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48.外れダンジョンと謎のお爺さん

「パンドラギフトだったよ!」

「やったね、トルト!」

『おお、良いものだな!』


 取り出した箱を掲げてみせると、ハルファもシロルも喜んでくれた。


 でも、冷静に考えてみると、すっごくおかしなこと言ってるよね。だって、パンドラギフトって外れアイテムの筆頭格なのに。こんな風に喜ぶのって、僕らくらいだろうね。


『どうするんだ? すぐに開けるのか?』

「うーん……いや、とっておく!」


 すぐに開けたい気持ちはある。でも、今のところ困ってることはないもの。パンドラギフトはとっておきの切り札になりうる。いざというときまで……我慢だ!


 幸先の良い成果にホクホク顔の僕たちは探索を再開した。何度か遭遇した魔物は全てゴブリン。サクサク蹴散らしながら進むと……


「あ、また宝箱!」

「ホントだ!」

『次こそは食べ物を出すんだぞ!』

「いや、コントロールできるわけじゃないからね」


 みんなの期待を背中に感じながら、罠をチェック。何もなさそうなので、開いてみると、中に入っていたのは、見たことのある錫杖だった。


「それって、もしかして……」

『前に持ってたやつだな!』

「うん。博打打ちの錫杖だね」


 念の為に鑑定ルーペで確認したけど間違いなかった。以前闇市で押し付けられた中にあった危険物だ。発破の補助として使えなくもないけど、基本的には外れアイテムだね。


「トルトでも、こんなことあるんだね」

『むむ……元気が足りないんじゃないか? 美味しいもの食べると元気が出るぞ!』

「それ、シロルが食べたいだけでしょ」


 個人的評価はともかく、一般的には二連続で外れアイテム。僕にしては珍しい。けれど、まぁそんなこともあるよね、と探検を続けた。


「さすがにおかしいんじゃない?」


 さらに宝箱を開けたところで、ハルファが眉間にシワを寄せて言った。三連続で外れアイテムだったからだ。


 あり得ないことではないと言われればその通り。でも、そんなのごく低確率だ。外れアイテム自体、そこまで出現率が高いわけじゃないもの。それなのに三連続の外れ。よほど運が悪い人じゃなきゃ、僕じゃなくてもまずない。


 ちなみに、3つ目の宝箱に入っていたのは“気まぐれダイス”というアイテム。見た目は、標準的な6面ダイスだ。


 もちろん、普通のサイコロじゃない。ダンジョン内で転がすと、出た目に応じた特殊な効果が発動するんだって。


1:神々の気まぐれ

2:周囲の生物を強制的に笑わせる

3:宝箱が空から降ってくる

4:魔物が空から降ってくる

5:大爆発を起こす

6:周囲の生物を一定時間蛙にする


 使い切りの消耗アイテムで、効果が発動すると、消えてなくなるみたい。そんなサイコロが小袋の中に4つ入っている。


 改めて確認してみるけど……うーん、微妙。サイコロの目を指定できるなら使い道はあるけど、ランダムだからね。1とか、効果がわからないからなおさら怖い。


「宝箱の出現率自体は高いんだけど……」

『ガラクタばっかりじゃ意味ないぞ』

「どうせハズレならパンドラギフトが出ればいいのにね」


 宝箱はハズレアイテムばかりで、出てくる敵もゴブリンだけ。あまりに張り合いがないので、僕らのテンションはだんだん下がっていく。どうやらここは、うまみの少ない、いわゆる外れダンジョンみたい。


 戻ろう。その言葉をいつ切り出すか、タイミングを計りはじめたとき、僕らは行き止まりにぶつかった。


「あれ、ここで行き止まりってことは……」

「どうしたの?」

「ええとね、どうやら、ここが最奥ってことになるみたい。探索もれがなければだけど」

「ええ!?」

『もう終わったのか!』


 二人が驚くのも無理がない。キグニルダンジョンに比べるとあまりに小規模なんだもの。探索を始めて、まだ2時間も経ってないんじゃないかな。


『むぅ……』

「ガッカリだよ」


 ハルファもシロルも不服そうな顔をしている。


まぁ、気持ちはわかるよ。パンドラギフトが手に入ったから、僕としてはそうでもないけど、そうじゃなきゃ完全な外れダンジョンだもの。


「せめて、迷宮クリアのご褒美にでもあれば良かったのにね」

「それだよ、トルト! そうしよう!」

「……え?」

『なんだ?』


 ちょっとした感想に、ハルファが食いついた。僕とシロルは意味がわからず戸惑うばかりなのに、ハルファは妙に楽しげだ。


「宝箱がないなら出せばいいんだよ!」

「出すって……どうやって?」

「ほら、さっきのアイテムで!」

「えぇ!? もしかして、あのサイコロのこと言ってる?」

「そう!」


 さっき拾った“気まぐれダイス”には“宝箱が降ってくる”という効果があった。うまくいけば宝箱が手に入る可能性はあるけど……。


「良い結果が出るとは限らないんだよ?」

「トルトなら、やれるよ!」

『僕もそう思うぞ!』


 一応、警告してみたけど、二人はこんな調子だ。


 まぁ、実を言うと僕もそこまで酷いことにはならないかなと思ってるけどね。今日はまだ運命神の微笑みの運命転換効果が残ってる。運悪く致命的な効果が出たとしても、最悪なんとかなる。


「わかった。じゃあ、やってみるよ」


 念の為に二人を遠ざけて、小袋からサイコロをひとつ取り出す。僕は、それをできるだけ遠くに転がした。マイナス効果が出ても巻き込まれないようにね。


 うん。少し遠くに転がしすぎたかもしれない。サイコロの目が見えないや。


 でも、たぶん、2の目が出たんじゃないかな。効果は“周囲の生物を強制的に笑わせる”だったはず。


 何故わかったかというと、突然、壁際からにじみ出るように現れた黒衣のお爺さんが体を震わせ笑い始めたからだ。


 ……え、誰?

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