり。


 うーん、しょっぱい。薬草採取の方が儲かりそうな予感がする。まあ、本命は宝箱ですから。ゴブリンはおまけです。


 ちなみに鑑定ルーペで調べたところ、ゴブリンの棍棒はゴブリンバットという名前だった。価値はないに等しい。薪代わり使えるから一応拾って収納リングに入れておいた。


 投石攻撃に使った石ころも、目に入った範囲で回収しておく。なかなか有効な手だったからね。今後もお世話になるでしょう。


 さてと。ゴブリンの返り血で汚れた服はどうしたものか。〈クリーン〉のスクロールを使えば、綺麗にできると思うんだけど、一つしかないんだよね。ここは温存しておいた方がいいかなぁ。もう一度ゴブリンに遭遇したら、同じ目に合うことになるだろうし。でも、魔法習得のためには積極的に使ったほうがいいんだよね。


 んー、使うか!

 この匂いはちょっと耐えられない。なんとなく嗅覚が麻痺して、さっきより気にならなくなっているけど、それはそれでまずい。すっかり気にならなくなったところで、うっかりとそのまま地上に出て他の人たちから距離を取られる未来が見える!


 ま、冒険者たちなら、みんな似たり寄ったりかもしれないけどね。


 本音をいえば、魔法を使いたくてうずうずしてるんだよね! ちょっと勿体ないかもしれないけど、好奇心は抑えきれない。


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