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57.遺跡ダンジョン

 元村長宅を確認してみると、たしかに床の一部に崩落したような大穴が空いている。うまいこと段差が重なって階段状になっているところがあるので、そこから上り下りできそうだ。


 これで建物の広さ以上にゴブリンが現れた理由はわかったね。あいつらはこの大穴の中で生活していたんだ。さらに、ここがダンジョンなら、装備が充実していた理由も予想がつく。たぶん、ダンジョン産で拾ったアイテムだったんだ。


 ただ、あのゴブリンたちがダンジョンの魔物だということはないはずだ。ダンジョンの魔物がダンジョン外に出てくることはあるけど、倒したときにはダンジョン内と同じように死骸を残さないらしいからね。


 ひとまず、ここまでで大穴調査はお預け。まずはゴブリンの死骸をどうにかしないといけない。量が量だけあって大変だ。ゴブリンたちが持っていた装備品と、上位種の魔石だけ確保して、あとは集めて焼却処分。エイナが炎の魔法でやってくれました。


 事後処理に時間がかかったので、今日はこの廃村で一泊だ。ゴブリンを大量虐殺した現場だけど、森の中で過ごすよりはいいからね。適当な家にお邪魔して、夕食タイム。メニューはいつもの肉串とスープ。最近、野営が多くて作り足し出来てないから、そろそろ在庫が切れそうだ。


「村長宅に大穴か。なるほどな」


 ちょうどいいのでダンジョンのことを報告すると、ローウェルは短く頷いた。ここのゴブリンのおかしな点に納得がいったんだろうね。


「よくダンジョンだってわかったな。ほとんど調べる時間なんてなかっただろ」

「ああ、それはシロルが教えてくれたんだよ」

「へぇ。従魔って、そこまで意思疎通できるもんなんだな」


 ゼフィルが感心したような声音でそう言った。

 ゼフィルとエイナにはまだ思念伝達のことはまだ教えてないんだよね。普通の従魔にはそんな力はないし、かといって聖獣だってことまで説明するのはちょっと面倒だったから。


 でも、付き合いが長くなると教えておいた方がいいのかな?


 どうしようかなと思いながら、とりあえず曖昧に頷いておいた。ちなみに当のシロルはエイナに撫でられて気持ちよさそうに目を細めている。


「ということは、明日はダンジョン探索だね!」


 ハルファはダンジョン探索する気満々だ。この前の外れダンジョンはスッキリしない結果に終わったから、今度こそはと燃えてるみたい。


 とはいえ、今回のダンジョンもおそらくは未探索ダンジョンだ。まずは冒険者ギルドに報告した方がいいんじゃないかな?


 ちなみに、あの外れダンジョンも未探索ダンジョンだったらしいよ。だから、王都に着いたときに報告はしてある。例の受付のお兄さんにね。


「ええと、どうかな?」


 伺うようにゼフィルを見ると、ニカッと笑って頷いた。


「報告するにしても簡単に調査をした後の方が、二度手間が省ける! 未探索とは言え、浅い階層なら危険は少ないだろうし問題ねえさ!」


 そ、そうなのかな?


 ちらりとエイナを見ると、こちらの話なんて聞こえていないかのように一心にシロルを撫でている。ローウェルは、話の途中で肉串を持ったまま森に消えていったし。


 よくわからないけど、僕たちよりも経験豊富なゼフィルがそう言うのなら、問題ないのかな?





 改めて、ローウェルやエイナに意見を聞いたところ、ダンジョン探索の経験はないからわからないとの回答だった。ただ、未探索ダンジョンを発見した場合、多くの冒険者はとりあえず探索してみるだろうとも言っていた。


 初探索は自分たちがやりたいという気持ちは僕にもわかる。なので、ゼフィルの提案どおり、ひとまずは浅い階層を探索してみることになった。


 元村長宅に空いた大穴を慎重に降りていく。先頭を行くのは僕だ。未探索ダンジョンの罠に対処できるかどうかはわからないけど、探索系の加護を持っているのは僕だけだからね。


 穴を降りた先は遺跡みたいなところだった。石壁、石畳で構成されているのだけど、ところどころ苔生していて、建造されてから結構な時間が経過したような印象を受ける。


「ダンジョンなのに、石壁が崩れてるよ?」

「ホントだ」


 ハルファが指さす方向をみると、たしかに朽ちた石壁の一部が剥がれ落ちていた。ダンジョンでは壁が壊れても時間経過で元の状態に修正されることを考えると、ちょっとおかしく思えるかもしれない。考えられるとしたら、直前に壊れたばかりだということ。でも、たぶん、そうじゃない。


「朽ちた壁っていうのが正常な状態なんだと思うよ。壊したら、この状態に戻るんじゃないかな」

「ふぅん。こんなダンジョンもあるんだね」


 もしかして、ここは元々あった遺跡がダンジョン化したんじゃないのかもね。


 ダンジョン化の原因は今のところ解明されていない。ある日突然、気がつけばダンジョンになっているものらしい。


 ダンジョン化には大きく二パターンある。


 ひとつは周囲を作り替えてダンジョン化するパターン。キグニルのダンジョンはこのパターンで、元々は何もなかったはずの場所に地下迷宮ができあがったみたい。


 そして、もうひとつのパターンが周囲の領域を取り込んでダンジョン化するタイプ。例えば、ドラゴンの住処がダンジョン化したりもするんだって。このダンジョンも元々あった朽ちた遺跡がダンジョン化した可能性がある。


 そんな予想はともかく、ひとまずダンジョン内を探索してみる。幸い、今のところ罠の類いは見当たらない。ゴブリンが出入りしていたと想定すると、浅い階層には罠がないのかもしれないね。


『お、魔物だぞ!』


 シロルからの警告。現れたのは……懐かしのおおねずみだ! キグニルダンジョンの第一階層に出現していたよね。こいつなら、ゴブリンたちでも十分に倒すことができるし、ねずみ肉をドロップするから食料にも困らない。ゴブリンたちがダンジョンで生活していた説が濃厚になってきたね。


「わふっ!」


 ねずみたちはシロルがひと噛みすると、それだけで煙のように消滅した。足下にはやっぱりねずみ肉がドロップしている。うん、間違いなくダンジョン!


 となれば、やっぱり期待しちゃうのが宝箱だよね。


 外れダンジョンみたいな例はあるけど、ここはおそらく大丈夫。たぶん、ゴブリンたちが持っていた装備類は宝箱から見つけたものだと思うんだ。結構な量の武器を集めていたし、このダンジョンの宝箱は期待できそうじゃない?


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